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九柱 見付けた


「入賞......って、マジで言ってんのか」


「マジで言ってます。しかも、大賞です。書籍化確約&100万円です」


霊華と真白の文章力もそうだが、俺と霊華の恋愛をモチーフにした小説で

大賞を取れるって凄いな。


「お前、戸籍とかないけど契約書とか大丈夫なのか?」


「あ、其処は枯葉さんにお願いします」


さらっと滅茶苦茶なことを言ったぞコイツ。


「お前、それって要するに......」


「ゴーストライターですね。ghostwriter。私が書いた小説を枯葉さんの

 名前で世に出すんです。私は承認欲求とか無いので全然大丈夫ですよ」


ペロッ、と霊華は舌を出して笑う。ちょっと可愛い。


「お前が大丈夫かは聞いてねえんだよ。勝手に話を進めるんじゃねえ。

 ......まあ、受かってしまったものは仕方ないからやるけど」


「流石、枯葉さん。話の分かる人ですね。あ、受賞のお祝いのプレゼントは

 枯葉さんのファーストキスで良いですよ?」


「分かった」


「え、分かったって何を......って、あわわわわわっ! ちょ、枯葉さん!?」


慌てる霊華を俺は抱き締め、彼女の唇にそっと自分の唇を重ねた。


「これで満足か?」


「『満足か?』じゃ、ありませんよ! 突然何なんですか!」


「お前が言ったんだろ。入賞祝いはこれで良いって」


「だ、だからってこのタイミングでする人がいますか! それに枯葉さん

 今までは私とキスするの嫌がってたじゃないですか!」


霊華は顔を真っ赤にしながら憤慨する。怒って赤くしているのか、恥ずかしがって

赤くしているのか、一体どっちなのだろう。


「うるせえ! お前との付き合いも長くなったし良いかなって思ったんだよ!

 てか、俺が良いムードの中でキスをする勇気がある人間な訳がねえだろ!」


「ま、それもそうですね。ファーストキス、ご馳走様です」


「急に冷静になるな。......まあ、取り敢えず受賞おめでとう」


「えへへ。ありがとうございます。最初は真白さんの真似事で始めた小説の

 執筆だったんですけど、何だか段々楽しくなってきてしまって。気付いたら

 ハマってたんですよね。これからも枯葉さんにたくさん迷惑を掛けることに

 なると思いますが、私は小説を書き続けたいです。良いですか?」


霊華は珍しく、遠慮がちに恐る恐る聞いてきた。


「精々筆を折ることにならないようにな」


俺は可愛げなくそう答える。


「......本当に、本当にありがとうございます! 大好きです!」


霊華の目は未来への希望で溢れていた。俺はこの目をよく知っている。


「真白、見付けた」


俺がふてぶてしく笑いながら彼女に向かってそう言うと、彼女は驚いた様子で


「約束、覚えててくれたんだね」


と、笑い返した。

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