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第07話 回想内の登校途中の記憶回想


「い、いってらっしゃいませ」


「おう、いってきます」


クゥが家に来た次の朝、学校に行く俺はクゥに送り出されていた。

今までは、誰もいない家に向かって返事の返ってこない『いってきます』を言うだけだったのだが、今は送り出してくれる人がいる。

これは、やはり嬉しいことだった。

すこし、歩いて振り返ってみるも、クゥはまだこっちに向かって手を振っている。

なんか、新婚さんみたいだ、なんて思ってないんだからねっ!

いかん、いかん、今日の俺はどうかしている。

モノローグ中でのツンデレって誰に向けてのツンだよ。

まあ、とりあえず、学校行くまでの間に昨日のクゥの自己紹介後の回想でもしておくか。



「そ、そう言えば、まだ名乗っていなかったんですね。 えっと、私の名前は、クゥリシュア=ユグドラシルっていいます。 職業は死神見習い。 年は16歳です。 気軽にクゥって読んでください。 これから、よろしくお願いします、えっと、ゆ、悠哉さん・・・」


なんか、転校生の自己紹介みたいな名乗りだったな。

だが、名前を呼ばれるのは少し嬉しい。


「クゥね、分かったそう呼ばせてもらうよ。 じゃあ、早速だがクゥ、俺はいつまで体を支えていればいいんだ?」


そう、今まで体勢を変えたような描写があったか思い出してほしい。

そう、ない!

クゥの体が消えそうになっているときも、

どうすればクゥが消えずに居られるか考えているときも、

契約している最中も、

契約後の話している間も、

ずっと、クゥの体を支えている体勢なのだ。

正直言って、腕が限界だった。


「え、えっと、すいません。 体は元に戻ったんですけど、散ってしまったエネルギーまでは戻らなかったみたいで、全く動けません」


「・・・つまり?」


「す、すいませんが、運んでください・・・」


クゥをお姫様だっこで家に運び入れ終わった俺の腕はプルプル痙攣(けいれん)していて、過去最大級の筋肉痛に襲われることが嫌でも分かった。

居間のソファにクゥを寝かせた俺は、そのソファの前にどっかりと座った。


「でだ、エネルギー切れって言うのは、どうすりゃいいんだ? いつまでも、動けないままって言うのは、流石に困る。 俺がクゥのトイレやら入浴を面倒みるって言うのは無理だぞ。 一介の男子高校生にはハードルが高すぎる」


「わ、私もそんなことまで頼みませんよ~!」


クゥは頭だけ持ち上げて動けない割に大きな声で叫ぶと、ソファに再び頭を沈ませた。

頭を持ち上げて、声を上げる程度の力も、もう残っていないようだ。


「そ、そのかわりお願いしたい事があるんです。 死神もエネルギーは人間と同じです、だから―――」


「つまり、食事をすれば動けるようになると?」


「は、はい、理解が早くて助かります」


そう言えば、クゥが家の前で倒れていて頭から飛んでしまっていたが昼飯がまだだった。

思い出すとたちまち腹が減ってくる。


「俺も昼飯がまだだったからな。 ちょうどいいから、すぐに作るよ。 嫌いなものとか食べられないものはあったら、今のうちに言ってくれよ。 あとから、これは食べれないとか言われても困るからな」


「え、えっと、嫌いなものは特にないと思います。 だから、悠哉さんにお任せします」


「へえ、嫌いなものはないのか・・・珍しい。 見た目が外国人ぽいから、『納豆が苦手』とかあるかと思ったんだが。 ま、いいや。 じゃあ、うどんでも作るから出来上がるまでそこで寝て待っててくれ」


「う、うどんですか! あの有名なじゃぱにーずうどん。 私初めて食べるんですっごい楽しみです」


じゃぱにーずうどんって・・・そもそも外国にうどんがあるのか?

クゥは、声だけで(はしゃ)いでいる。

初めてって言ったって、そんなにうどんが珍しいのだろうか。


「まあ、そんな大したものじゃないんだが。 ぱぱっと作るから、落ち着いて待ってろ」



昼食調理中



うどんも出来上がったのでお椀に盛り付け、それをさらにお盆に載せて井間に運ぶ。


「さて、時間もないので既に茹で上がったものがこちらになります」


「? う、うどんって今作ってたんじゃないんですか?」


「いや、何でもないです・・・」


「?」


駄目だ、やはり死神には3分クッキングの魔法。

『既にその工程は終わっています』が、通用しない。

日本語を話そうとも、日本の文化をすべて網羅しているわけではないのか。


「まあ、いいや。 さて、ここで俺は一つの問題に行き当った。 さて、それはなんでしょう、はい、出席番号1番のクゥリシュア=ユグドラシル君?」


「ふ、ふぇ!? え、え~っと、わかりません、先生?」


「駄目ですね。 退学です」


「い、いきなり退学にされました!?」


「とまあ、退学の件は横に置いといて」


「よ、横の置いておくってことは、いつかは、またその話題に戻るんですか!?」


「動けないクゥはどうやってこのうどんを食べのかという問題です」


「ス、スルーですか・・・まあ、いいです。 確かに、食べれませんね(期待に満ちた目)」


「俺に食べさせろと?」


「は、はい」


「・・・なんで、そんなにわくわくした顔をしてるんだ?」


「だ、だって、他の人にご飯食べさせてもらうのなんて初めての経験だから興味があったんです」


「そうか、ひょい、ふう、ぽい」


わくわく顔をしているクゥの口に少し冷ましただけで、まだちょっと熱めのうどんを入れた。


「あ、あひゅいっ!! もうひょっと、冷ましてからにしてくらさい~! なんで、そんなに投げやりなんですか~?」


「いや、投げやりなんてことはないぞ。 ただ、なんかクゥっていじってくれと言わんばかりのオーラを放出しているから」


「そ、そんな私の知らない新事実が!?」


「まあ、気にすることもないさ。 俺には実害ないし」


「わ、私の被害は完全に考慮外なんですね・・・」


俯いて、沈んでいるクゥ。

こういうのを見ているとさらに弄りたくなってしまう。

しかし、そんなことばかり続けていては俺の性格に問題が起きそうなので自重する。


「悪かったって、いじけるなよ。 ちゃんと、食べさせるから」


「べ、別にいじけてはいませんけど・・・」


そうは言いながらも、むぅ、と口をとがらせている彼女の口に今度は食べられるであろう位の温度に冷ましたうどんを近づける。


「ほら、口を開けてくれ」


「は、はい。 パクッ、モキュ、モキュ」


何回か食べさせていると慣れてきて、余裕ができたので話を再開する。


「というか、クゥって俺と同じ年だったんだな。 死神だから、年の取り方が人間と違うのかと思ってたけど、そうでもないんだな~って今さらながらに思った」


「い、いえ、モキュモキュ、違いますよ? 冥界と人間界では、モキュモキュ、流れる時間の速さは同じですから、年齢の計算方法は、モキュモキュ、一緒なんですけど、死神はある程度成長したら、モキュモキュ、そこから体の変化はなくなります。 私も、すでに体の成長は止まってるんで、モキュモキュ、100年()ってもこの姿だと思いますよ?」


「・・・まじか、凄いな死神。 不老不死ってわけか」


「え、ええと、たしかに私くらい成長した死神は不老ではありますが、不死ではありませんよ? 事故に逢ったり、誰かに命を狙われたりすれば、死神だって死にますから。 そういえば悠哉さん、うどんが伸びちゃうんで出来れば話しながらも食べさせてください」


「ああ、悪い。 でもそうか、死神って消える以外にも死ぬことってあるんだな。 でも、老衰はないのか。 そういえば、ふと思ったんだけど、不老不死って老衰では死なないけどその他の原因じゃ死ぬんじゃなかったっけ? 何があっても死なないのが不死身だったような気がするんだが」


「・・・そ、そう言われると、モキュモキュ、分からなくなりますね。 まあ、モキュモキュ、とにかく死神の体は、ある程度で、モキュ、成長が止まって、老衰で死ななくなるって事です、モキュモキュ」


「ってことは、俺が年取って死にそうになっているときも、クゥは今のままの姿ってわけか。 ・・・なんか、俺だけ()いて()けていくって言うのはなんか釈然としないんだが」


「そ、そう言われても私にはどうすることもできませんよ~」


うどんを咀嚼しながら困り顔をしている死神見習いの顔を見る。

実際問題どうなんだろうか。

クゥはきっと俺が死ぬまで人間界で生きるんだろう。

その間に今まで見たことのなかった物や知らなかった事を覚えていく。

それはつまり、多くの人間と関わっていくってことだ。

だが、俺たち人間は100年もすれば皆死んでしまう。

誰も彼もが死んでしまい、今生きている奴は誰もいなくなる。

生きているのはクゥだけ。

それは、どんな気持ちだろう。

たった一人だけ残される気持ちって言うのは。

クゥだって、まだ16歳。

そんなことになった事は今までにはないはずだ。

きっと、誰もいない家に帰る事になっていた俺の何十倍も寂しい思いをさせてしまう。

クゥには100年後だって仲間はできるだろう。

でも、そいつらも同じこと。

流れる時間の差が、関係を、絆を、破綻させてしまう。

老いることのできないこいつだけが悲しみを背負い続けなければならない。

永遠に。


「―――ん、―――さん、悠哉さん?」


「ん? ああ、どうした?」


「ど、どうしたって、それは私の台詞です。 いきなり、黙ってしまってあんな深刻な顔をしているんですから」


「ん、悪いちょっと夕飯のおかずについて考え事してた」


「そ、そうですか。 なら、良いですけど」


クゥは微妙な顔をするが、取り敢えず納得してくれた。

これでいい。

今はまだ伝えるべきときじゃないはずだ。

こんなに早くから絶望させても仕方がない。

もしかしたら、この先クゥを救える可能性もあるのだから。

今はまだクゥの目には目新しく(めあたらしく)映るこの世界を楽しませてやればいい。

俺もいつまでも辛気臭い事は考えてちゃだめだな。


「取りあえず、うどんは間食してもらったわけなんだが、少しは動けるようになったのか?」


「え、えっと、う~~~~ん(起き上がろうと力を入れている)。 ぷはー、駄目みたいです。 さっきよりは少しは体が動くようにはなってるみたいですけど、まだ消化できてないみたいなんで。 あと、30分もしたら動けるようになると思いますが」


「30分か。 微妙な時間だな・・・」


「あ、あの、30分したら私が動けるようにはなりますけど、何かするんですか?」


「えっと、クゥは、これから(ウチ)で暮らすんだよな?」


「は、はい。 帰れる場所がないので泊めていただけると嬉しいです」


「予想はしているが一応聞いておくよ。 家で暮らすための道具って持っているか?」


「え、えっと、暮らすための道具っていうのはなんですか?」


「ちょっと、聞き方が悪かったか。 つまり、服とか下着とか歯ブラシとかコップとか生活に必要そうなものは持っているのかってことさ。 パッと見で何も持っていないけど、鎌みたいに自由に出し入れが可能だって言う可能性もないとは言い切れないと思って一応聞いてみたんだが」


「そ、そういうことだったんですか。 えっと、結論から言えば持っていません・・・。 今までは、こっちの世界に来る際にもらったこの国のお金で安いホテルに泊まったりしていたんで、そこにあるものを使っていたんですけど、お金は昨日尽きてしまいました。 体の汚れや服の汚れは神術でどうとでもなるんですけど・・・。 でも、さっきまでエネルギー切れで使えませんでした」


「まあ、予想通り過ぎるな。 と言うわけで、クゥが歩けるようになったら、生活に必要な衣服とか日用雑貨を買いに行くってことで」


「で、でもさっき言った通り、私はお金持ってませんよ」


「まあ、それは俺が払うよ。 クゥは選ぶだけでいい。 とはいっても、買う物が多いからあまり高い服とかは無しで。 金の方は気にすんな、俺の親が生活費として送ってくる金は毎回多いからいつも余って、それなりに余裕があるんだよ」


クゥは渋り顔だ。


「そ、それは悪いんじゃないでしょうか・・・」


「必要経費。 必要経費。 多分うちの親も気にしないと思うしな。 どうしても、気になるんだったらバイトでもして俺の親に返してくれ」


「わ、分かりました。 ここでの生活に慣れてきたらバイト始めてみます」


・・・正直に言って、クゥにバイトができるかは大いに疑問だ。

何かを頼む時は鎌を突き付けるなんて言うことを行っている奴にバイトが出来るか不安でたまらない。

本音を言えば、大人しくしていてくださいと言いたいところだが本人がやる気なので何とも言いづらい。

しょうがない、バイトの時は俺も同じ所で働くようにしよう。


「じゃあ、30分後に出かけるって事で」


「は、はい、お願いします」


こうして、俺とクゥは買い物に行くことになったのだった。



感想で登場人物の紹介をしてほしいという意見が書かれていました。

ですので、今のところ公開できるものを公開します。


登場人物プロフィール


名前:神宮寺悠哉(じんぐうじゆうや)

種族:人間

出身地:日本

血液型:A型

髪:濃い茶色(染めていない)

瞳:黒

年齢:16歳

身長:178cm

体重:68kg

身分:学生

性格:主人公(性格ではない)

家族構成:父親、母親(両親ともに海外)

愛称:悠哉


名前:クゥリシュア=ユグドラシル

種族:死神(見習い)

出身地:冥界

血液型:不明(書類上はA型)

髪:銀髪ロング

瞳:エメラルドグリーン

年齢:16歳

身長:155cm

体重:43kg

身分:学生

性格:気弱・いじられやすい

家族構成:不明

武器:死神の大鎌

愛称:クゥ


名前:水無月陽菜(みなづきはるな)

出身地:日本

種族:人間

血液型:O型

髪:栗色ポニーテール

瞳:黒

年齢:16歳

身長:156cm

体重:44kg

身分:学生

性格:ツンデレ幼馴染

家族構成:母親(水無月香織)、父親(単身赴任中)

愛称:ヒナ


名前:清水純(しみずじゅん)

種族:人間

出身地:日本

血液型:A型

髪:色素の薄い茶色

瞳:黒

年齢:16歳

身長:171cm

体重:57kg

身分:学生

性格:物静か・親友(性格ではない)

家族構成:祖母、祖父

愛称:(じゅん)


名前:光希原統華(みつきはらとうか)

種属:人間

出身地:日本

血液型:O型

髪:肩より長い紺色の髪

瞳:紺色

年齢:27歳

身長:169cm

体重:49kg

身分:教師(数学)

性格:さばさばしている、貫禄がある

家族構成:

愛称:


名前:まだ未定(これが名前ではありません)

種属:人間

出身地:日本

血液型:A型

髪:白髪混じりの黒髪

瞳:黒

年齢:35歳

身長:193cm

体重:89kg(デブではなくほぼ筋肉)

身分:教師(世界史)

性格:口数の少ない強面

家族構成:

愛称:ビスマルク


今回、公開できるのはこれくらいですかね。

既にあと数人分は決まっているのですが、

物語がそこまで到達していないので、到達しだい

あとがきに書きたいと思います。


皆さんからの感想・評価待ってます。

評価だけでもいいんで、お願いします。


それにしても今回公開できた登場人物って、

A型とO型しかいない!

確かに血液型の割合で多いのはA型とO型だけど・・・

それにしても偏ってるな。

でも、性格的にこんな印象になってしまうんだから

しょうがないといえばしょうがないのかな。

でも、まだ公開されていない登場人物にちゃんと

B型とAB型の人がいるんで大丈夫です。

第01話で出てきた天使とか悪魔とか・・・

まあ、そっちのキャラもおいおい登場します。

最初の予定よりだいぶ登場が遅くなっていますが。

まあ、今の段階は第13話くらいまでの大体の流れが、

決まったかなというところです。

本当は、次回の第08話の内容ってって最初の予定にはなかったんですよね。


では、予告です。


「自分から言い出しておいて女の子向けの服屋に入るのってこんなにつらいのか・・・」


「こ、こんなのでどうでしょう?」


「動くな! こいつがどうなってもいいのか!」


「歯ブラシは買ったし、ほかに何がある?」


「だから、人に向かって鎌を突きつけるなって言ってるだろ――――――!!!」


『第08話 死神との買い物がこんなにデンジャラスな訳がない!』


でした。


2度目になりますが感想と評価お願いします。

あと、誤字脱字があったら教えてください。


とりあえず、今回はこのあたりで、

次回も読んでください。


追伸、今後小説活動がすべての作品で滞る可能性が高いです。

仕事の関係なのですが、

詳しくは私のマイページの活動報告を読んでください。

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