ロープと木材と石
忙しくてなかなかかけない・・
木々の間を歩きやすく均された道をルーシーの歩幅に合わせながらも急ぎ足で道を辿る。
木々や草花は力強さを感じさせる様に生命力に満ちていた、地球では見たことの無かった植物だった。ただ相良が知らないだけだったかも知れないが。
中でも目を引いたのが、一本の太い樹木の周りを太い荒縄の様な木が何本もグルグルと巻き付き、その螺旋状の木から毒々しい青紫色で表面がキウイの様なザラザラとした花が咲いていた。
よく見るとキウイの様な形の花の先端には骸骨の顔を模した様な穴が開いていた。
気味悪そうに見て居た相良に、その花は見た目は悪いけど乾燥させてお茶にすると美味しいと姉妹が言っていた。
珍しい物を見る様に辺りを見渡しながらも先を行く姉妹に続いて歩いていると、ふと気が付いた、妹の名前は分かったが姉の名前が分からない。村で何かとお世話になるかも知れないし何て呼べばいいかも分からないので聞いてみる事にした。
「そういえばルーシーの名前は聞いたけど君の名前は何て言うんだい?」
木のぼっこを片手に歩くルーシーの手を引きながら姉が振り返りながらも答えた。
「そういえば言ってませんでしたね、ムルド村のサラ・シュルトって言います、妹はルーシー・シュルトって言います。あ、ムルド村は今向かっている村ですね」
俺も名前を言った方がいいのか、思い出せないのを通した方がいいか考えていると、村の外縁部の簡素に出来た柵が見えてきた。
「村が見えてきました、急いで村長に知らせるので、そのまま付いてきてくださいね」
「あぁわかったよ、あと名前だけ思い出したんだけど、俺の名前は相良龍治って言うんだ」
都合よく名前だけ思い出した振りをした。
「サガラリュウジさん?変わった名前ですね・・、よろしくお願いします、でも名前だけでも思い出せて良かったです」
「へんななまえー」
変わった名前らしくルーシーには変な名前と笑われた、そんなルーシーにサラが軽くゲンコツした。
「ルーシー失礼でしょ、謝りなさい」
サラに軽くゲンコツされたルーシーが頭を両手で抑えながら謝ってきた。
「ごめんなさい」
何もゲンコツしなくても良いんじゃないかと思いながらもルーシーに笑って気にするなと答えた。
「そんな事より早く村長に知らせようよ」
居もしないモンスターを知らせるのもどうかと思ったが、別に警戒するに越したことは無いし大丈夫だろうと呑気な事を考えて居た。
「そうですね、村の皆を集めて備えないと行けませんし、時間がありませんし」
そう言って村の入り口の木で出来た支柱にこれまた木を乗せただけの門に向かった。上にはムルド村と書かれていた。
姉妹の後に続き沢山の丸太で作られた木造の家の前に付いた。
初めてログハウスを見た相良はボーっと家を眺めて居た。
「相良さん?入りますよ」
サラに呼ばれて気が付き簡素なログハウスのドアを潜った。
家の中は木の香りで落ち着く雰囲気だった、見た目や飾りは簡素だが長く使い込まれた家で初めて中に入った相良でも居心地が良さそうで関心していた、家の中を見渡している相良を他所にサラは村長と何やら話し込んでいた。
無論、ルーシーは木製のイスに座り足をブラブラさせ天井を見上げる様に暇そうにしていた。
「相良さんと言ったか、まずはご無事で何よりです、ムルド村の村長をしている者です。モンスターに襲われ記憶を無くされていると伺いましたが・・」
失礼と分かりながらも異世界の家を見て興味が湧いた相良は家の中を見渡していた、そんな相良に村長と呼ばれた者が話しかけてきた、見た目は40代で人の好さそうな顔つきをしていた。
「あ、すいません、相良龍治と言います、よろしくお願いします。どんなモンスターに襲われたか思い出せないんですが、シュルト姉妹が見つけてくれて助かりました・・」
それっぽい事を言ったが、村長は険しい顔になった。
「やはり思い出せませんか・・、今サラに村の皆さんが共用納屋に集まる様に呼びかけと薬草摘みに行ってる人たちを呼び戻しに行かせましたが・・これは討伐を考えなけば行けませんね・・最悪王都へ討伐依頼を出さなければ・・」
思い出せないと分かった村長はぶつぶつと何かを考えながら今の状況を話してくれた。
「討伐ですか・・王都へ討伐依頼って兵士でも呼ぶんですか?」
思いのほか大事になってしまったと、焦り始めるが国の兵士や役人が来て俺が怪しまれたりすると面倒なので気になった事を聞いた。
「いえいえ、そんな事は出来ませんよ、モンスターですから冒険者協会へ依頼を出すのですよ」
どうやら王都に冒険者協会が存在して、そこに依頼をしに行くのだとか、自分が誤魔化すために嘘を言ってしまったのでばつが悪そうにしていたら、村人が村長の家に飛び込んできた。
「村長!モンスターが出たって本当か!?もう納屋にみんな集まった!後は外に行ってる奴らが戻るだけだ!」
「あぁ、馬を用意しといてくれ、今から私が王都に向かう」
「今からじゃ王都何て間に合わないぞ!急いだって三日はかかるんだ!冒険者が向かって来るにも時間はかかるんだ一週間も持ちこたえられないぞ!」
もう呑気な事考えて居る暇は無いと判断した相良は村長に掛け合ってみる。
「村長、王都に向かうのも村に冒険者を連れてくるのも時間はかかるんだったら、村の皆さんで討伐しませんか?戦える人を集めれば何とかなるかもしれないし、俺も手伝うからさ」
何が最善かを考えて居るのだろう村長は俺を顔を見て頷いた。
「分かりました、戦える者は私を含めて数人しか居ないが、遠い王都へ依頼を出すよりは最善かもしれませんな・・王都へ報告に行っても道中は安全ではありませんから・・」
納得してくれた村長と村人に戦える人と必要な物を集めてほしいとお願いした。
「戦える人と、ロープと木材と石を用意してください戦えるように武器を作りますから」
二人は呆気に取られたような顔をした。
「あなたは・・鍛冶師か武器職人だったんですか・・?」
「んや、そんな事ないけど、ただ物作りが好きなだけだよ」
鍛冶や武器制作何てした事無いが、いい機会だしぶっつけ本番だがスキルを試す時が来たようだ。