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第一話 魔王との邂逅

舞台は魔法のある近代世界をイメージしています。

独裁も立憲君主制も共和制も交じり合う過渡期。

魔法があるため、旧態依然の騎士団も一部では生き残っていますが

技術年代としては19世紀を想定しています。

ボルト・アクションライフルが欲しかっただけとも言う。


魔族は外見的特徴を別にすれば基本的には

人族に比べて圧倒的に力が強かったりとか魔力が高かったりとかはしません。

別に人族を見下したりもしませんし、乱暴者が多いとか言うわけでもないです。

(個人的にそう思っていたり、そう行動するキャラがいるかはともかく)

異世界の「人族」であるとするのが一番分かりやすいかと思います。


種族に関してですが、いわゆる「エルフ」を始めとした亜人に相当する種族の

ほとんどが魔族陣営となっております。好きな方はご注意を。

結構彼らは酷い役回りになる予定ですので…


主人公達はいわゆる最強系ではありません。敢えて言うなら…反則系でしょうか?

正直、やる事が悪人のような気がしないでもないです。

タイトルでお察し下さいという事でひとつお願いします。

女の子「えっと、その、魔王です」


俺「え?」


女の子「いや、だから、私が、魔王なんです」


俺「HAHAHAご冗談を」


女の子「ほんとなんですってば…」




OK、少し時をさかのぼって話を整理しよう。




俺たち人族の世界と魔族の世界がある日突然

3つのゲートという通路で結ばれてしまった。

お互い新世界を求めて偵察隊を出し…

彼らが戦いを始めて二つの世界は戦争を始める事になった。


それが50年前。


それについてどうこう言うつもりは無い。

魔族の姿は人族からすると伝承にあるような魔物のパーツに

人間を合成したような姿の者も居る。

そこまで嫌悪感を感じることもないんじゃないかと俺は思うが

中にはそうじゃない連中も居るらしい。


きっと偵察隊の中にそんな奴がいたのだ。


で、魔族は「魔王」と呼ばれる指導者の下にこっちと戦い続けているわけだ。


だったら伝説よろしく「英雄」に「魔王」を討伐させたらどうだ、と

考えた阿呆が居たらしい。

で、俺はうっかり「英雄」だったので「魔王」を斬って来いといわれた。



ヤるからにはまず情報収集、と「魔王」について調べてみると

どーやら「魔王」といってもいろいろいるらしく

初代が人族の前に現れてから既に38代目だという。

「魔王」がいつ頃からいる存在なのかは明確には分からないが

初代を名乗る「魔王」が現れたのが

40年前だと言うからほぼ一年に一人のペースで変わっているようだ。

前線に出てきた武闘派も居れば文官肌で一切戦場には関わらなかった者、

そもそも名前しか伝わっておらず何をしたかも分からないヤツまでいるらしい。


ぶっちゃけると「初代魔王」は名乗ったところを弓で狙撃されて

あっさりお亡くなりになったのだという。

どーやら伝説に言われるほど「魔王」というのは

むちゃくちゃ強いというわけでもないらしい。

それが俺がその阿呆な依頼を受けた理由だったりする。


報酬も良かったし。丁度食い詰めてたし。仮にも英雄なんだけどな。


実のところ、俺の育った国、ハイデルラント共和国の首相と同じで

ただの最高責任者強化系じゃねぇのか、って気がしないでもない。

だったら殺すより親書送るなりする方が建設的なんじゃないだろうか。

まぁ、それはいい。俺は別に為政者でも何でもない。

明日のご飯の為に言われた通りに仕事をするだけだ。






そういうわけで、人族勢力下にある南部島嶼部ゲートを通り

魔族の目を盗み、時には魔族に変装してなんとか中央山脈ゲートと

南部島嶼部ゲートの中間点にあるという

魔王の居城までやってきたというわけだ。


が、そこには魔王城なんていうご立派な建造物は無かった。




「ハイドリッヒ商会事務所」


看板にはそう書かれていた。城はおろか、どう見ても小さな平屋。

まさか地下に向かって延々と続いているのか。


…それにしたところで、この看板は何だ?


とりあえず裏手に回ってみると、勝手口があった。

つーか、開いてる。風でキィキィいってる。

トラップを警戒しつつ近づいてみたが、どー見ても何も無い。

魔術感知の魔法を唱えてみたが、魔法の「ま」の字すらない。



そしてどーしたもんかと考えているうちに

風で完全に開いてしまった勝手口の前で首をひねっていると…



気配も無く後ろから肩を叩かれた。


そしてぎょっとして振り返ると…



背後の誰か「あなた、人族ですよね?」


俺「お、お前は誰だ!?」





で、この話の頭に戻る。






今、目の前には女の子が居る。瞳が赤いから、コイツは魔族に違いない。

何でも偉い先生によるとこの世界の人族の目は赤くならないのだそうだ。

で、見たところ二十歳になっているかも怪しい。

華奢で小さな女の子…というには少々出るところが出すぎている気もするが

そんな事はどうでもいい、どうでもいいのだ。



俺「お前さんが、魔王?」


女の子「はいっ」



元気に答える自称「魔王」

なんだかよく知る人間と同じくらいの高さに頭があるのでつい撫でてしまう。



女の子「はぅぅ〜、な、なにをするですかぁ〜」


俺「HAHAHAHAHA、おいたがすぎるぞ〜」


女の子「だから、ホントなんですってば」


俺「うんうん、で、君の名前はなんていうの?おうちはどこ?」


女の子「ぅ〜…ゲルダ…いえ、ゲイトルード・ハイドリッヒ。第38代魔王、です」


俺「……えーと、マジで?」


女の子「本当だって言ってるじゃないですかぁ」



あたまんなか、まっしろ うん まっしろしろしろだよ うわーい












































俺「ってうわーいじゃねぇっ!」


女の子「はぅぅ!?」


俺「まぁ姿どうこうはいい!そういうのもアリだ!だがどこの世界に護衛も何もなしで

  どこの誰とも分からないしかも敵である人族にお前は誰だと聞かれて

  『はい魔王ですぅ〜』なんて言う魔王がいる!?」


女の子「こ、ここにいますぅ〜」


俺「……」



ドサクサでなんか余計なことを言ったような気がするがそんな事はどうでもいい。

誰かこの状況を何とかして下さい。


俺は助けを求めて近くの廃屋を見上げた。

うん、あの窓から狙ってるはずの誰かさんたちがいませんね。っていうか出てきたし。


ボルト・アクションライフルを手にしているのは俺の義姉、アリサ・ロザノワ。

孤児だった俺を引き取ってくれたロザノワ家の一人娘。

両親は軍人で、彼女も軍人だった。

だったというのは、俺が成人を機に家を出た時に彼女も退役してついてきたからだ。

口数少なく、無表情でぶっきらぼう。ライフルの腕は超一流なので怒らせない方がいい。

1キロ先から頭を吹き飛ばされたいのなら、止めはしないが。


ちなみにさっき丁度いい位置の頭と言ったのは彼女のことだ。

童顔で俺より頭一つも小さいせいで、いつも妹と間違われるのがご不満らしい。

一応、あれで27なんだが…立派に嫁ぎ遅れではなかろうか。


もう一人の眼鏡をかけた長身の女性は、ロザノワ家のメイド長、コノミ・テシガワラ。

直接聞いたわけではないが、名前からして北方のハルナ国の出身に違いない。


アリサのお目付け役としてついてきたのだが、魔法もかなり使えるし、

薙刀を持たせたら正直俺は負ける。ホントにこの人ただのメイドなんだろうか。


姉貴もどうやら彼女の詳細な経歴は知らないらしい。薙刀や扱う魔術の傾向を見るに、

多分ハルナ国軍の軍人だったんじゃなかろうか。それが何でメイドなのかは分からない。

三十路を過ぎているらしいが、年齢の話をしても

特に本人は気にもしていないとのことだ。



アリサ「……どうしたんだ?」


コノミ「あはは、ベン君可愛い子を引っ掛けちゃだめですよ」



あぁ、俺か?俺はベンジャミン。姓はない。それどころか、この名前も本当の両親から

もらったものじゃない。この戦争に巻き込まれて、死んだんだ。

でも特に気にしては居ない。そんな奴、このご時勢で珍しくも無いし、

その中で俺はかなり恵まれた方だったと自覚している。


アリサの両親は俺に本当によくしてくれた。だからこそ、これ以上迷惑はかけられないと

俺は思っていた。腕っ節も自信が無く、魔力も人並みで

ライフルも試してみたが、センスが無いらしい。

だったら卑怯だろうがなんだろうが、頭を使うしかないだろう?


俺は家を出て、まぁ紆余曲折はあったが二人の協力もあって

魔族の指揮官を何人も葬った。彼らに恨みは無い。お互い様だ。

俺は、自分の力で、知略で飯を食うと決めた。

その為に彼らの命を奪った。ただそれだけのことだ。

気付いたら、英雄と呼ばれていたのには困ったが…



ベン「ぁーいやそのなんだ」


女の子「はわ〜お仲間もいらっしゃったんですね〜。私、こういう者です〜」


コノミ「あらあら御丁寧に、魔界にも名刺あるんですね」



で、硬直するコノミさん。うん、気持ちは分かるよ。

俺もさっき意識がどっかに飛んで行ったし。

姉貴は名刺を覗き込んで「魔王」をいつもの無表情で見つめた。



アリサ「…ゲイトルード・ハイドリッヒ、ハイドリッヒ商会代表兼第38代魔王。

    魔王と商会代表の順序、逆じゃない?」


ベン「え、突っ込むとこそこ!?」


女の子「はわわ〜、これは大変です。ミスプリなのです。

    また皆さんに怒られてしまいます〜」



気付いてよかった〜と安堵したように胸を撫で下ろす女の子。

自称、魔王…ゲイトルード・ハイドリッヒ。


茫然自失から立ち直ったコノミさんがそっと俺に近寄って耳打ちする。



コノミ「あまりに無邪気だったのですぐには気付きませんでしたけど…

    この子、只者じゃありませんよ」


ベン「あぁ…なんか、なんとなく分かるような気がする。

   この子が魔王かはともかく、只者じゃないのは分かる」


コノミ「この子の魔力、桁違いです。私なんか足元にも及びませんよ」


女の子「はうわ〜聞こえてますよ〜」


ベン&コノミ「!」


女の子「念話でも聞こえてたと思いますけどねぇ。でも大丈夫ですよ。

    私、攻撃魔術は相性が悪いのか全く使えないし、防御魔術も苦手なんです」



背筋を凍らせる俺たちをよそに彼女は困ったような笑顔で続ける。

姉貴は…相変わらずの無表情だが、ライフルを持つ手が僅かに震えている。



女の子「運動神経も悪いですから、殺そうと思っているならどうぞ。

    抵抗するだけ無駄ですから…できればあまり痛くしないでくれると嬉しいです」



だが、俺はその時気付いた。

困ったような笑顔で話し続ける彼女の手も、僅かに震えていることに。



女の子「貴方たちが私を殺すつもりで来ているのは知っていたんです…でも…」



はっきりと、彼女は体を震わせた。目にも、怯えが見て取れた。



女の子「ちょっとだけ、私とお話を、してくれませんか…?」





ベン「なぁ」

88式「うん?どうしたんだね人族側主人公B君」

ベン「暫定設定の頃の不確定名で呼ぶな!

   っていうか俺の名前はそのBから来たんだな?そうなんだな!?」

88式「まぁ落ち着け。クールになれ。俺が悪かった」

ベン「まぁいい…ところでこういう流れ…今のコントじゃないぞ…割とテンプレじゃないのか?」

88式「そうだろうね。これで魔王が正義は幾通りも云々とか語りだしたら完璧だね。

   でもB君…じゃないベンがそういうの、分かっちゃってる奴だからそうはならない」

ベン「なるほど。別に恨みは無いとかいろいろ独白しちゃってるものな」

88式「何を隠そう実を言うと魔王が一番この中で若い。ほれ」


88式、設定txtの一部を見せる。


ベン「うぉ、19だと?外見年齢じゃないのな。俺は22か」

88式「この世界の魔族は本当に外見だけで中身はほとんど人族と変わらないんですよ。

   特に彼女は瞳が赤いという以外、何ら魔族的特長はないです。

   まぁどうしてそんな子が「魔王」になってしまったかについては追々」

ベン「魔力だけは異常にあったみたいだけどな」

88式「一応、魔王候補に挙がる子ですから。どうしてこんな家に生まれちゃったんだYO」

ベン「突っ込まないからな」

88式「おじさん寂しい…」

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