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アニメの世界から出てきたような絶世の美女が泣いていたから俺はただ傍にいた

作者: 来留美

俺の学校には絶世の美女がいる。

アニメに出てくるような可愛い顔の美女。

その彼女を見学に教室へ来る色んな男共。

しかし、そんなのは彼女には迷惑でしかない。

だって彼女には好きな人がいるから。

彼女の好きな人はそろそろ来ると思う。


「また見学者がいるのか?」


そう、このだるそうに教室に入ってきた俺達の担任の先生が彼女の好きな人だ。

また彼女の目がハートになっている。

しかし何故、俺が彼女の好きな人を知っているのかと言うとこれは三ヶ月前のこと。


◇◇◇◇


俺は忘れ物をとりに教室のドアを開ける。

するとそこには泣いている絶世の美女の彼女と担任がいた。

俺は咄嗟にこの二人には何かあると思い何も言わずドアを閉め、帰ろうとした。


「用事だろう? 忘れ物か? 俺は職員室に行くからあいつよろしく」

「えっ?」


担任は泣いている彼女を置いて教室を出ていった。

俺にどうしろと?

彼女となんて、話したこともない。


「大丈夫?」


俺にはそんな言葉しかでてこない。

大丈夫なはずがない彼女は俺に気を使い、大丈夫と言った。

俺は彼女の頭をポンポンと撫でた。

俺にできるのはそのくらいだ。

何も言ってあげられないし、抱き締めることなんてできる訳もない。

彼女が泣きやむまで俺は一人にさせたくなかったのでただ、ひたすら彼女の頭をポンポンと撫でた。


「あなたは優しいんだね」

「泣いてる女の子はほっとけないだけです」

「何で敬語なの? 同じクラスだよね?」

「だって君は俺には手の届かない上の人だから」

「何それ? 私もあなたと同じ歳の普通の女の子だよ」


彼女は笑いながら言った。

泣いていた彼女はもう、笑っていた。

俺はもう必要ないと思い帰ろうとした。


「ねえ、何で何も聞かないの?」

「話すか話さないかは君が決めることだから」

「あなたみたいな人、初めてだよ」

「えっ」

「男子はみんな私に優しくして私に好かれようとするのにあなたはそんなことしないの?」

「俺は俺より相手の気持ちを優先したいんだ。俺なんかより相手の方が価値があるからね」

「それでいいの?」

「それの方がいいんだ」

「ねえ、友達になってよ」

「こんな俺でいい訳?」

「あなただからいいの」

「君がそれでいいならいいよ」

「決まりね。じゃぁ友達に私の泣いていた理由を教えてあげる」

「俺が聞いていい話なのか?」

「うん。先生は私のいとこで私の好きな人なの。何回も好きって言ってるんだけど何回も断られてて」

「君を断るなんて他の男子が聞いたら怒るだろうなあ」

「だからこれは私とあなたの秘密ね」


彼女はそう言って人差し指を自分の唇に当てた。

そんな仕草も彼女は可愛い。

やっぱりアニメの世界から出てきた美女みたいに絵になる。



それから俺は彼女の隣にいる。

だから彼女のファンの男子から呼び出しなんて日常茶飯事だ。

面倒でたまらない。

俺に何を言っても意味がないことを知ってほしいよ。


「ねえ、どこに行ってたの?」

「呼び出し」

「また?」

「何なの? 私の大切な友達にケガさせたら許さないんだから」

「分かったから落ち着け」


彼女は俺を大切だと言う。

すごく嬉しい。

俺も彼女は大切だ。

ずっと友達でいたい。


「あっ!」


彼女がいきなり大きな声を出して一点を見ている。

俺は彼女の視線をたどった。

先生と女の人が楽しそうに話している。

俺は咄嗟に彼女の目を俺の手で覆った。


「何?」

「見たくないなら見なければいいじゃん」

「だって」


そして彼女の目から涙が流れ出す。


「また泣くのか?」

「だって」


彼女は俺の胸に飛び込んで、俺の胸に顔を埋めてきた。

俺は彼女の頭をポンポンと撫でる。

彼女は泣き虫だ。

先生のことになると泣き虫になる。

それほど彼女は先生を好きなんだと思う。


先生と女の人が楽しそうに話していたその日の放課後。


「ねえ、教室に忘れ物を取ってくるね」

「俺も行こうか?」

「すぐだから待ってて」

「ああ」


そして彼女は教室に走って向かった。

俺は彼女を待った。

しかし、少し経っても彼女は来ない。

俺は心配になった。

教室へ向かう。

教室のドアを開けると先生と彼女がいた。

また?

でも彼女は泣いていない。


「どうした?」


俺は彼女に問いかけた。


「ん? 何でもないよ。帰ろうか」

「ああ」


なんだろう?

彼女の先生に対しての対応がいつもと違う。

いつもは先生大好きって感じに抱き付きそうなのに、今日は何かが違う。


「お前のことは好きだ。だから分かってくれ。俺じゃないんだ」


先生は彼女に好きだと言った。

何を言っているのか分からない。

先生が生徒の俺の前で彼女を好きだって言うのか?

普通は言わないよな?

意味が分からない。

好きだと言っているのに俺じゃない?

どういう意味だ?


「ねえ、早く帰ろう」


彼女は泣きそうになりながら俺に助けを求めるように言った。

俺は彼女の顔を見て怒りが爆発した。


「おい、年上だから? 先生だから? いとこだから? そんな理由で彼女を傷付けていいと思ってんの?」


俺は先生の胸ぐらを掴んで言った。

先生は一瞬驚いたがすぐに涼しい顔をして俺を見る。

ムカつく。


「これでも分からないのか?」


先生は彼女に向かって言った。

俺には意味が分からない。


「もう、バカ」


彼女は先生にそう言って顔を赤くしている。


「先生なんかほっといて帰ろう」


彼女はそう言って俺の手を取って歩き出す。

俺は訳も分からず彼女に手を引かれ歩く。

そのまま無言が続く。


「何か言ってよ」

「それは…………」

「君が決めることだからでしょう?」


彼女は俺が言おうとしたことを代わりに言った。


「初めて話した日と同じだね」

「そうだな」

「あの時はあなたとこんなに仲良くなるなんて思わなかったよ」

「そうだな」

「あなたもそう思うの?」

「そうだな」

「何よ。さっきからそうだなしか言ってないよ」

「あっ、君が何を言いたいのか考えてた」

「私が何を言いたいのか分かった?」

「分からない。でも君が話を逸らしてるのは分かる」

「本当、あなたって不思議な人だよね」

「それって誉め言葉?」

「誉め言葉かなあ?」

「何か嬉しくない」

「でも、あなたは私の大切な人だよ」

「うん。知ってる」

「えっ」

「大切な友達だろう?」

「そうだけど、それ以上だよ」


そう言って彼女は頬を赤く染めた。

それ以上とはあれだよな?

友達以上恋人未満ってやつか?


「先生は?」

「先生は大好きないとこ」

「何だそれ?」

「私、分かったのよ。先生はただの憧れで好きじゃなかったの。それを先生が教えてくれたの。さっきね」

「さっき?」

「うん。あなたが私の為に怒ってくれたのがすごく嬉しかったの」

「俺って先生に騙されたのか。なんか悔しい」

「私は先生に感謝だよ。私が間違っていることを教えてくれたからね」

「先生への気持ちが憧れってことだろう?」

「違うよ」

「それなら何?」

「あなたへの気持ちよ」

「俺?」

「あなたは友達以上ってことよ」

「ああ。友達以上恋人未満だろう?」

「えっ、何を言ってんの?」

「えっ、違うのか?」

「違うよ。友達以上の恋人よ」


彼女は可愛い笑顔で俺に言った。

あれ?

彼女の笑顔はアニメに出てくるような絶世の美女なんかじゃないみたいだ。

そう、どんな絶世の美女よりも可愛い。

俺は気付いてしまった。

彼女がどんな世界の絶世の美女よりも可愛いことに。


「俺なんかでいいのか?」

「あなただからいいの」

「これも前に言った気がするな」

「それならこれは?」

「ん?」

「あなたが大好きよ」

「俺も君が大好きだ」


俺達は二人で笑い合った。


その後の俺達はどうなったか、それはそれは皆に祝福されました。

ってことにはならなくて俺は今まで以上に呼び出しや陰口がひどくなった。


「何であんな顔も普通、頭も普通、いいところ無しのあんなやつが彼女と付き合えるんだ?」


また陰口が聞こえてきた。

俺はいつものように聞こえないフリをする。


「どうしてあなたは何も言わないの?」


彼女が怒った顔で言う。

そんな顔も可愛い。

今の彼女にそんなことを言ったらもっと怒るだろうなあ。


「あなたは嫌でしょう?」

「何が?」

「私のせいで言われていることよ」

「ああ。そんなこと?」

「あなたにはそんなことなの?」

「俺には君がいれば何を言われたって聞こえない」

「あなたって…………」

「俺って何?」

「私の恋人だよね?」

「えっ。今、それ聞く?」

「だって、友達の時と陰口の対応が同じだから」

「同じでもいいんじゃない?」

「ダメよ。あなたは私が選んだ恋人よ。もっと自分に自信を持ってほしいの。あなたはどの誰よりも優しくて、私のことを分かっている人よ。陰口を言い返すくらいしてほしいよ」

「分かった。それなら遠慮なく言わせてもらう。君が言ったんだからな。ちゃんと聞いてろよ」

「うん」


彼女は可愛い笑顔を見せてうなずいた。


「陰口を言っているお前ら、よく聞けよ。俺は普通の高校生だけどアニメの世界から出てきたような絶世の美女と付き合ってるんだよ。彼女はお前らには見せない可愛い笑顔を俺にはたくさん見せてくれるんだ。嫉妬するよりもお前らも彼女のような美女と付き合ってから言えよな」


俺が陰口を言っているやつらに言うとやつらは顔を赤くして怒っている。


「まっ、彼女より美女はいないと思うけどな」


俺はそう言って彼女を抱き寄せた。

男達は逃げるようにどこかに行った。


「ねえ、アニメの世界から出てきたような絶世の美女って何?」

「ん? 俺が君を見て最初に思った印象だよ」

「何それ?」

「大きな目に、長いまつ毛と綺麗な黒い髪のさらさらロングヘアー。そして形の綺麗な唇」


俺はそう言って彼女の唇を親指でなぞる。

彼女は頬を赤く染めて俺を見る。


「でも、それは最初の印象」

「今は?」

「どんな世界の絶世の美女よりも君は美しく、可愛い」

「そんな言葉を私はいろんな人から聞くけどあなたに言われるとすごく嬉しい」

「その俺にだけに見せる笑顔が俺は好きなんだ」

「笑顔?」

「その笑顔が俺は君の恋人なんだって教えてくれる。だから周りに何を言われても聞こえないんだ。でも、君が嫌なら俺は君の為に言うよ。さっきみたいにね」

「本当、あなたって不思議な人ね」

「それは誉め言葉?」

「うん。誉めてるよ」

「それなら良かった」

「本当はそんなことを言いたいんじゃないの」

「何?」

「私はあなたが大好きよ。私の中身もちゃんと見てくれるあなたが大好きよ」

「うん。俺も同じ気持ちだよ」

「言ってよ」

「大好きだよ」


俺は彼女にそう言って形の綺麗な唇にキスをした。

キスの後、彼女はまた俺の好きな笑顔を見せてくれた。

読んで頂きありがとうございます。

やっぱり見た目じゃなくて中身を見てほしいですよね。

何かご意見がありましたら教えて下さい。

また朝の6時頃に短編投稿します。

次の新しいストーリーも楽しんで読んで頂けると幸いです。

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