14 帰蝶登場
「三郎殿!さっさと始末なさい!」
帰蝶は信長に向かって弟を殺すように言ってきた
弟の信勝が謀反を起こす動きがあるのだ
だからそう言うのもある意味当然であった
・・・『美濃のマムシ』の荒魂は見事に娘に受け継がれていた
この戦国時代、家督を奪う方法は二つある
一つ目は正々堂々戦をしかけて相手を殺すこと
二つ目は大ぜいの家臣で取り囲んで家督を譲らせること
である
まあ二つ目が行われるのは一つ目の殺す前だから選択肢は一つと言ってい良いだろう
信勝側は土田御前が
「挙兵しなさい!」
と朝に晩にと四六時中信勝に言っているとの噂が帰蝶の住んでいる名古屋城にまで届いている
それにつられ日に日に内戦に傾いていた
開戦は時間の問題であった
ところが信長はのんびりとしていて未だに内戦の準備をしていないのだ
帰蝶が怒るのも当然である
なにせ自分の命が危ないのだ
怒らない方がおかしかった
信勝側は日に日に味方が多くなっていた
勝ち馬に乗りたいと思うのは誰も同じであるからだ
「父に助力を頼みますわよ!
いいですわね!」
とうとう帰蝶は切れた
ここで負けては斎藤家の名が廃る
もはや意地であった
斎藤家と織田家を比べるとどちらが上か?
そう聞かれたらほとんどの人間が
「斎藤家」
だと答えるだろう
美濃のマムシという二つ名は伊達ではないのだ
・・・信長が家督を継げたのも道三が後ろで睨みをきかせていたからである
もっとも100戦して100勝というわけにはいかないのも事実である
斎藤道三は加齢のために下り坂
織田信秀は最盛期
そんな不幸な出来事が重なり道三は戦に負けた
和議のための条件として出されたのが道三の娘の帰蝶の信長への嫁入りである
帰蝶にとっては屈辱であった
尾張の片田舎に嫁ぐのだ
おまけに相手はいくら今一番勢いがあるといっても尾張の大うつけ
機嫌が良い娘がいたとしたらその頭はおかしいと言えるだろう
当然ことながら仲は悪かった
お互いに気が強いのだ
上手く行くはずがないのである
・・・実際結婚して4年あまり、子供が出来る気配がまったくなかったのも当然である
大うつけ殿
いいですね
堂々とそう確認してきたほど帰蝶の機嫌が悪くなっていた




