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逢魔ヶ高校生  作者: 囀
第1章 入学怪談会編
23/43

十夜 病院に潜む死神様

これは、1年前に起きた話です。



 とある町にある佐和(さわ)病院で働く夏菜子(かなこ)さんは、入社してまだ1年目の新米看護師です。ですが、彼女はとてもやる気が満ち溢れており患者さんや仕事場の仲間達とすぐに打ち解け合う事が出来ました。


 ただ夏菜子さんは、暗い場所が苦手でした。なので、患者さん達が寝静まった後の病内点検をするのがとても困難だったそうです。


 夜の病院内を1人で見に行くことに少し不気味さを感じてましたが、経験を重ねていくうちにこの仕事にも慣れてきました。




 そして、その日の夜もいつもの様に病内点検をしていた時です。




「よし‥‥!ここも異常なしっと‥‥」




 すやすやと眠っている患者さん達を見て起こさない様に扉を静かに閉めました。



「皆が早く元気になって退院出来る様に私ももっと頑張らなくちゃ‥!」



 そう意気込み、廊下の窓を見れば淡い月が光り輝いていました。




「ここへ来てもう、1年経っちゃったんだな〜」



 

 まだ右も左も分からなかったあの頃を振り返ってみればあっという間だったと、夏菜子さんは懐かしみました。患者さんとの寄り添い方にも悩んだ事がありましたし、それ意外にも覚える事が多く大変な日もありました。



 ですが今思えばそれも経験の一つ。これからも経験を積んで、一人前の看護師さんになれる様頑張ろう、そう思いました。それから、次の病室の点検をしに行きました。



 静かに引き戸を開け患者さん達が居ることを確認しようと目を向けました。




 田中さん、ぐっすり眠っている。


 神崎さんも特になし。


 ミカちゃんも気持ち良さそうに、クマさんのぬいぐるみ抱いて寝ているわね。



 ベットの上で寝ている皆を見ては、夏菜子さんは胸を撫で下ろしました。



 そして、最後の人は‥‥。



 そちらに目線を移し確認します。




 が‥‥‥。




「あれ‥‥?愛森(あいもり)さんが居ない‥‥」





 夏菜子さんは、ベットで眠っている彼女の姿が見当たらないことに目を凝視させました。そして夏菜子さんは、仕事仲間達に彼女が居ないことを伝えようと急いで戻りました。




「愛森さん‥一体何処にいるんだろう‥」



 もし、何か合ったら‥‥。廊下を走りながら夏菜子さんは、彼女の事が心配になりました。



 愛森さんは、物凄くお淑やかな女性です。本を読む事が趣味で、おすすめの本を教えてくれます。



 一見大人しそうな性格で良い人なのですが‥。


 



「あ、夏菜子!」




(ひな)先輩‥‥!」




 途中、三つ上の先輩雛さんと出会い愛森さんが居なくなったことを伝えようと必死になりました。しかし、





「あ〜、愛森さんね‥。大丈夫、いつもの事だから」




 "愛森さん"と言葉を告げれば、雛さんは驚く素振りもしませんでした。そして、焦っている表情もありません。




「え‥?いつもの?」



 夏菜子さんが問えば、「そうだよ〜」と再び口を開きました。




「夏菜子、愛森さんの"噂"知らない?」




「噂‥ですか、あまり心当たりないですね‥」




「まぁ、夏菜子は病内点検たまにやるだけだし、何せまだここへ来て少ししか経ってないから知らないか」




「??」




 更に言葉を足されれば、足されるほど夏菜子さんは困惑しました。




「愛森さんってね‥、幽霊とかそう言うものが視えるんだって。この病院で亡くなった人の霊が視えるとか、幽霊と話せるとか‥‥。あの人って結構なオカルトチックな人なんだよね〜。同僚もたまにそう言う話ふっかけられるらしいし、だから、影では"死神"って呼ばれてるんだよ。なんか気味悪くない?」




 そう言ってここにはいない彼女に対し、嘲笑う表情を見せました。




「で、ですが‥‥。愛森さんに何か遭ってからじゃ遅いですし‥心配じゃないですか‥」




「夏菜子は、そう言う出来事を見てないから言い張れるだけだよ。でも、いずれ夏菜子も分かるよ」





「‥でも私、愛森さんのこと探しに行きます!」




「あ、ちょっと夏菜子!!」




 後ろから雛さんの声が聞こえるも構わず夏菜子さんは廊下を走りました。




「愛森さんは、死神と呼ばれるような人じゃない‥‥!」



 彼女を探す中、夏菜子さんはそう呟き胸をギュッと掴みます。


 だって愛森さんは、いつも優しく、そんな素振りを見せたことなんてありませんでした。そして、入社して間もない頃に初めて出会った時も変わらない雰囲気で、テンパる夏菜子さんをいつも落ち着かせてくれました。"我ながら情けない話であるが"と、思うも気を取り直し、再びあらゆる部屋を探し始めました。



 そして、右へと曲がった時。




「‥‥?」




 1番奥の部屋の扉が微かに光が差し込んでいるのを目にしました。こんな時間に何をしてるんだろうか?と疑問に思いましたが、夏菜子さんはその部屋を見た瞬間少し不気味に感じました。



 何故ならその部屋は、亡くなった人達を一時安置する霊安室だったからです。



 もしかしたら、愛森さんがその部屋の中にあるかもしれない‥と初めは思いました。ですが、患者さんが普通霊安室に行くことは出来ません。



 じゃあ‥‥どうして‥‥?

 



 そう思えば思うほど背筋が凍りだし、とても不気味で不気味で仕方がありませんでした。ですが、意を決してその部屋へと慎重に足を歩みました。



 そして、隙間から顔を少しだけ覗き中を確認しました。



 するとそこには‥‥



「あ、愛森さん‥‥?」



「‥‥‥」



 何と、探していた彼女がそこで佇んでいたのです。思わず「愛森さん」と名前を呼んでしまいましたが、彼女は気付きません。むしろ、何かをじっと見つめていました。


「?」


 その先に目線をやるとそこには男性が横たわっているのに目が留まりました。



 そう言えば今日、302号室の男性の患者さんが息を引き取ったと聞いたのを思い出し納得しました。ですが、彼と愛森さんに何か関係があるのでしょうか。少なからずとも、夏菜子さんはそう言った行動や言葉は見た事も聞いた事もありません。



 もしかしたら、何らかの繋がりがあったのだろう、とそう解釈しました。ですが、この時間帯は皆が寝静まっています。急いで彼女を病室に戻させなければいけませんでした。



「愛森さん!」



「‥‥?夏菜子さん‥?」



 夏菜子さんは、ドアの部に手を掛け彼女に呼びかけました。すると今度は、流石に気がついた様で振り向きいつもの笑顔で返事をしました。



「愛森さん、心配しましたよ‥‥! ベットに居なかったので探しました‥!!」



「まぁ、そうだったの? ごめんなさいね、夏菜子さん。私ったらもう就寝時間なの忘れてたわ〜」



「それなら良かったです。 ですが、どうしてこの霊安室に居たんですか‥?」




「‥あぁ、それはね‥」




 愛森さんは、横たわっている彼に視線を戻しました。




「この人、地獄行きなの」




「え? 地獄行き‥‥?」



 それは一体どう言う意味でしょうか。地獄行きってこの亡くなった患者さんが‥?全く理解ができませんでした。そして、再び夏菜子さんは口を開き続けました。




「この人はね、昔、交通事故を引き起こして当時3人の小学生の命を失ったの。何も罪ない人が亡くなったのに、何故かこの人は生きている。それって不公平でしょう? だから、私前に声を掛けちゃったんだ」





—————死んで地獄に堕ちろ。ってね。




「‥‥‥え‥」




「そしたら、その日から容態が悪くなったみたいで、今日息を引き取ったみたい。良かったわ〜。これで報われるわね、子供達も、その家族達も」





「な、何を言って‥‥」





「ふふふ、夏菜子さんはとても親切で良い方だから大丈夫よ。安心してちょうだいね?」




 不気味な話をされ、震えが止まらなくなった夏菜子さんは更に困惑しました。そして、「あ、そうだわ!」愛森さんは、言葉を付け足しました。




「明日は、208号室の土田(つちだ)さんの番ね」







 

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