プロローグ:春の訪れと共に
皆さんはじめまして、自分は初めて小説を書きます!拙い文章ですが楽しんで頂ければ幸いです。
あれはまだ物心ついたばかりの頃…
「お父さん! お母さん! 僕にも妖精さん見えたよ!」
「あらまぁ本当? じゃあお赤飯炊かなきゃねぇ」
「良かったなぁ、それでこそ雨ノ森家の一員だ」
家族は皆喜んでくれた、自分も一緒になって喜んだ。でも現実はそう甘くはなかった。
「うわ気持ちわりぃ、コイツよーせいが見えるとか言ってるぜ」
「俺たちにはなーんも見えねーよ! 嘘つくなよー」
友達からは気持ち悪がられ、ほぼ絶縁状態。いつも孤立していた。
我が家は代々“見える”家系なのだ。“見える”と言っても幽霊やお化けとかいったホラーなものではなく、つまり“妖精”が見える。そう、よく絵本なんかで出てくるヤツだ。羽が生えた小人みたいなのが想像し易いかもだけど、実際見た目は様々だったりする。そんな妖精達が引き起こした問題を解決したり、はたまた世話をしたり…“見える”ことによってそれらの仕事を請け負うのが世界に数少ない「見える」人の生業になってくる。まぁ中にはサラリーマンやトラックの運転手みたいに普通の仕事をしている人もいる。
「ハンカチ持った? ティッシュは? ちゃんと顔洗った? 歯磨きはした?」
「大丈夫大丈夫、昨日のうちから用意してたし」
心配性でおっとりとした母がまだ僕のことを子供扱いしているような気がして少し苛立ちを覚える。
「なんじゃ、今日だったのか入学式は。高校では友達作るんじゃぞ」
「だから友達いるって! 何回言えば分かるんですかー?」
年寄りくさい言葉遣いをしているのは猫の姿をした妖精、ケット・シーだ。見た目は全身灰色の普通の猫だが二足歩行をして人語を話す。居候のくせに少しプライドが高く、話し始めると長い時がある。僕が産まれる前からこの家にいる。
「なんじゃその態度は? よし、儂が友達の作り方を教えてやろう。まず友達というのは…」
「あーはいはい、遅刻しちゃうんでまた今度聞かせて貰います。それじゃ、行ってきます!」
桜の花びらが散る季節、めでたく近くの高校に進学でき、今日はその入学式。自転車での通学の途中、道端の木々から「行ってらっしゃい」「頑張ってね」「もうすっかり大きくなって・・・」と木霊が声をかけてくれる。勿論他の人には聞こえない。
さて、妖精が見える僕は一体どんな高校生活を送るのかな・・・とても楽しみだ!
よろしければ推敲等よろしくお願い致します