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#19.いっしょにいること

【バインガ村_メイの家_朝】


「おはよう、昨日はよく眠れてたかな」


「あっ、おはようございます…」


何故か、恐ろしく目覚めがいい。


メイさんは僕よりも早く起きて、もう朝食の準備をしている。


「昨日は悪かったね、突然わがままを言って」


「いえ、全然いいですよ」


「はは、敬語はもういいよ。ずっと気になってたんだ」


「ええと、直せるかはわかんないですけど、極力使わないようにします」


「うん、頼んだよ」


僕の胸元に濡れた跡が……


「すいません、服濡らしちゃったみたいです。僕のヨダレかなんかですかね」


「あぁ、それは」


彼女は恥ずかしそうに顔を背けた。


「聞かないでおくれ、ヨダレじゃないとは言っておくけどね」


「わかりました」


なんなんだろ、これ。


昨日のことを思い出せ……


【昨日_夜】


「こういうのは久しぶりだ、10年来かもしれない」


「そうなんですか?」


適度な距離は保てている。

二の腕分位の。


「ただ、安心できるよ。サゴは私より大きいからね……」


「そうですね……男なんで僕」


「たしかに男より大きい女の人なんて見たことないね」


「…そっすねぇ」


いや、あった。

明らかにシャラ・モヌヴィルディンさんは今の僕より背が高いと思う。


「もう少し寄っても大丈夫かな?」


「いいですよ」


「ありがと」


二の腕分位だったけど、もう肩が触れ合うくらいの距離になった。


「ありがとう、君を感じてなおよろしい」


「あはは、感じるなんてそんな」


「この暖かみは……ありがたいよ。人肌恋しかった」


「このくらいなら」


一緒に使っている布団、この温もりはふたりの体温を足したものなのだろう。


「眠くなってきたのかな?」


「バレました?」


眠い。そう、眠い。

温かさがちょうど良くて、僕にも人肌の安心感がある。

人と寝るってこんなにも気持ちがいいことなんだ。

僕は好きだ。


……


「……」


寝ちゃった?サゴ。


「やぁ、起きてるかい?」


「……」


寝ちゃったんだね。

君の顔をもっと見せて欲しい……暗くてよく見えないけど、今から目を冴えさせるから。


「可愛い顔してるね、サゴは」


メイの指が、そっとサゴの額を撫でてその髪に触れる。


「ごめんね……知的ぶった振りしてて」


どこか達観したような喋り方は周りに心配をかけないため、メイが村の人達に可哀想な子だと思われないため。


でも、皆は優しいから……メイのことを心配してくれる。

もしほんとに、メイが……この弱さを隠せていたのならドッペレさんは遠慮せずにトラオレさんをあてがってたはず。


「ねぇ、サゴ。君は一体どこから来たの?」


彗星のように現れた君は、一瞬で私の生活を彩ったね。

いってきますとおかえりが言えること、一緒にご飯が食べれること、受け身な君に沢山の愚痴をこぼすこと、何気ない空間を共有すること。


そのどれもが、君じゃなくてもできる事だったけど、君とできたから好きになれたことだった。


忘れてたんだよ、メイは……人に甘えるってことを。


お父さん、お母さん……


あはは…ダメだ、また涙が……止まらなくなっちゃった。


「アメリさん……」


サゴが私の方に寝返りを打った。

アメリさんって誰?寝言で言うぐらいなんだからサゴにとって大事な人なんだよね。


「サゴ、私がアメリだよ…」


「……んん」


メイの事、その人だと思ってもいいからさ……サゴの胸貸してよ。

これは好きとかじゃないんだ。きっとそう……大丈夫。

泣き止むまでこのままで……


【回想前に戻る】


ダメだ……先に寝たことしか覚えてない。


「朝ご飯できたよ」


「あ、いただきます」


朝ごはんは温かい野菜のスープに、手のひらサイズのパンだ。

野菜のスープの優しい味がまだ起きてない胃を温めてくれる。

パンとの食い合わせはすこぶる良い。


「いつもより顔が明るいんじゃない?」


「美味しいから…ですかね?」


「食は幸せの一部だもんね、ふふ……嬉しいよ。作り手としてはね」


彼女はゆっくりスープをすする。


「あぁ、そうだ。メイさん」


「どうしたんだい?」


「僕、ドッペレさんを説得しますよ」


「いいんだよ、私は縁談を受け入れてるんだから」


「違います、近くの国に移住することですよ……昨日怒られちゃったんですけど」


「……へ?」


「どちらにせよ、メイさんが結婚して子宝に恵まれたとしても……もうこの状況なら将来は危ういと思います。将来、この村の若い世代が食い扶持に困ったりしないように……説得します」


「ドッペレさんがね…、あの人は優しいけど頭が固いから……どう繕っても動くとは思えないけど」


「僕は何を言ってもいいんですよ、部外者ですからね。例え居場所がなくなろうとも問題ないです」


「……そうかな」


「えぇ、とりあえず……朝と昼はメイさんの仕事手伝います。夜になったら行こうかと」


「体は大丈夫なのかい?」


「快調ではないですがリハビリもしなきゃですから」


「そうだね、なら簡単なものを手伝ってもらおうか」


彼女はニコリと笑った。

【崎井から】

あいとさん、レビューありがとうございますorz

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