表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家電開発部門相良  作者: ゆんべ
1章 ここから
1/9

開発部門

白く暖かい微睡みの中で誰かに呼ばれた気がした。


遠くで女の子の声が聞こえる


 それは幼い頃に近所の公園で一緒に遊んでいた女の子の声だったか、中学でプリントを一緒に運んでほしいと声をかけて来た女生徒の声か。


おぼろげな意識で’誰だろう?’と昔の記憶を探り出そうとした時、古い黒電話の’じりりりんじりりりん’と音がした。

 うるさいなぁと思いながら重い瞼を開け、枕の横に置いてあるスマホに目を向けると初期設定のアラーム音が鳴りながら起床時間をだいぶ過ぎた時間を表示していた。



「やべえ、遅刻する!」


急いでスーツに着替えながらも歯を磨き、朝食も摂らずに転がり出るようにして家を出た。





 昨日新しく入社してきた新人に言った事を思い出しながら、駅まで5分の道を全速力で走っていた。


「今日はちょっと立て込んでるから言われた仕事だけしといてよ、’明日’から教えていくからさ」


 処理しなければいけない書類に目を通しながら新人に軽い自己紹介をした。


  

「俺は相良龍治(さがらりゅうじ)今年で二一歳になるんだ。君は?」

               

「あ、今年で二十歳になります、池田友樹(いけだともき)です。よろしくお願いします。」



「まぁ、そんなに緊張しないでいいよ。まずは簡単な仕事からやらせていくからさぁ。」



 なんてちょっと大口叩いといて遅刻は不味いよな・・。


 何とか電車に間に合いはしたものの朝の出勤ラッシュの狭い電車の中をはぁはぁ言いながら息を切らしてる男は中々注目を集めるらしく

周りからの視線が痛い。


 周りに軽く頭を下げながら「すみません」と申し訳ない感を醸し出し、電車の外を流れる景色に目を移した。



 ちなみに今向かっている会社はかなり大きい会社で入社してまだ一年ちょっとしか経っていない。



 どんな会社かと言うとテレビでよく見るような通販番組をしている会社だ。



 俺はその会社で商品開発に携わる開発部門に所属している。まぁまだ開発なんてさせてもらえてないけどね。一年ちょっとの経験しかないし。


 今はまだ開発する物の草案を書面にまとめたり、開発に掛かるコストなどを書類にしたりと、開発するために必要なノウハウを学んでいる段階だ。


ただ上司からは「そろそろ書類だけじゃなくて商品の開発にも少しずつ参加してみるか」と嬉しい提案を受けた。


 さらにそれだけじゃなく「近いうちに新人も入るから、今までやってきた事を教育してほしいんだが、お前に任せるぞ」と嬉しくない命令も。


はぁ新人教育なんてまだ俺には早い気がするけど頑張るしかないか・・。





 電車には間に合ったので駅を出てからは落ち着いた足取りで出勤できそうだ。


 もう会社のビルが見えるくらいまでに来たところ後ろから「相良さん」何とも緊張気味の硬い声が聞こえた。


 振り返ると昨日入社した新人の池田だった。「おー、おはよーさん」こっちは何とも気の抜けた返事を返した。


「朝からそんな緊張してどうするんだよ」緊張をほぐしてやろうかと声をかけたが。


「何言ってるんですか、緊張しますよ開発部門って空気がピリピリしてるじゃないですか~」



 そう俺の所属する開発部門は商品を開発してヒット商品に漕ぎつける為に色んな家電をどうにか便利で安く作るかを必死になって考えている。


もちろんそれだけじゃない年代層をピンポイントで狙ったり、子供からお年寄りまでが使える幅広い年代を相手にした商品を作る事もある。


そのため開発部門は月に一度開発した試作機を大勢の上層部の前でプレゼンをしなければいけない。


そのプレゼンが超重い空気らしくプレゼンの最中は上層部の目が社員をハチの巣にするかの如く睨みつけているそうだ。


少しでも曖昧な所や不便な所、もちろん値段に関しても納得しなければ文句の荒らしだ。主に上層部の極一部らしいが。



「まぁ、世に出ていく商品だしね~、それくらいピリピリするさ。」


「先輩はどんな商品を作るんですか?」


「え?俺?俺はぁ~まだなんだよ」


ここで自信満々にあれこれ考えてるとか作ってるとか言えたらいいんだけどなー。


「まだって?」


「まだ開発させてもらえてないんだよ、でも上司も開発に参加してみるかって言ってくれたから、そろそろだと思うんだけどさ」


「お~、良かったですね!先輩!」


「おぅ、ありがとう」先輩なんて言われてちょっと気恥ずかしさを感じながらも素直に礼を言っといた。


「さて、今日も頑張るか」


会社の前に付き、今日からいつも通りの書類と格闘し池田に仕事を教えていくのか~っと少し憂鬱な気分になりながらも会社の自動ドアを潜った。






 ここの会社の出社は少し変わっていて入門カードを携帯したままゲートを潜らなければいけない。


このゲートの見た目は金属探知機ゲートに似ている。


携帯している入門カードと一緒に手の甲に触っても気づかないくらい小さなチップを埋め込んである状態で潜らなければ出社認定されない。


まぁ体のどこにチップが入っててもいいらしいが、このチップと入門カードの情報が一致しなければ通った人間に何らかの問題があると見なされて警備員と一緒に別室に強制連行だ。


ここまでのセキュリティが必要なのか判らないが何らかの不正や事件が起きてからは遅いということで納得している。


ちなみに出社から退社までこのゲートで勤怠管理されている。




 幾つか設置してあるゲートの一列に並んでいてあと数人で「やっと潜れそうだな」と小さくボヤキながら



何気なく後ろにいる後輩に目を向けると後輩の後ろに空中で黒く渦を巻くような霧のような何かが存在していた。

読みづらかったらごめんなさい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ