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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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あの時とこの先

「梨奈……。視えるよ、聞こえるよ」


麻由の瞳が大量の涙で揺れていた。

友梨奈の紅い瞳をまっすぐ見つめたまま、頬を流れる涙を拭おうともしない。


六歳のあの日に助けてくれたのが友梨奈だと

頭ではずっと理解していたけれど……

こうして“同じ手”を握って再会するまで、本当の意味では信じ切れていなかった

のかもしれない。


「……あの日と一緒だ。ずっと、この状態の梨奈に逢いたかったの。

あの時は、助けてくれてありがとう」


「お礼は早いよ、麻由。今は絶賛大ピンチ中なんだから」


「そうだね。なんか神様は、どうしてもわたしを殺したいみたい」


緊迫した状況だというのに、二人は手を握ったまま笑い合っていた。



友梨奈の左手には羂索。

あれこれ考えても、結局バスの速度を落とす方法が何も思いつかなかった。

とりあえず使ったことがある羂索を瞑想の間から掴んで飛び出してきたのだ。


(どこにどう巻きつける……? バスの構造なんて知らないし。

学校じゃ理科苦手だし……)


「梨奈ねーちゃん、わたしの眼を使って!」


「あかね!? こっち視えてるの?」


「うん。なんか朝から胸騒ぎがして……梨奈ねーちゃんの家に向かってたの。

今おねーちゃんの部屋に入ったから、いつでも視界リンク出来るよ」


──ちょうどその時、麻由の頭の中にもふっと“誰かの声の気配”が流れた。

車内の音ではない。ただ、握った手を通して流れたような──

(……あかね、ちゃん……?)

麻由は思わず、友梨奈の手を強く握り返した。


ーーー


「やるじゃん、あかね。……って言っても何を視て、どこに投げれば――」


キキキキキキキキ――!


カーブに入った瞬間、タイヤがさらに高い悲鳴を上げた。

もう限界だ。時間がない。


「梨奈ねーちゃん! わたし、リコおねーちゃんと暴走した車を止めようとした

ことあるよ!」


「本当に!? どうやって?」


「タイヤの根本に羂索を巻きつけて、無理やりブレーキにしたの!」


「よし、それで行こう――」


羂索を握り直した友梨奈。

麻由から離れてバスの後方に向かう。


「でも! その時は片側だけに巻いたからスピンして転倒しちゃって……

そのまま猛スピードで突っ込むよりマシ、くらいの結果だったの……」


「……そっか。バスだと、もっとバランス悪そう……」


「だから! 今回、羂索をもう一つ持ってきたよ!

両輪に同時に巻けばバランスは…… だ、大丈夫……なはず!」


友梨奈の右手に羂索がもう一本出現した。


「どっから持って来た!? ……ってツッコミは後か。

二つ同時なんて、また限界超えそうな無茶ぶりを――」


「梨奈ねーちゃんは史上最強なんだし、絶対大丈夫だよ!」


(このフェイクニュースみたいなまるで根拠のない自信は何……!

でも麻由を助けるためには――とにかくやるしかない……!)


「行くよ、あかね! バスの下側の映像、ちょうだい!」



ガガガガガッ――!


車体がガードレールをこすり、火花が散る。

悲鳴のような金属音を残しながら、バスは十数メートル進んで――

ーー止まった。



通路には、両手に羂索を握ったままペタンと座り込む友梨奈。

紅い瞳は半開きで、もう意識が落ちかけている。


座席で頭を抱えていた麻由は、止まった瞬間に友梨奈に駆け寄った。


「り、梨奈! すごいよ……! もう……!」


言いたいことがありすぎて、言葉にならない。

まずお礼を――そう思った時には、

友梨奈の意生身は消えていた。


(また……! 気持ちを伝えたい時に限っていないんだから……!)


とはいえ、今回はすぐに会いに行ける。

電話だって出来る。

たぶん今は熟睡して出てくれないだろうけど。


前回の借りを返す途中で、また借りが増えた。

全部返せる日は来るんだろうか……と不安になる。


(……でも、長くかかった方が、それだけ梨奈のそばにいる口実も続くし。

それはそれで“あり”だよね)


麻由は静かに微笑んだ。


友梨奈は人助けのたびに経験値を積み、

能力は少しずつ広がっている。

その姿をそばで見られることに、麻由は密かな喜びを感じていた。


「梨奈ねーちゃん、大変! もう時間がないの!」


突然現れてそう叫ぶあかねに対しては……

これからも友梨奈は、きっと最大限の嫌な顔を向けるのだろうけど。



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