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三位目 幽霊さんの存在証明


「よ! 神納木。守護霊は見えたか?」


昼休み、俺が飯を食べようとしていると開口一番に

月島がそう聞いてきた。これは......どう答えるのが正解だ? 


「いや、全く。というか、夜中の3時にやらされたせいで凄く眠い。

 俺の睡眠時間返せ」


儀式を行った時点では俺に守護霊は居なかったのだから間違いは

言っていないだろうと思いつつ、俺はわざとらしく欠伸をして見せた。


「え? あの儀式マジでやったのか。てっきり神内木のことだから

 馬鹿馬鹿しいとか言って、やらないと思ってたんだが」


流石、俺と校内で一番会話をしている知人。何時もの俺なら絶対に

やっていただろう行動をズバリと当ててきた。


「そのつもりだったんだけどな。3時前に喉が渇いて起きたから

 ついでに一応やった。守護霊とやらは見えなかったけどな」


そもそも、あの儀式が本当に守護霊を見る儀式であっても自分に守護霊が居なければ

見えないんじゃないだろうか。うちの守護霊の話では幽霊になってから他の幽霊に

出会ったことは無いって言ってたし。普通の人間はそもそも守護霊を連れていないの

かもしれない。


「やっぱり、神納木もか。俺も昨日、3時まで起きてやったんだが守護霊なんて

 見えなかった。ま、どうせ幽霊なんて居ないんだけど話のネタにはなるよな~」


楽しそうに笑う月島に俺は微妙な表情をすることしか出来なかった。本物の幽霊を

見てしまった手前、月島の言うことを肯定することも出来ないが、否定しようものなら

絶対に馬鹿にされるだろう。


「ああ......そうだな」


「何だよその顔。もしかして、本当は神納木も幽霊に憧れたりしてたのか?

 いやいや、ナイナイ。そんな非科学的なの」


何だろうこの気持ち。昨日の自分が言っていたことを月島は言っているだけなのだが

幽霊の存在を認知してしまった今、無性に腹が立つ。しかし、腹を立てた場合昨日までの

自分にイラついているも同然なので中々、怒りづらい。


「勝手に俺が幽霊なんかを信じていると決めつけるな。昨日もオカルトには

 興味が無いって言っただろ」


「......ま、そりゃそうか。神内木がそんなロマンチストな訳ないし」


「リアリストと言え。ロマンを追い求めるくらいならマロンを

 調理した方が腹の足しになる」


俺がそう言うと、月島は突然吹き出した。そんな面白いことを

言ったつもりは無いのだが。


「プッ! クッ、クククク。ロマンよりマロンっ.......!

 プハハハハ。......フフッ、フフフフ」


「何がツボったのかは知らんが、そんなに面白かったか?」


俺は気が狂ったかのように俺の机をバンバンと叩いて、笑い出す

月島に若干引きながら聞く。


「い、いやマジで......クッ、ククク。いや、ロマンよりマロンとか

 お前らし過ぎるだろ。駄目だ。プッ」


「そりゃあ、俺の言うことなんだから俺らしくて当たり前だろ」


「......はあ、落ち着いた。昔から一度壷に入ると抜け出せなくなるんだ。

 あまり笑かさないでくれ」


「いや、知らねえし。俺はそろそろ昼飯食うから、お前も取り巻きの

 連中と食ってこいよ。俺は一人で食べたい」


朝からあの騒動があったせいで時間がだいぶ削られ、朝飯も食えていない。

せめて、昼食くらいはゆっくりと食べたい物だ。


「チェッ、付き合いが悪いのもお前らしいな。お前がそう言うなら

 俺はもう行く。精々、孤独のグルメを楽しんでくれ」


そんなことを言いながら、5~6人で固まって昼食を食べている連中の

元へと月島は走って行った。確かに俺の一人で飯を食べたいという

願望は事実だ。しかし、月島を向こうへやったのは別の理由があった。


『残念ながら孤独のグルメは楽しめそうに有りませんね。枯葉さん』


「別に家で留守番してても良かったんだぞ」


『それは嫌です。今まで枯葉さんを驚かせるチャンスを伺っていたときも昼間の

 学校なんて驚かせそうに無いなと思って、枯葉さんが学校に行ってるときは

 ずっと家に居たんですから』


知らず知らずの内にコイツとシェアハウスをしていたのか。

というか、俺に何も言わずに家に住み着いていた癖に何でわざわざ

改めて、住まわせてくれなんて願ってきたのだろうか。


「じゃあ、今まで通りそうしてくれよ。此方も授業中ずっと

 真横で勉強の様子を見られてると集中出来ない」


『嫌です。どうせ、枯葉さんは私に慣れてしまって何をしても驚かないように

 なってしまったでしょうから只の暇潰しと割り切って枯葉さんの学校生活を

 覗き見させて頂きます。あ、知ってるでしょうが私は幽霊なので叩いても

 透けますよ。無論、私が実体化すれば触れるので実体化と霊体化を繰り返せば

 枯葉さんの攻撃を全て透けさせて、私が一方的に叩くことも......』


俺は淡々と述べられていく幽霊という種族の理不尽とも言える強さに

耐えきれなくなった。


「このチート生物がっ!」


実体化に霊体化? それに加えて金縛り? 異世界無双物のラノベでは

無いのだからそんなインフレした強さは俺が認めない。


『枯葉さん......周りから奇異の目で見られてますよ?』


言われた通り、周囲を確認すると教室で昼食を食っている連中から

冷めた目線が送られていた。


「うっ......すまん」


『いや、私は別に周りの人から枯葉さんが何もないところに

 話しかけている変人認定されても困らないので、良いんですが』


「聖水ぶっかけてやろうか」


そう、この幽霊の姿は俺にしか見えていないのだ。いや、俺にしか姿を

見せていないといった方が正しいか。コイツに聞いたところによると姿を

見せる相手は指定出来るらしく、学校に付いてくると言うので仕方なく

俺以外には見えないようにして貰っている。


月島を退かしたのは、コイツと話をするためだ。幸い、俺の周りに人は居ない。

小さな声で話せば周りにバレずに意志疎通が取れるが、先程のように勢い

余って大きな声を出すと、周りから凄く注目を浴びてしまうのが難点だ。


実のところを言うと、守護霊に守って貰わなければいけないようなことは

殆ど無いので、家で寛いで貰ってても何の問題も無いのだがご覧の通り

コイツは暇だという理由で、俺に付き纏っている。


『ところで、枯葉さん。今日のご飯はパンですか。健康に悪そうですね』


「うるせえ。それに、毎日パンな訳じゃない」


『何時もは何を食べてるんですか?』


「コンビニ弁当」


『そっちも体に悪いじゃないですか......』


守護霊は呆れたように溜め息を吐いた。俺の今日の昼食はメロンパンに

クロワッサン、ベーコンエピに熱々のブラックコーヒーだ。


「仕方無いだろ。料理もロクに出来ない奴が一人暮らしなんかを

 してるんだから。自然と不健康な食生活になる」


『そういえば枯葉さん、あのアパートで一人暮らしですよね。

 お母さんとお父さんはどうしたんですか?』


「ん? ああ、親は両方あのアパートから少し離れた住宅地の一軒家に

 住んでてたまに様子を見に来るぞ。一人暮らしをしてるのはあれだ。

 親の教育方針的なの」


『へ~そうなんですか。まあ、枯葉さんの親御さんが来ても

 私が姿を消せば、どうにかなると思いますけど』


その時、俺の脳裏には俺の様子を見に来た親が扉越しに俺とコイツの会話を聞いて

俺を精神科に連れていく様子がちらついた。絶対、そんなことにはならないように

しよう。そんなことを考えていると俺の頭に一つの疑問が浮かび上がった。


「あのさ、守護霊? 冷静に考えるとお前の存在って俺の幻覚ってことで

 片付けられるよな」


『枯葉さん。まだ、貴方はそんなことを言ってるんですか。

 じゃあ、試しに金縛りでもかけてあげま......』


彼女が話を終えるまでに、俺は口を開き自分の考えを述べた。


「お前の姿と人魂は幻覚。金縛りはストレス的なものってところでどうだ?」


『じゃあ......殴ってあげましょうか?』


すいません、なんかうちの守護霊の存在の証明の仕方が乱暴なんですが。

本当にあの優しくて大人しかった真白の亡霊なのだろうか。


「すぐ暴力に走るのやめろ。それに、お前に殴られて怪我をしたからって

 俺が幻覚を見ながら自傷したんだと解釈することも出来るだろうが」


『枯葉さん......だいぶ、捻くれてますね。真白さんも何故貴方のような人に好意を

 抱いていたのやら。分かりましたよ。要は私でも枯葉さんでも無い、第三者に

 私が影響を与えれば良い訳ですね?』


「まあ、有り体に言えばそうだが......ってお前何処に行く!?」


フワフワと何処かへ飛んで行ってしまった、彼女に驚きそんな声を漏らしてしまった

自らの口を慌てて手で押さえながら彼女が向かった先を見た。すると、彼女は机を

くっ付けて昼食を食べている月島達の前で止まり......。


『枯葉さん、良く見ておいて下さいね? 行きますよ!」


「うわあああ! 水筒がっ!?」


「ちょっ、月島。水筒が机から落ちた拍子に水筒の蓋が開いて

 床に漏れ出てるぞ!?」


「ちょ、濡れた。濡れたって!」


「誰か雑巾持って来てくれええええ!」


「人を呼ぶ暇があるなら、お前が持って来いよおおおお!」


阿鼻叫喚の宴を巻き起こした。


『あ、あれ。水筒を落とすだけのつもりだったんですが

 蓋が開いちゃって凄いことになっちゃいましたね......』


そんな絶叫が聞こえる場を目にしながら『てへぺろ』とばかりに

舌を出す彼女を見て俺は彼女の実在を再確認した。月島......哀れだ。

どうも、蛇猫です。今回はお知らせが有ります。

何と、Twitterの方で募集を掛けたところこの作品『一人暮らしの俺、美少女の幽霊を養うことになりました。 ーヒュゥゥゥドロドロドロ~でうらめしや~な彼女との生活ー』の略称、もとい愛称の案を頂きました!

その名も『うらめし生活』です! これからはこの作品を呼称するとき、この愛称を使わせて頂きます!

案をくれた方、ありがとうございました!


これからも失踪せずに頑張りますので、評価、ブクマ、感想、レビューどうか宜しくお願いします。




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