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最終柱 ヒュゥゥゥドロドロドロ~でうらめしや~な彼女との生活


「「カンパーイ!!」」


「乾杯」


騒がしくグラスを打ち付ける二人をよそに俺はそう呟く。


「おいおい神納木、ノリ悪いぞ? 久しぶりに会ったんだから......

 いや、神納木にノリを求めるのは残酷か」


「そうですよ月島さん。私、この人と一緒に暮らし始めてもう4年くらいに

 なりますけど、ずっとこんな感じです」


「まあ、陰気臭くてクソ真面目なのが神納木の個性だからな。下手に

 パリピ化されたらそれはそれで紅葉谷さん、キツイと思うぜ?」


「パリピの枯葉さん......確かにキモいですね。私も何やかんやで、この如何にも

 友達少なそうな性格をしてる枯葉さんに慣れちゃってますし。今更、方向性を

 変えられると別れ話を切り出さなければいけなくなるかもしれません」


「黙って聞いてれば、好き勝手言いやがって。お前らが食べてる唐揚げは一体

 誰に作って貰ったんだろうな?」


俺は顔筋を浮かせながら、顔をひきつらせてそう言った。


「「アンタ」」


「息ピッタリだなあオイ! 飲み会の場所を提供して、わざわざつまみまで

 作ってやった俺にもう少し感謝の意をだなあ......」


「まあまあ、そう怒るなって。神納木も酒飲もうぜ」


「枯葉さんが飲んでるのはただの炭酸水ですけどね」


「はあ!?」


驚いたように月島は声を上げる。


「仕方ないだろ。酒飲めない体質なんだから」


「枯葉さん、普通のワイン一杯でベロンベロンに酔うんですよ」


「酒なんて人に迷惑掛けて飲むものでもなければ、無理に飲むものでもないからな。

 何より炭酸水の方が美味しいし。ビールとか言う苦くて肝臓にも財布にも優しく

 ないプリン体を多く含んだ汁を飲むよりも炭酸水を飲む方が健康的だぞ」


俺は嫌味っぽく笑いながらビールをジョッキでガブガブと飲んでいる月島に言う。


「......紅葉谷さん、なんか腹立つからコイツに酒飲ませて良いか? 

 神納木が酒でベロンベロンに酔うところとか見てみたいし」


「許可します」


「お前はどの立場で許可してるんだよ! てか月島、無理矢理酒を飲ませるとか

 アルハラ甚だしいな!? ......って、ちょっ、霊華!? やめろおおおおお!」



「にゃふう。えへへ。こたつ、ポカポカ~」


「......もしかしてこたつに潜りながら紅葉谷さんの足に顔を擦り付けてる

 猫みたいなソレって、神納木枯葉とかいう名前だったりするか?」


「......どちらとも言えないですね。はたして、この子を枯葉さんと

 呼ぶことは正しいのでしょうか?」


霊華の足、暖かいな。


「......試しに呼んでみるか。おい神納木、大丈夫か?」


「だいじょーぶ~!」


「......大丈夫らしいですよ」


「......らしいな」



「ふわあ......おはよう。いや、ごんばんは、か」


「あ、枯葉さん。起きましたか」


「アルコールのせいで、お前に梅酒キメさせられてからの記憶がないんだが

 俺はどうなっていたんだ?」


俺が欠伸をしながら聞くと、霊華は無言で目を逸らした。


「い、いや、ええっと、その、小動物的になっていたと言いますか

 何と言いますか......」


「・・・? なあ、月島」


「俺には聞かないでくれ。というか、命が惜しけりゃ誰にも聞くな」


訳が分からない。


「ま、まあ、兎に角仕切り直しましょう。はい、どうぞ枯葉さん。炭酸水です」


「お、おう。ありがとう」


「つーか、紅葉谷さんって酒飲んで良いのか? 精神は成長しても幽霊だから

 体は中学生の真白さんのままだろ?」


「其処はよく分かりませんが、幽霊なので大丈夫ってことにしてます」


霊華は笑いながら梅酒をグイッと飲む。畜生、美味そうに飲みやがって。


「まあ、少なくとも神納木よりは大丈夫そうだな。あ、そう言えば紅葉谷さん

 新作出してたよな。買ったぜ」


「マジですか! お買い上げありがとうございます!」


「よくもまあ、あんな変態的な文章書けるよな」


俺は苦笑しながら唐揚げを摘まむ。


「そりゃまあ、変態的な恋人がいるので」


「え、何お前浮気してたの?」


「どういう思考回路してんですか......」


「息ピッタリだな」


月島がからかうように言う。


「「まあ、恋人ですし(だからな)」」


「マジで何なのコイツら......。良いなあ、恋人。俺も欲しい」


「この前、彼女が出来たって自慢してなかったか?」


「この前って言うか、3年以上前な。電撃的に振られたよ。他に好きな人が

 出来たらしい。それからはずっと独りだよ」


月島は溜め息を吐き、ビールを一気飲みした。


「一気飲みはやめとけ。死ぬぞ」


「悪い。お前らがイチャついてるのを見てたらイライラが止まらなくなってな。

 ......もうこんな時間か。そろそろ帰るよ。待たな」


「自棄に急だな。待た来いよ」


「さようなら~!」


月島が何の前触れもなく帰り、残された俺達の間には何とも言えない

微妙な空気が漂っていた。


「なあ、霊華」


「はい?」


「一応、これ」


微妙な雰囲気の中、俺は予め用意していた箱を霊華に手渡した。


「何ですか?」


「いや、今日って5月14日で真白の命日であり誕生日だろ? ということは誰からも

 産まれてないお前にとっての誕生日は今日なんじゃないかって、思ってな。一応

 誕生日プレゼントだ。因みにその事実に気付いたのは昨日だったから敢えて月島

 には言わなかった。突然、言われてもプレゼントなんて買ってないだろうし」


「成る程。枯葉さん、気が利くじゃないですか! 開けて良いですか?」


顔が熱くなっていくのを感じる。流石に恥ずかしい、というより怖いな......。


「おう」


霊華が嬉々として箱の包装を開けていくと、中には更に小さな箱が入っていた。

そして霊華がその小さな箱を開けると


「枯葉さん、誕生日プレゼントでこれを送るとは中々勇気有りますね。

 受け取って貰えなかったらどうするつもりだったんですか」


其処にはプラチナで作られたリングが鎮座していた。


「その時は首を括ろうと思ってた」


「愛が重いですね!? いや、私の言えることじゃありませんけど」


「霊華」


「あ、ちょっと待ってください枯葉さん」


俺が話を切り出そうとすると、何かを察した様子の霊華がそれを制止した。


「は?」


「今、私にプロポーズしようとしてましたよね? 枯葉さんから一方的に

 プロポーズされるのはなんか嫌なので同時にしましょう」


「ちょっと何言ってるか分からない」


「ほら、同時プロポーズしますよ! さーん、にー」


「え、ちょ、待って」


「いーち」


「え、マジで言うのこれ?」


「ぜーろ」


「ああもう、言ってやるよ畜生!」


「「結婚して下さい!」」


俺と霊華は大きな声で同時にそう言うと、互いを抱き締めた。


「ムードもへったくれも無いって言うか......全然、ロマンチックじゃねえなこれ」


「いや、同時プロポーズって案はまあまあロマンチックだったと思いますよ?」


「だとしても、もうちょっと言い方とか雰囲気ってものが有るだろ。何だ今の」


「まあまあ、私達らしくて良いじゃないですか」


何故だろう。今のプロポーズが俺達らしいってのには滅茶苦茶共感出来る。


「まあ、良いか。指輪を受け取って貰えたのなら」


「ありがとうございます、この指輪」


「大切にしろよ。大学生になってから始めたバイトだが、その給料の貯金が

 その指輪一つで消し飛んだんだぞ。その指輪は俺の労働二年分だ」


「そういうことを言うのも、ロマンチックじゃないと思うんですけど」


「いや、もうお前との恋愛にロマンチックを求めるのは諦めた」


真白はかなりのロマンチストだが、コイツはそんな感じでもないしな。


「そうズバッ、と言われると若干傷付きますけど。まあ、正しい判断だと

 思いますよ。......というかこの指輪、付いてる宝石がダイヤじゃないん

 ですね。何ですかこれ。サファイア?」


霊華に渡した指輪には美しく、深い青色の宝石が付いていた。霊華の髪の

色とそっくりだ。


「正解、サファイアだ。お前の髪とそっくりの色だからダイヤモンドよりも

 お前に似合うだろうと思ってな。後、俺は単純にダイヤモンドよりも色が

 有る宝石の方が好き」


「枯葉さんの好みでも有るって、何だか嬉しいですね。じゃあ枯葉さん......

 いえ、貴方。これからも宜しくお願いしますね」


「おう、宜しくな」


「これで晴れて私達は夫婦ですね! 貴方も私のことを『霊華は俺の嫁』って

 正しい意味で言えるようになったんですよ!」


息を荒くしながら霊華は言う。......結婚したところで、あまり変化はなさそうだな。


「お帰りなさい、貴方。お風呂にする? ご飯にする? それとも......くうううっ。

 枯葉さん! これ良い! これ良いですよっ! バリバリの新婚って感じで!」


「おう、そうか。でも『貴方』って呼ばれ方は何と無くしっくりこないから

 『枯葉さん』に戻してくれ」


「あ、それは私も思ってました。じゃあ、何日か新婚プレイしたら戻しますね」


























5月14日誕生花 ワスレナグサ


花言葉 真実の愛情・私を忘れないで



THE END

......フフフ。フフフ。グハハハハハハハ!!!!


これにて『数年前に死んだ筈の幼馴染み、記憶を無くして幽霊として現れました!? ーヒュゥゥゥドロドロドロ~でうらめしや~な彼女との生活ー』は完結となります! 蛇足の最後までお付き合い頂いた読者の皆様、本当にありがとうございました!


私としても初めての自作の完結ということでとても感慨深いです。少し寂しい気持ちも有りますが、とても嬉しくもあります。最終話......もとい、最終柱後のストーリーは読者の皆様一人一人に想像して頂けたら幸いです。これにて本作は完結となりますが、新作を今週中に投下予定なのでそちらも宜しくお願いします!


後、最後までこの作品を読んでくれた皆様に最後に私からお願いが有ります。どうか、この作品についての感想をお願いします。『面白い』などの一言だけでもこの作品を書いて良かったと思えますし、新作へのモチベーションにもなります。なので、どうか、どうか、宜しくお願い致します!


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