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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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届かない想い、届いた祈り

麻由の頭の中に友梨奈の亡霊話の一シーンがよぎった。そういえばあの話の中で友梨奈は空を飛ぶ能力を発現していた。自分で自由に発現なんて出来ないとは言ってたが、まさかそれをここで使った? そんな名シーンを見れないなんて自分の凡人っぷりが歯痒い。子供の頃梨奈に助けてもらった時は彼女の意生身がハッキリ見えたのに。大人に近づいて心が汚れてしまったのか、それとも自分が命の危機に無いと見えないのだろうか。


ビルの屋上に飛び移った友梨奈。どうして急にこんなことが出来たのかゆっくり考えたいところだが、今にもビルから飛び降りようとしている人を止めるのが先だ。

そばで見ると白のワイシャツと黒のズボンという服装で、中学生ぐらいの男子に見える。まぁ相手が誰とかどういう人とか今は関係無い。

後ろから素早く駆け寄ってその男子の腕を右手で掴もうとする友梨奈。しかし掴んだ先に何も存在しないかのようにその手はスカッと綺麗に空を切った。

「やっぱり……。本人が助けを求めてないから悲念の力は働かないのね」

自分の右手を見つめる友梨奈。

その視界に入っていない左手は黄金色に輝き始めていた。



駅前のあるビルの屋上。

屋上に立っている碧が隣のビルの屋上にいる友梨奈を見下ろしている。

その背後にイケメン風の若い男が近づいてくる。

「面白くなってきましたね。まさか急にあんな覚醒をするとは。そろそろ昔の記憶を解放しても大丈夫なのでは?」

「木花家にこれだけ一時期に能力者が出てくるってことは、近い未来に末法の時代の終末が来そうなんじゃないですか」

碧は何も答えず、硬い表情でじっと眼下を見下ろしている。



消毒液のような独特の匂い。病院内の廊下はひっそりと静まり返っていた。

ちょっと前の街中と病院での喧騒が夢だったみたいだと友梨奈は思う。

廊下にあるベンチの上には友梨奈と麻由が並んで座っている。その前を不安げにうろうろしているあかね。

「あかねが心配してもしょうがないでしょ。お医者さんと本人に頑張ってもらうしかないんだから」

隣に座る麻由の向こうを見つめる友梨奈。 

「で、あなたはなんでここにいるの」

友梨奈が見ている方向を見て、不安そうに座っている位置を友梨奈の方にズラす麻由。

友梨奈の目には、麻由の隣に座っている中学生ぐらいの男子の霊が視えているが、普通の人の目にはただのベンチの空きスペースでしかない。


「まさか他人に当たるとは思ってなくて……。心配で君達についてきた。こんな形で自分の意識が残るとは思ってなかったけど」

「他人の迷惑をちゃんと考えるんだったら、そもそもあんなとこから飛び降りないし。あんたがここに居ても何の役にも立たないから自分家にでも戻ったら?」

「うちの親、子供に全く関心ないから。今さら家に帰っても何の意味もない」

「そういうあんたは自分の親に興味あったの? 自分が死んでも親が無関心だなんて、本当にそうかしら? 親に関心があっても二度と会えない子もいるんだからね」

「梨奈ねーちゃん、あんま死者に鞭打っても。可哀想だよ」


当然天眼通という能力を持つあかねは友梨奈が視えているものと同じ霊が視えていた。加えて友梨奈の意図を理解して話を合わせることにしたらしい。

小学生のくせに察しが良すぎるのはちょっと気持ちが悪い。友梨奈が能力を使いたくない気持ちももっと察してほしいのだが。

「死者なんだからいくら鞭打ってもダメージなんて無いわよ」

麻由は二人の会話を聞きながら、自分の隣の空間を不安げにみつめている。

「まぁ一応は反省してるみたいだからそろそろいいか。あなた、こっちついて来て」

友梨奈はベンチから立ち上がり、病院の廊下を歩いて行く。あかねがその後に付いて来る。

振り返ると麻由はついて来ず、ベンチに残ってホッとした表情を浮かべていた。

視えない霊について行くのは嫌だったようだ。

三人が歩いていく先に手術中の表示灯が赤く灯っている。

友梨奈とあかねはその手術室から少し離れた手前の位置で止まった。

手術室のそばにはベンチがあり、中年の女性が手を合わせて祈っているのが見える。

手術室を指差す友梨奈。

「あなたはあの中よ。重症だけど命には別状無いみたい」

次にその指でベンチに座っている女性を指差す。

「あの人、あなたのお母さんでしょ? 凄い勢いで走ってここにやって来て、手術中ずっと泣きながら祈ってるわよ」

「きっと飛び降りたショックで魂が身体から離れて生き霊みたいになってるんですよ。早く戻った方が良いと思う。魂が無いままだと本当に死んじゃうから。中に入って自分の身体に触れば戻れるよ」

あかねがあの生き霊の件に関わったのは大分小さい時だったけれど、一丁前にこういう案件の経験者らしい発言をした。

「母さん、いつも仕事が忙しい、忙しい、ってばかり言ってて。この時間も会社のはずなのに……」

生き霊の男子が目に涙を浮かべているのが視えた。こういう時の涙ってどういう理屈で再現されているのだろうか、友梨奈はぼんやり考えていた。

「あ、あとあなたが地面でぶつかったって思ってる人はちょっとかすっただけの軽傷で病院にも来てないから。あの人のお陰でね」

振り返って廊下の先を見つめる友梨奈。

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