58 苦労人織田信実登場
「織田信実でござる」
尾張の国守護、斯波義銀は織田家から新たな助っ人を迎えていた
ところが挨拶を受けたにもかかわらず
「よしなにたのむ」
と義銀は投げやりに返答した
親兄弟をまとめて亡くした14歳なのだ
返事をしただけマシとも言えるのかもしれない
いくら守護であってもそんな態度はゆるされない
只でさえ人手が足りないとこに洗われた助っ人なのだ
もう少し丁寧であってもよかった
それにもかかわらず信実は動じなかった
それはそうである
もうすでに30代も後半
平均寿命が50歳の戦国時代ではそろそろ引退か?という年頃なのだ
子供の癇癪くらいで動じるはずがなかった
また今までの苦労の人生を思えば大抵の事では動じなかった
信実は前当主の信秀(信長の父親)の四男として産まれた
後生で名前を知られていないことから判るように当然庶子である
同じ庶子でも次男の信康は犬山城主となっていたことから冷遇されていたと言ってよかった
それに文句を言わずにただ淡々と戦に明け暮れていた
まあ庶子の四男なんてこんなもの、と諦めているからである
とりあえず妻も子供もいるのでまあ家臣として扱われるだけまし
下手に相続争いに巻き込まれないように注意しようと「めざせ一般市民」を心がけていた
そんな織田家家臣として日々働いている信実は先日、兄の信光に呼び出された
清州の織田本家が馬鹿やっちゃったので後宜しく(意訳)
ということで丸投げされた
おまけに清州城に常駐してね、ときた
ココで怒らない信実は確実に織田家に染まっていると言えた
なお信長から
「一人じゃ手がたりないから熊を貸すよ(意訳)」
とのことだった
たった二人っきりの援軍
それもそろそろ引退真近のロートルと若者の凸凹コンビ
ところが意外に社畜根性が染みついた二人が出会ってしまったからさあ大変
清州城でまき起こる波乱の日々はこうして始まった
・・・後日の信長は熊を付けたことを大いに後悔した




