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#18.談

【バインガ村_村長宅】


村長はどっしりと椅子に構えている。


「今日に呼び出してすまないね、私がこの村の村長…ドッペレだ」


「サゴ…です。よろしくお願いします」


ドッペレさん、立派な髭を蓄えたおじさんだ。


「見たところ、君は二十歳に到達しているように見えるね」


「18歳です」


「なるほどな……メイの4歳下か、問題ないな」


「あの、ちゃんとした挨拶をしてなくてすみません。後日伺うつもりでしたが…」


「いいんだ、君は怪我人だったからな。それは仕方ないことだ」


「そうですか…」


挨拶じゃない?なんで僕を呼び出したんだ?


「君も不思議に思っているんだろ?何故、呼ばれたのか」


「はい、思ってます」


ドッペレさんは椅子から立ち上がった。


「……この村はな、人口が少ない。廃村の危機にあることは村の雰囲気を見ていればわかるだろう?」


まぁ、わかる気がする。


「若い女といえどピンキリが激しくてな。下は8歳、上はメイの2名しかいない」


「そうなんですか?」


「メイは大切に村ぐるみで育ててきた皆の愛娘だ。だが、彼女もそろそろ結婚が急がれる」


「おめでたいですね」


「今のところ、彼女の婿候補は52歳の男だ」


「え?」


「決して性格の悪い男ではない、だが結婚相手にするには歳があまりにも…離れすぎているのだ」


「そうですね…まぁ」


恋愛の形は色々あっていいと思うが……これじゃメイさんが救われないな。


「それでだ、君に話がある」


「僕にできることなら」


「メイの縁談を君にもちかけたい」


「……はい?」


「君は見たところ性格も悪くないし清潔感がある」


「いや、あの」


「今後の村のために……なにしろ彼女自身のためにも、私から頼めないだろうか?」


そんな事言われても……


「……」


「答えは急いでくれ、ただもし引き受けないのであれば、すぐに彼女の家から出ていって欲しい。年頃の女の家に同じぐらいの歳をした男が住んでいるなど格好が悪い」


「…そうですね」


歩けるようにはなっている、ただ激しい運動ができない。

出ていくには充分だ。僕が迷惑をかけているのなら


「私がいない場所で勝手に進めないでくれますか?ドッペレさん」


メイさん…?


「……メイ、聞いていたのか」


「最初から、君…サゴっていうんだ。名前聞いてなかったね」


彼女は僕に優しい笑みで微笑んでみせた。


「しかし、これはお前のためでもあるんだぞ」


「いいよ、私はトラオレさんで」


「……ぐぬぅ」


トラオレさん……?たぶんその人が52歳の人なんだろう。


「ダメだ、私が許せない。お前は年相応の人を見つけるべきなんだ」


「あの……他の村の人って居ないんですか?こんな感じの」


「どこの村も今は国に帰ったからね、こんなことしてるのはバインガだけだよ」


「な、ならこの村も」


「よそ者がバインガを語るなッ!!」


すごい剣幕で怒鳴られた。


「……取り乱した、すまない。だが……バインガはそれなりに歴史がある村なのだ。私の代で終わらせるなど……」


「いえ…僕も軽率でした。すみません」


「とりあえず、サゴに結婚の話なんて持ち込まないでください。それに彼が回復するまで私が面倒を見るって決めたんです。怪我人ですよ?帰らせてもらいますね」


「……待て」


「行くよ、サゴ」


「は、はい」


僕はメイさんに引っ張られて、村長の家を出た。


【バインガ村_メイの家】


「ごめんなさい、ドッペレさんは悪い人ではないんだ。ただ村のことを思ってくれてるだけでさ」


「いえ、僕も軽率でしたし……それに確かに、僕がずっとメイさんの家に居てしまえばメイさんの風評が傷つくのも確かです」


「気にしなくていいよ」


「……割と重要な事だと思います。だから、近いうちに僕はバインガから出ます」


「気にしなくていいっていってるでしょ」


「でもそれじゃ」


「本当にいいんだよ!!」


また……怒られてしまった。


「私まで取り乱してしまった……、でも私は私で君のいる生活は楽しいんだよ。寂しい生活に話し相手が出来

たんだからね」


「……」


「それに歳も近くて、愚痴も言える。君といる間の私はちゃんと私でいられるんだ」


「……」


「歳が近いってだけでこんなに楽しいの……だから君は気にしないで…ってあれ」


彼女は両手で潤った自分の目を拭う。


「なんで泣いてるんだろ、あはは……」


「あの……大丈夫ですか?」


「君がいなくなるって考えちゃったんだ。そしたら……何故か……こんなに」


「メイさん……僕はまだ居ますよ」


「……あぁ、心配しないで。余計な負担はかけたくないんだ……いや手遅れだね。でも、本当に心配しないで欲しい」


「大丈夫です、村にいる間…僕にできることがあれば」


「……なら、早速ひとついいかな?」


「はい」


「今日は一緒に寝てくれないか?」


「え?」


「同じ布団で……大丈夫、そういうことはしない。私にも理性はあるから」


「……」


許していいのか。

これは……アメリさんに対する想いを裏切る行為になってしまうのではないか。

いやでも、


「わかりました、寝相が悪かったらすみません」


「……ありがとね」


これは……子が親に甘える心理と変わらないはずだ。

すなわちそれは性的衝動ではない。

僕がそれを許す理由は妥当なはずだ。

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