表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/86

第三十四話 ボランティア④

成り行きで参加することになったゾンビ警戒区域の救助ボランティア。

手ぶらで来てしまった俺はゾンビを倒す武器を調達するため、ホームセンターへ。

 壁際に沿って、ホームセンター内を移動する。なるべく音を立てずに……


 入り口に沢山角材が置いてあったので、取り敢えず拝借した。

 暗いし、緊張するな……

 中へ入ってから数メートル進むと、早速いた。縦に並んだ陳列棚の三ブロック先だ。


 棚の影に隠れながら、先へ進むのを躊躇する。一匹だけであれば、さっさと倒して先に進んだ方がいいか……いや、角の向こうに見えないもう一匹がいた場合ヤバい。

 そんなことを考えながら、チラチラ確認している間に居なくなってくれた。


 よし!


 その後、問題なく進んで行くが、電気のスイッチがあるスタッフルームは一番奥のようだった。


 奥へ進めば進むほど、どんどん暗くなっていく。

 目視が全くできないほどの暗さではないが、天井からぶら下がっている看板の文字を読み取るのは困難だ。

 

 俺は五感を研ぎ澄ました。

 特に注意を要するのは陳列棚が途切れている所である。通路にいないか、棚の影から注意深く確認する。いても離れていれば、大丈夫だ。忍び足で素早く次の陳列棚まで移動する。


 入り口から建材コーナーを通り過ぎ、工具コーナー、収納家具コーナー……

 結局、俺は店内の一番奥まで移動した。

 途中、工具コーナーで使えそうなニッパーを見つけリュックに入れる。

 金槌とか懐中電灯も近くにありそうだが……裏側の棚かもしれない。探す余裕はなかった。

 

 縦向きに並んだ長い陳列棚が奥まで六ブロック続いている。二つ背中合わせに配置された棚を一ブロックとして、横には十列くらい……

 

 俺は店内の一番奥まで来て、動けなくなった。

 音である。

 かなり近くから、ゾンビのふらついた足音が聞こえる。俺は陳列棚の影に身を潜めた。

 

 大丈夫だ。近くから聞こえる足音は一匹のみ──しかし、更なるピンチが俺を襲った。

 

 気配を感じて振り返る。

 今いる陳列棚の端から一体出て来た。

 距離にして四メートル。

 挟まれた。


 ビビっている暇はない。

 攻撃力の低い角材では三、四発入れなければ倒せない。ゾンビはまだ俺に気付いていなかった。

 

 背後から現れたゾンビへ俺は向かって行った。

 音を立てぬよう、爪先立ちで小走りする。

 近付いて一気に角材を振り下ろした。


 ゴン! ゴン! グチャ……


 やはり三発必要だったか……

 余韻に浸っている時間はなく、今度は反対側から音の主が飛び出してきた。

 今は俺を認識し、呻きながら襲いかかってくる。

 

 結構早いな──


 ターゲットを認識している時のゾンビの動きは早い。脳天に角材を叩き付け、一瞬止まった所ですぐ二打目を入れる。動きが鈍った所でトドメだ。

 

 スムーズに倒したと思っても、ゾンビはだいぶ俺に近付いていた。

 初めて戦った時みたいに掴まれはしなかったものの、ギリギリの線だ。倒すのに三発は危険過ぎる。一匹ずつならともかく、複数体では絶対やられる。


 しかも、今の二匹を倒した音に他のゾンビ達は反応している。

 あちらこちらから呻き声が聞こえ、明らかにこちらへ向かって来ているのが分かった。


 戻るか……いや、戻るにしても危険過ぎる。

 とにかく移動せねば……音の方へゾンビ達は向かって来る。

 棚の影に隠れながら、慎重に移動する余裕はなくなった。


 俺は店内奥の通路を飛ぶように走った。

 自らの呼吸音が大音量で耳に入ってくる。

 

 俺、こんなに鼻息荒かったっけ??


 金物コーナーを抜けてリフォームコーナーまで……トイレや洗面台の前を走り抜け、とうとうスタッフルームのドアを見つけた。


 やった!! 電気点けれる!

 

 ドアノブを回す。

 ガチャリ……

 良かった。開いてる……


 直ぐにでも中へ入りたかったが、今までの経験がそうさせなかった。

 すんでのところで俺は重いドアを開け放った。本能的に入るのを躊躇したのである。体が自然と危険な行為を学んでいた。



「ウギギィアアアアア!!」

 


 ゾンビの呻き声は、全身に赤信号だと伝えた。開け放したドアからゾロゾロと出る出る出る……ゾンビ……

 

 俺はドアの裏側で呼吸を止めた。

 苦しい。気を緩めれば、変な声が漏れそう……背中を滝のように汗が流れ落ちる。

 

 外開きのドアが幸いしたのだ。

 開けた時、俺はドアの後ろに隠れることができた。ゾンビ達は俺には気付かず、反対方向の通路へと進んで行く。

 

 五匹くらいか。


 出て行くゾンビが途切れた後、スタッフルームへ入って行く勇気はなかった。


 部屋の中は真っ暗だろうし、ゾンビが何匹残っているかは不明だ。


 ドアから手を離し、俺は出入り口の方へと走った。リフォームコーナーを背に鉄パイプの陳列棚を通る……そ、鉄パイプの……鉄?パイプ……だと!?


 ラッキー!!!


 五十センチくらい。程よい長さの鉄パイプをゲットした所で棚の端からゾンビが現れた。


 グチャ──


 一撃!!

 やっぱ金属サイコー!!

 リーチもちょうど良いし、最近愛用してた金槌よりグレードアップしてる。


 後ろから追って来る気配はなかったので、棚が途切れた所にだけ気を付けながら移動した。気配がある場合は単数か複数か耳を澄ませ、単数であれば強行突破する。幸い複数でいることはなかった。

 

 何より鉄パイプをゲット出来たことは大きい。一撃で倒せれば、他のゾンビが音に釣られて寄ってくる前に逃げれる。

 とにかく走って、走って、走り抜いた……

 



 命からがらホームセンターの外へ出た時、俺は全身汗だくになっていた。

 

 頭の中で太鼓を打ち鳴らす音が聞こえる。

 ああ、俺の動悸だよ。

 リュックからタオルを出した。


 はぁーー、怖かった──

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 金属サイコー⸜(๑’ᵕ’๑)⸝ に笑ったwww 毎回ドキドキしちゃう(n*´ω`*n)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ