75 尾張の大うつけ兄弟
「オレ達は何しているんだろうな」
信賢が愚痴を言うと弟の信家が
「うつけでしょう」
と返事をしてきた
・・・いまやオレ達兄弟が『尾張の大うつけ』になっていた
事の起こりは、父である岩倉織田家の当主である信安が織田弾忠家の信長殿に家督争いの仲裁を頼んだことだった
どうしても次男の信家に継がせたいらしい信安
岩倉織田家が真っ二つに割れているので外に助力を頼んだと言う訳だ
信長様の返事
「力量のある方を後継ぎにせよ」
かくして足軽20名づつの小隊を率いて美濃の国(岐阜県)との国境に出陣となった
美濃の国の斉藤家と尾張の国の織田家は昔からとにかく仲が悪かった
領地が接している分、諍いも多い
お互いに責めたり責められたりしているため過去の遺恨が山積みされていた
今現在は、『美濃のまむし』と呼ばれている斉藤道三の娘の帰蝶と、『尾張の大うつけ』と名高い織田信長の婚姻によりお互いに小康状態だが、家臣同士の小競り合いは日常茶飯事である
そんな難しい場所でお互いに競いあえと言ってきた信長
悪意があるとしか思えなかった
早い話、斉藤家の手によって兄弟を亡き者にして清州織田家のように岩倉織田家をとり潰そうとしているとしか思えなかった
だったら拒絶すればよいかと言うと信安が話を持って行った手前、取り下げるのも憚られた
おまけに尾張の国の守護の斯波氏からも「がんばるように」と内々の励ましがあったとなればやる以外の選択肢はなかった
・・・もはや斯波氏は信長の操り人形であった
聞く所によると今回の一件が成功すると20人隊長、100人隊長、500人隊長といったように軍が再編されるらしい
戦いに勝てば出世ができる判りやすい仕組みであるから信長の家臣達からは失敗するなよとの無言の圧力が来ていた
いや某単細胞の武将が「負けやがったらこの手で縊り殺してやる」と言ったという噂が国境まで来る始末
もはや『岩倉織田家の内紛はどこに行ったの?』といった事態になっていた
そんな中、国境付近で斉藤家家臣の下っ端と戦いに明け暮れる日々
小競り合いしかないので成果は少ない
おまけに負傷しても補充がないため最初20人いた足軽も10人を切っていた
「一体優劣はいつつくんだろう?」
と、いつしか家督なんてどうでもいいから、早く決着をつけてくれと思う信賢信家であった




