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逢魔ヶ高校生  作者: 囀
第1章 入学怪談会編
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五夜 自己紹介 5

 幸気ちゃんの自己紹介も終わり、とうとう俺の番まで来た。


「はぁ‥‥。疲れた‥‥」


 幸気ちゃんは元の毛玉に戻り、俺の肩でぐったりしていた。


「幸気ちゃん‥大丈夫?」


「大丈夫って、誰のせいだと‥‥(椛、お前本当何者なの‥!?)」


 心配して声をかければ、彼は俺を睨んだ。


 うーん‥‥、何ともなければ良いけれど。 


「それでは最後に、春夏冬くん!お願いします」


「はい!」


 源先生に呼ばれ、俺は元気よく返事をした。その途端、散らばっていた皆の視線が一斉に俺の所へ集まった。


 改めて皆を見れば、色々な妖怪や奇人、人間達が居るな〜。

 

「初めまして皆さん!俺の名前は春夏冬(あきなし) (もみじ)です!よろしくお願いします」


「よろしくお願いします、春夏冬くん。へぇ〜!こう言う苗字の人初めて見たな〜」


「そうなんです、俺の苗字って分かりやすくて分かりにくいんですよ。漢字が春、夏、冬と書いてその中に秋がないから"あきなし"と呼ぶんです」


 「面白いでしょ?」と笑えば、皆も相槌を打ってくれた。中には、驚く方も居た。


「え?春夏冬(はるなつふゆ)と書いて、春夏冬(あきなし)って読むんスか?!中々凝った苗字っスね〜」


「あはは、よく友達からそう言われる〜」


「椛くんって、種族人間だよね?もしかして美留町さんと同じ祓い屋の一族?」


 影京くんの質問するに、俺は「ううん」と首を横に振った。


「俺は、祓い屋の家系でも妖に関係した一族でもない。普通の人間の一族だよ。一族って言うか、俺小さい頃から親が居なかったから妖怪や奇人達と共同生活してるから‥‥」


「まぁ、大変だったのね‥‥。辛かっただろうに‥‥」


「ううん、そんな事ないよ!一緒に住んでいる皆の事本当の家族と思ってるから!」


「へぇ〜!珍しいっスね!‥‥一応聞くけど、妖怪とか平気っスか?少し怖かったりする?」


 その言葉に、何人かの視線が鋭くなる。

 いや、おそらく妖怪に関わっている者達殆どの視線が強くなった気がする。


 そして、和やかにだった空間が一気に冷酷になった。

 

「‥‥‥」


 確かに、妖怪を忌み嫌っている人間もいるのは俺も知っている。実際、いじめられている姿も見たことがあった。

 けれど、俺が今まで関わってきた方達は皆良い人だったから。

 この1年霊組の生徒達も皆、人柄が良さそうでこれから仲良くなれそうと思った。


 だから、今。


 俺はこの出会いを大切にしたい。


「うん!全然怖くないし、むしろみーんな大好きだよ!」


 そう言って俺は、満面の笑みを浮かべた。


「!‥‥ほっ、よ、よかったっス〜!」


 それから、次々に周りから安堵の声が聞こえてくる。先程の張り詰めた空気が、一気に和やかになったような気がした。


「良かったわ〜。嫌われてるかもって思っちゃった‥」


「新学期初日から変な空気にならずに済んだぜ」


「ふふ、貴方とは仲良くなれそうです〜。椛くん〜♪」


「え?そう?ありがとう〜」


 数々の優しい言葉に、俺は嬉しくなった。


 良かった、変だと思われてなくて。

 

「ふ、ふん‥‥。椛の分際で僕を嫌うなんてあり得ないんだよ」


「幸気ちゃん、プルプル震えてるけど大丈夫〜?本当は、怖かったんでしょ。たとえ、オカルトが大好きな椛でもちょっとビビってたんだよね〜?」


「?!な、そんな訳ないもん!てか、何で鈴はそんなに自信満々なの?!」


「俺は皆より椛と仲が良いもんね〜、ね!椛!」


「うん!だから、幸気ちゃんの事今日会ったばっかりだけど大好きだよ!」


 そう言って、ふわふわな綿肌をゆっくり触れば彼の頬は少し赤く染まった。


 何だか、雰囲気が和気藹々になってきたな〜。


「‥‥‥春夏冬くん」


「?何ですか?源先生」


「君みたいな、妖怪や奇人を良く思っている人って結構、少数派(マイノリティ)なんですよ。だから、春夏冬くんって皆にとって凄く貴重な人間になると僕は思います。実際に、僕も色々虐めとか見てきたし色々関わってきました。沢山経験を積んできたからこそ、これは言える事です。君はきっと、この学校を切り開く1人になります!いえ、この学校だけではありません、この世界を明るい未来に変えてくれる光になると僕は思います」


 そう言われた途端に、源先生に両手をぎゅっと掴まれた。しっかりと離さず、そして俺を見つめる目はとても真剣だった。


 

"「椛が居るなら僕は安心できるよ。」"


「!!」


 その眼差しが、ふとあの時の青年と重なって見え俺は目を見開く。確かに源先生の言う通り、俺のような考えをする人は結構いないのは分かっていた。何故なら、中学校で奇人に対するイジメが絶えなかったから。俺も散々見てきた、とても辛いし酷いと感じた。奇人達が傷つく度に、彼らは笑い蔑んだような目を見せる。そんな事許して良いはずがない。もう皆が悲しい顔をするのは見たくない。


 なら、少しでも笑顔でいられるように人間は悪い人ばかりではないことを知って知ってもらえるように、俺も頑張ろう。だって、おれは人間も妖怪も奇人も全員大好きだから。

 

「だから、春夏冬くん!共に頑張って行きましょう!」

 

「‥‥はい!」


 意志のある返事をしたあと、源先生の手を握り返した。

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