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ウラブタイ  作者: JOKER
2/4

切り端話の巻き戻し

はい、こちらもシュートです。

「ん、ん~」


 一人の青年が背伸びをしながら声を上げる。肩より少し上まで長めの髪とコートが特徴的な、奇妙なほどに整った顔立ちの青年である。しかしながら、そんな彼に気付くものは1人として居なかった。何故なら彼がいるのは周囲を見下ろす巨大な電波塔の上、その上青年の見下ろす街にいる人間は彼とは逆方向を向いているのだから


 群衆の視線の先にあるものはたった1つ、ビルの上で延々と喚き続けている若い男の姿である


 若者の居座るビルより遥かに巨大な電波塔の上で街を見下ろす彼の耳に群衆の声は聞こえこそすれ、聞き取れはしなかった


「さて、どうしよう、これは想定外だなぁ……」


 まるで誰かに自分の存在を知らせるかのような芝居がかった口調で青年――シドは喋り始めた


「面白半分で『事故』を起こしてみたは良いけれど…………予想外の役者が入ってきたものだね」


 胸元から黒い皮の手帳を取り出しながら、誰にも聞こえることの無い一人語りを続ける


「確かに、これは新しい役者を釣る為のお遊びだったけど」


「彼は反応、言動、能力………………どれを見ても規格外。いや?これは想定外といった方が正しかったりするのかな?」


 手にした手帳にペンを走らせ、予想外の出演者―咲間逆の名を書き込む。困惑したような、しかしどこか演技くさい口調に反し、非常に愉快そうな、純粋に楽しそうな笑みを浮かべながら


「それにしても――」


 ――と、彼は筆を止める


「『偶然頼りの悪趣味な演出だね』か………」


「そりゃ自分でも不自然で悪趣味な演出なのは自覚してるけど………まさか初対面の人にそれを言われるとはね」


 そう、やや自嘲気味に言う。しかし、それでも尚、笑みを崩すことは無かった


「―――いや、違うね」


 しかし、不意に何かを思い出したように顔を上げる。移した視線のその先には、件の少年の姿が


「あぁ、そうだ」


 彼は最後に呟いた


「今はまだ会ったことにはなってないんだったかな……」




 シド  能力名――運命神ヴェルダンディ

       運命を管理する能力



ωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωωω




「き、君!そんな馬鹿な事は止めなさい!」


 今どきドラマでも見かけないようなありきたり極まる常套句を誰かが大声で口にした


「うるせぇぇ!!!そうだよ!馬鹿だよ!馬鹿じゃなきゃこんな事になってねぇ!」


 ―――成程、ありきたりもありきたり。そう簡単に退かなかったのも定番と言った所だろう



 ………『再度』、現状シチュエーションを説明しよう。現時刻は午前10時、場所は日本の某都市部、の中でも比較的に人の多い街のある一角。その一角に無数に建ち並ぶビル群の内の1つ、そこの最上階では一人の若者が飛び降り自殺を絶賛遂行中である。


 そしてそのビルを取り囲むようにしてできた人の群れが若者に対して

「そんなことは止めなさい!」

 だの

「自殺しても何も変わらないぞ!」

 とか

「お袋さんは泣いてるぞ!」

 等とお決まりの台詞をわめき散らしているわけである


「……………………………」


 「死んだってあの世は無いよー」、そんな、周囲に合わせたような台詞がフラッシュバックした。先程言ったときは驚くほどつまらないと感じたがもう一度同じことを言ったところで感想が変わるとも√が変わるとも思えない。そのままここを立ち去るのはあまり一般的な振る舞いでは無いかもしれない、そんな判断ミスの挙げ句もうしばらくこの退屈な三文芝居を眺めている事になった訳だが『この先起こること』を考えたら正直言って自分1人がここから立ち去るくらい本当に些細な事だろう


「君が死んだら悲しむ人がいるはずだ!」


 逆が考え事をしている間なおも群衆は声をあげ続けていたらしい。事態は好転する気配すら無いというのによく飽きないものである。というよりビルの屋上階にいる人間に道具も使わずに、それも大勢の人間がそれぞれ違う言葉で同時に呼び掛けた所で聞きとれているかどうかは怪しいと言わざるを得ない


 ……先程と何も変わらぬつまらない演技だ


 周りを見渡す。目には入るのは人間の群れと高層建築物、そしてその隙間からわずかに見える嫌みなまでに蒼い空。これだけである


 耳を澄ませてみる。耳には入るのは群衆の放つ雑音。これだけである


 ……先程と何も変わらぬ手抜きな舞台だ


「(無くても同じ……なはずの産廃のうりょくに珍しく救われた)」


 大きく溜め息をついた。逆の周りでは相も変わらず群衆が同じ事を同じ対象に吐き続けている


「………そろそろかな」


 逆は興味が失せた、否、興味など初めから無かったと言わんばかりに踵を返し、足早に歩き出した


「悪いね」


 彼は振り返る事も、立ち止まることもなくそっと呟く



「同じシナリオで、2回も死ぬ趣味は無いんだよ」



 ビルが崩れ落ちたのはそれから間も無くの事、飛び降り自殺の若者を止めるために集まっていた多くの人を巻き込み、多くの死者と怪我人を出す大惨事となり翌日に新聞の一面を飾ることとなった


 そしてその崩落の直前、まるでそれを予期していたかのように去っていった1人の少年、彼の事を知る者は居なかった



 咲間逆 能力名――遡行権コンティニュー

      死の瞬間に発動し、一週間まで時をやり直す

ようやく超能力の御披露目です。

何と言うか文字数が少なくて展開が早すぎますね。もっと詳細に書けるように努力すます←

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