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第十三話 サバゲー①

姫嶋ヤシコちゃんからモグタンの絵のプレゼントを頂きました! ありがとうございます!


挿絵(By みてみん) 

 数日後、サバゲーの待ち合わせ場所にて。

 俺は唖然とする。



「神野君、それは……」


「ああ、これ? モグタンだよ」



 隣で唸っている相当腐敗の進んだゾンビを神野君は指して言った。

 

 口には玉猿ぐつわを噛まされ、頭には女性用パンティを被らされていた。

 勿論、両手は鎖で拘束されている。

 性別は……男か……

 とにかく腐敗の進みが激しく、胸の当たりなんか肋骨が見えているし、皮膚の色はかなり黒ずんでいる。そんな状態なのに不思議と腐敗臭はなかった。

 


「すっごい食いしん坊なの。だからモグタンなんだ」



 神野君はまるでペットの犬の話でもするかのような口振りで言った。

 違ぇよ。俺が聞きたいのはそんなことじゃない。



「ああ、何でパンツ履かせてるかって? 誰かに写真撮られたりして拡散されると困るなぁって。それで」



 いや、聞きたいのはそんなことじゃない……てか、今心読んだか?



「ああ、臭い? それはこれ」



 神野君がリュックから取り出したのは、ゾンビ用の消臭スプレーだった。



「ホームセンターとかで売られてるよ。普通に」



 へぇー、こんな物、売られてんのか。今の時代……違う……俺が聞きたいのはそこじゃない。

 戸惑う俺を察してか、近くに居たサバゲ仲間の一人が教えてくれた。



「師匠(神野君)が連れてきたゾンビ使ってハンティングするんだって」


「うん、最初は普通に対戦してその後ハンティングする」



 神野君は満面の笑顔で言った。


 ……ハンティングって、ゾンビ狩りのことだよな。前にテレビで見て、サイテーだと感じたあのゾンビ狩りを……イメージ的に不良がやるもんだと思ってたが……

 

 俺は神野君の顔をマジマジと見てしまった。

 神野君は多方面にディープな知識を持っていることから、仲間内で「師匠」と呼ばれている。高校時代の友人である。

 サバゲーの企画、セッティングも毎回してくれるし、リーダー的存在でもある。

 だが、俗にイメージされるしっかり者のリーダーイメージとは程遠く、結構な不思議ちゃんなのだ。


 見た目はまあまあイケメンである。

 高校時代、本性を知らない女子が告白して泣きを見てたっけ……

 付き合う事をすんなり了承した神野君は、某ゲームのヒロインのコスプレをその子にさせ、早速コミケに連れて行ったという。

 その後、ジャンルの違うミリタリー雑誌三誌の購読を勧め、休日はロボットアニメのBlu-rayを朝から晩まで見させたそうだ。

 アニメとか漫画は勿論のこと、ミリタリーにも全く興味のない子だったので一週間で離れていった。



「ガシュピンはハンティング初めて?」



 神野君の問いに俺は頷く。

 ガシュピンというのは俺のことだ。

 見た目が某キャラクターに似ているのでそう呼ばれている。



「一度、やるとハマるよ。ガシュピンは絶対ハマると思う」


「それより、その、モグタンはどうやって連れて来たん?」


「どうやってって……普通に車でだよ」



 キョトンとした様子で答える神野君。

 いや、当然のごとく、車でって言うけどさ、鎖で繋いでても背後にこれがいる状態で運転したのか……俺は絶対無理なんすけど……

 

 そうこう話してる内に遅れると連絡が来ていた青山君も到着し、メンバー全員が集まった。

 

 青山君と会うのは一年ぶりだ。

 全然変わってなかった。

 青山君は対面するなり俺の腹を撫でてきた。



「田守君、一層ふくよかになって……」


「うん、青山君もまだ逮捕されてなかったんだ」



 久し振りに会う者同士の会話とは思えない。

 早速、俺は神野君に青山君を紹介した。

 青山君は神野君の連れているモグタンに興味津々だった。



「すごーい! 僕、ゾンビ近くで見るの初めてなんすよ!」


「今日、これ使ってハンティングするから」



 得意気に言う神野君に対し、青山君は歓喜した。



「すっげー! 田守君、誘ってくれてほんとありがとう!」



 うん、まあ喜んでくれて良かった。仲間が増えるのは良いことだ。

 ……にしても、神野君と青山君、オーラがまるで一緒だ。


 俺が持って来たライフル型エアガンM16を見せると、青山君は更に喜んだ。

 青山君に貸すのはこれまで俺が使っていた物だ。俺は改造するために買った新品AK47を使う。


 結局、新しいライフルは母ちゃんから金を借りて買った。

 日雇いバイトは一日六千円から八千円程度しか稼げないし、コンビニバイトの給料日はまだ先だ。サバゲーまで間に合わなかったのだ。



「じゃ、始めようか」



 神野君の指揮のもと、俺達は二手に別れて対峙した。人気(ひとけ)のない沼地である。


 手入れしていないため、ボウボウと草木が生い茂りジャングルの様相を呈している。

 勿論、管理者の許可は取っている。

 私有地だから迷いこんでくる輩もいない。


 以前、公道に面した土手でやった時は通り掛かりの人に通報されそうになったが……今回は一般道から離れた沼地なので、その心配はなさそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] モグタンwww なんでパンツ頭にかぶせられてんだwww 普通に電車で連れて来る神野も神野だwww 日常にゾンビが溶け込んでる(*´艸`)
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