第参話:機械と関西人
第参話「機械と関西人」
僕は轟音と共に起こされた…どうやら夜中のうちにおじさんが帰ってきたらしい。そして朝ごはんを作っているみたいだが、鍋を爆発させたようだ…
僕はゆっくりと起き上がり、キッチンへ向かった。
「どうしたの?」とおじさんに聞くと、「あぁー 起こしてごめんな。今朝飯作ろうとしたら鍋を爆発させちまって…待ってろ今朝飯にするからな」そういうとおじさんは料理を開始した。
やはり僕の予想通りだった。
僕はあくびをしながらテレビをつけた。するとまた昨日と同じニュースをやっていた。どうやら、昨日の夜も通り魔があったらしい。まったく…物騒な世の中だ…
最近は信じられない事が連発しすぎだ…桜井さんの変換能力といい、ノワール・テラっていう組織といい、この通り魔事件といい…現実離れしすぎだろ…
そんな事を考えている間に朝ごはんができたらしい。今日の朝ごはんは、目玉焼きにご飯ついでに味噌汁。普通すぎる朝ごはんだった。(この中でどの料理で爆発するのだろうか…?)
僕は別に遅れるわけでもないので、ゆっくりと朝ごはんを食べた。
その後普通に顔を洗い、普通に歯磨きして、普通に制服に着替えて…もうなにもかも普通だ…この家の中では…しかし、一歩外に踏み出せばそこは現実離れした人達がウジャウジャいる世界…
「いってきまーす…」と小声で言い、僕は家を出た。
家を出てから二、三分後あの広場に出た。昨日の事件があったあの広場だ…あそこの中が異世界だなんて…信じられない…
時間に余裕があったので少しの間広場を眺めていると、昨日と同じようにクイクイッと制服の裾を引っ張られる感触があった。振り向くとそこには桜井さんが立っていた。
「なにしてるの…」 「いや…まだ時間的に余裕あるし、景色を眺めてただけだよ。」
「そう…」 「でっ?どうしたの?」なんだかいつもよりも会話が弾む。
「通りかかっただけ…」彼女は歩き出した。僕は彼女に追いつき、昨日の傷の状態を聞いた。
「一日なんかで治らない…」と冷たい口調で言われてしまった…そりゃそうだ…
その後は二人とも無言のまま学校に到着した。
学校に着いた時時計を見ると、7時55分。学活の開始時刻が8時35分…どうやら早く到着しすぎたようだ…
僕はゆっくりと席に着いた。
教室には僕と桜井さんだけ… 教室に響く時計の秒針の音… チラッっと桜井さんの席を見ると、彼女はまた本を読んでいた。しっかしあの本はどこから調達しているのだろうか…?辞書のような太さだ…僕は暇だったので彼女に話し掛けてみた。
「あ…あのさ…その本って何処の本なの?やけにぶあついけど…」 「家から…」
えっ?っと僕は思った。そのぶあつい本があのカバンの中に…どんだけぇー…重いだろ…
「用が無いなら読みたいから…邪魔しないで…」 「あっ、うん…」僕はしかたなく席に戻った。
その後時間は過ぎ、教室はだんだんいっぱいになっていった。
そのうち、
キーンコーンカーンコーン
と同時に
ガラガラガラ
と先生登場だ… やっと朝学活だ… もう一日過ごしたぐらいの気になってしまった…
きりーつ きをつけー れー
おねがいしまーす
「えぇーとですねぇー 皆さんに、伝えることがあります。えー このクラスの小倉 沙希さんが父親の突然の転勤で引っ越してしまいました。」
えぇーーーーーーーーー!
クラスに男子の声が響いた… まったく… どうしてそんなに盛り上がれるのだろうか…?
「あとはですねぇー えーと もう1つ。最近通り魔が出没しているらしいんで、皆気をつけるように!以上!はい 号令ー」
きをつけー れー
ありがとうございましたー
さてさて… 授業か… めんどくさい…
午前中の授業… もうめんどくさいので外ばかり見ていた。でも、桜井さんは普通に受けていた。
気が付くと昼になっていた。
僕は購買に好物の焼きそばパン買いに行こうと教室を出た瞬間、人とぶつかってしまった。
その人は背が高く、体つきがいい男子生徒だった。
「おぉー すまんすまん!大丈夫かいな?」と彼は言いながら手を差し伸べた。僕が手を握った瞬間、彼は僕を片手で立たせた。
「今度から気をつけるからな。ゆるしてやー ほな、さいならー」と言い残し、彼は走り去っていった。
僕が購買に向かおうとした時だった。
カシャン
何かを蹴ってしまった。拾ってみると、ネックレスだった。きっとさっきの男子が落として行ったのだろう…大事な物かもしれないので、彼を探し始めた。彼が走って行った方面は屋上に続く階段がある方だ。屋上に行ってみると、一人で座っていた。
歩み寄って彼に事情を話すと、「おぉー!これ探してたんや!どっかで落としたかと思ってたんや!そしたらお前が持ってたんかいな!ほんまありがとな!」
彼にお礼を言われている最中僕は重要な事に気が付いた。
「あっ!購買の焼きそばパン!」と言い残し僕は購買へ向かい走り出した。購買は今居る校舎の向かいである。
やっとのことで購買に到着すると、看板が出ていて「焼きそばパン売切れ」と書かれていた。
チクショー!遅かったか!と絶望にひたっていると後ろから、
「おーい!受け取れやー!」という声が聞こえた振り向くと目の前に焼きそばパンが飛んできた。素早くキャッチして飛んできた方向を見ると、さっきの男子生徒だった。
「ワイが買った焼きそばパンが最後やったんや。さっきの借りがあるんでそいつはお前のモンや。」
なんて心の広いやさしい男子なんだろう…こんな人あったこと無いと感じ。
「あ…ありがとう!」とお礼を言った。
彼はポケットに手を入れながらこっちに歩いてきて、
「なぁ?お前名前なんていうん?ワイは金子鉄也や。」と彼は自己紹介してきたので、僕も自己紹介をした。
「ほー お前結構影薄いんやなー 一年の時気づかへんかったわ。」と言われ少しムッっとなったが、この人は信用できそうだ。
僕達は、もう一度屋上へ戻り昼食を一緒に食べた。鉄也に貰った焼きそばパンは今までで一番おいしかった。
「なぁなぁ?ワイら友達にならへんか?お前なんかおもろいし、な?」突然の友達になろう宣言だった。僕はこんな事初めてだったのでどう答えていいのかわからないので、
「あ…う…うん!いいよ」と言葉に詰まりながら答えた。
「ヨッシャ!決まりやな!ほんなら、今日時間あるか?ワイお前が好きそうなゲーセンしっとるで!」なんと嬉しいお言葉!ゲーセンはいつも一人で寂しく遊んでいたが、友達と行けるなんて!僕は迷わず「ホントに!行く行くっ!」と明るく答えた。
「よっし!ほんなら、今日の放課後学校の前集合な!」と約束をした。
昼食を食べた後の昼休み。初めての友達との昼休みである。鉄也は急に、「お前さ、ある物質を違う物質に変えられるっての信じるか?」と聞いてきた。物質を変えるのを信じるも何も、もう実際に見てるし…桜井さんとか、消えた小倉さんとか…
「僕…実はそういうのを見てしまってるんだ…」と正直に話した。鉄也は驚いた顔をして、
「ホンマかいな!お前ますますおもろいな!アハハハハ!実は、ワイもその変換能力があるんや。」僕はその言葉を聞いた時、ドキッっとした。コイツももしかして昨日の小倉さんみたいなやつなのかと思い、彼から少し離れて構えてしまった。鉄也は「お前なーに逃げてんねん?別にお前に危害を加えるつもりはないで。友達やろ?」その言葉を聞いてホッっとした。
「お前がさっき届けてくれたネックレスあるやろ?あれが能力の源なんや。」と彼は教えてくれた。
やはり大切な物だったらしい。
「この中よーーく… 見てみぃ。石みたいなの入ってるやろ?」言われてみれば確かに。石を砕いたかけらのような物が中に入っている。
「これって、賢者の石のかけら?」と僕が鉄也に聞くと、「おぉー!お前知っとるんか!お前物知りやなー!アハハハハ!で?どーこでそんな事聞いたんや?」僕は答えるのに少しためらった。
彼女の事を喋っていいのだろうか…?まぁ 気にしないだろう…と解釈し。
「僕のクラスにも変換者がいるんだ。桜井 春香さんって女子なんだけど…」と答えた。
「ほー この学校にも居るんやなー 違う学校の連中しか知らんかったわー。んで?その桜井とかいうやっちゃは、お前とどういう関係なんや?」すごく答えにくい質問である…
彼女は友達っていえば友達なのかもしれないが、本人の気持ちを僕は知らない。
「えーと…なんて言えばいいのかわからないなー」と答えると、「彼女なんか?」と聞かれたのでとっさに、「いやいやいや!そんなんじゃないって!」と否定した。鉄也は、「ふーん…」と言いながら疑いの目でこっちを見ていた。
「ほな、ワイの能力見せたるで!」と言うと鉄也はポケットからメモ用紙ぐらいの紙を取り出し、握った。鉄也の手が光出し、目を開けると鉄也の手の平には小さい近未来っぽいロボットが乗っていた。「どや?ワイの能力?ワイは紙を鉄やロボットに変換できるんや」
そいつはすごい!僕は1つ疑問に思った。「これって、大きいの作れないの?」そう、ロボットと言ってもすごい小ささである。こんなのでは戦えないと思ったのだ。
「あぁー大きいのかー 今はちょっと無理やなー このロボットの大きさは使った紙の大きさによって変わるからなー」それは残念だった。「しかも、こんな所で巨大ロボットなんて作ってみぃ。学校どころか、市全体の大問題やで…」言われてみればそうだ…
キーンコーンカーンコーン
「ヤベェ!授業開始のチャイムやんか!急ぐで!」
僕はできるだけ全力疾走した。しかしチャイムが鳴り終わる前に席に着くなど不可能だった。僕は息を切らせながら教室のドアを開けた。
教室には皆もう着席していて、先生も来ていた。僕が入った瞬間、全員の目がこっちを向いた。
すると先生が、「おいっ 翔。どーこ行ってたんだよー」と少し怒り口調で僕に話しかけた。
僕はとっさに、「いやっ そのー 時計の見えない場所にいてー…」と言い訳してしまった。
すると先生は、「ほー そうか… じゃあ廊下に立ってようかー?」と言って僕を廊下に押し出した。横を見ると鉄也も廊下に出されていた。
「お前もかいな。悪いな、ワイのせいや…」と謝ってくれたが、別に怒ってはいないので、
「いいよ別に、僕は鉄也と話せたのが嬉しくてついつい長話しちゃって、謝るのはこっちの方だよ。」と僕も謝ってしまった。
僕達は一時間ずっと廊下に立たされていた。
とうとう帰り学活になり、僕の胸は高鳴っていた。この後は鉄也と遊びに行けるという嬉しさだ。
先生の話が終わり、
きりーつ きをつけー れー
ありがとうございましたー
号令を掛けた瞬間、僕は急いでカバンを持ち教室から出て行った。
(桜井さんはこの時自分に話してくれずに帰ってしまった翔に少し怒りを覚える)
帰り道もできるだけダッシュで帰った。家のドアを開けると「ただいまー!」と言ったすぐ後に部屋へ行き、私服に着替えて財布を持ち「いってきまーす」と声をかけ、家を出た。
どうやら早く着きすぎたみたいだ。僕は携帯をいじったりして時間を潰した。
すると遠くから「おぉーいぃ!またせたなぁー!」と大きい関西弁が聞こえてきた。
僕達は合流したあと、鉄也が言っていたゲーセンへと向かった。そこには古いゲームから最新のゲームまでなんでもそろっていた。しかも学校から意外と近かった。
「どや?気に入ったか?」
「も…もっちろん!こんな場所が近くにあったなんて!知らなかったよ!」
「ハハハハハ!気に入ってもらえてよかったわ!ほな!なにやろか?」と鉄也が言うので、僕は一番好きなシューティングゲームに誘った。
鉄也は結構ゲームが上手だった。そりゃそうだろう。こんな所を知っているのだからな。
その後も二人で遊んで遊んで遊びつくした。気が付くと6時になり、中学生は立ち入り禁止になってしまった…
「あぁー!楽しかったなぁー!翔!この後もどっか行こか?」と誘われたが、この後行ける場所とはどこなのだろう?鉄也に聞いてみると、「ここだけの話ワイ実は、中学生でも6時を過ぎても遊べるゲーセン知っとるんや。」と耳元で伝えてくれた。
「なんだってぇ!」僕はオーバーリアクションをとってしまった。なんせいつも直帰していたのをもっと遊べると聞けば誰でも驚く事である。
「行く行くっ!連れてって!」もう僕は幼児のようだった…
「わかった!わかった!だから落ち着けって」まぁ自分でもそう思っていたが…
「ほな!レッツゴーや!」鉄也は歩き出した。彼が案内してくれたゲーセンは、あまり人通りの無い路地裏にあるゲーセンであった。なにか嫌な予感がしたが、ワクワクが嫌な予感を押しつぶしていた。
中に入ると、誰もいなかった。鉄也は「ここはもう全部無料でやり放題やで。店員もいないし、客もめったにこん。絶好の遊び場や!」僕は思った。さっきまで有料のゲーセンにいたのに先にこっちを紹介してくれればよかったのに…
「どうした?さえない顔して?気分でもわるいんか?」君の計画性のなさにあきれてるんだよ…
「あぁー いやぁー すごいなー ここー じゃあ遊ぼうかー?」と僕は棒読みで言った。
僕達は時間も忘れて遊んでいた。僕はフッと時計を見ると、9時30分だった…
「さすがにそろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」と鉄也に言うと彼も時計を見て、
「ホンマやわ!おっし!近道や!」と言って鉄也は僕の手を引きゲーセンを出た。
鉄也はどんどん路地裏に入っていき僕は嫌な予感がしてならなかった…
開けた場所に出た。どうやら建設途中のビルの建設現場みたいだ。人は一人もいない。
鉄也が急に「ちぃーと静かにしてな…」と言ったので、僕は息を潜めた…
すると遠くから
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!
という雄叫びが聞こえた。やはり僕の予感は的中したらしい…
カンッ カンッ カンッ カンッ カンッ
と鉄を叩くような音が何回も聞こえた。その音はだんだん近づいてきた。
カンッ カンッ カンッ カンッ カッ
最後に違う音が聞こえたと思ったら目の前にトゲトゲの鎧を着たモンスターのような物が空から降って来た。
ドスゥン!
と鈍い音をさせて地上に着地した。どうやらビルの鉄筋を上から下ってきたみたいだ。
そいつはニュースでやっていた通り魔だと僕は確信した…
鎧を着ていて、人気の無い場所に出現する…ニュースとほとんど同じである…
「出たなー 通り魔ヤロォ!ワイが貴様を倒して手柄にしてやるからな!」鉄也は戦う気らしい。
僕は桜井さんと小倉さんの戦いを目撃しているが、これはその時とは比べ物にはならないぐらい怖かった…
「翔!お前はさがっとれ!コイツはワイがコイツで倒したるで!」と言い鉄也は置いてあった設計図を手に取り、腕に巻き始めた。
巻き終わった後鉄也は
「行くでぇ!!」と叫んで突っ込んでいった…