表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。  作者: 宇宙 翔(そらかける)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/34

初恋フライト

翌朝。

生き霊の男子が残したモヤモヤのせいで、友梨奈は熟睡できず、早くに目が覚めてしまった。


身支度を整えて一階に降りると、ダイニングキッチンではすでに碧が朝食の支度をしていた。

軽快な包丁の音と、出汁の良い香りが部屋に満ちている。


「何? 今朝は妙に早いわね。朝ご飯、もうちょっとかかるわよ」

「時間無いからいい」

「まだ学校までだいぶあるでしょう?」

「そっちじゃなくて」


(どうせおばあちゃんには全部お見通しでしょ……)

案の定、碧は笑顔を向けて一言。

「そう。頑張って」

「あと、おばあちゃんじゃないから」

(心の声に突っ込むのやめて、マジ怖いから……)



通学路を小走りに向かうと、生き霊男子は約束どおりいつもの場所に立っていた。

今日も昨日と同じ服装で、汚れ一つない。不自然なくらいだ。


(霊の服ってどういう仕組みなんだろ……いや、自分の意生身の服も同じか)

「ちょっと梨奈! クライマックス近づいてるのに脱線しないで!」

(あーごめん。この後の展開思い出したら恥ずかしくて、脇道に逃げたくなったんだよね……)


「良かった、まだちゃんと居たのね」

「うん、特に変化は感じない。でも急いだほうがいいんだろ?」

「そうよ。せっかくこっちが助けてあげようとしてるんだから。昨日の続きを早く言いなさい」

「えっと……気づいたのはさ。俺、やっぱり霊なんだなって」


(ちょ、麻由、睨まないで! これわたしが時間稼ぎしたんじゃなくて、本人が言ったまんまだから!)



当時の友梨奈も、別の意味でキレかけていた。

「ま、まさか昨日から引き延ばして、その答え?」

「焦んなよ。昨日、お前のクラスの窓叩いたろ? 行きたいと思ったら高さ関係なく行けてさ。普通じゃないって気づいてショックだったけど……同時に思ったんだ。霊や魂は重力もこの世の法則も関係ないんだなって」

「……ふーん」


何が言いたいのか、いまいち掴めない。

「でさ。俺の姿を見たり、手を掴んだり、背中に触れたりできた非常識なお前なら、同じこと出来るんじゃないか? お前の従姉妹にも確認したし、きっと大丈夫だろ」


(え、従姉妹? リコちゃんと話したの!? ……ていうか、同じことってまさかわたしも霊にする気!?)



いろんな想いが頭に渦巻いた瞬間、彼は友梨奈の手を握って空中高く浮き上がった。

なぜか視界の下のほうに、腕を前に伸ばしたまま道端に立っている友梨奈自身の姿が見える。

ドローンからの空中撮影を自分の眼で覗き込んでいるような、不思議な感覚だった。


目の前には、街の全景があった。

朝露が降りた屋根瓦は、陽の光を浴びてきらめく。

木々の葉も露を抱き、風に揺れるたび光を散らしてキラキラしている。

遠くの山並みは白い靄を纏い、稜線の端から昇る太陽の赤橙が、霧をゆっくりと金色に変えていく。

すべてが眩しく、美しかった。


何この景色……綺麗。

……っていうか、もしかしてわたし死んだ?



「何それ梨奈! 空飛べるの!? もうスーパーヒーローじゃん!」

麻由が興奮して身を乗り出す。


いやいや、これは六神通の一つ、意生身を生み出しただけ。

その時の場所がエンカウントポイントだったから能力が発現しやすかったのだろう。

意生身は実体ではないから物理法則を無視できる――海の中で水の抵抗を受けなかったのと同じ理屈だ。


しかも、今回は彼に半ば強制的に発動させられた。友梨奈の能力は本来は人が生命の危機にあるときしか発動しない。

友梨奈は後日一人で何度か試したが、一度も成功していない。

ってことで、生身で自由に空を飛んでる異常な人たちとは一緒にしないで欲しい。



「だから昨日は“朝”って言ったのね。夜じゃこんな景色が楽しめないから」

田舎の夜はただただ真っ暗で、空から見ても夜景なんて望めない。


(……自分の時間が残されてないのに、これを見せるために朝まで待ってたの? バカじゃないの……)


あまりに美しい光景に涙が滲む。

けれど問題は何一つ解決していない。

現実逃避で済むことじゃないのだ。


「……思い出したこともあるんだ。小さい時、沈みかけた船でお前が突然現れて、泣きながら俺の手を引っ張って救助船まで連れて行ってくれた。その前に頭打ってて、病院送りになって……次に気づいたら、あの道端に立ってた。記憶も無いし、どうしたらいいか分からなかったけど、ようやく分かった。俺、お前に会いたくて、あそこ

に居たんだ……」


なんか顔を背けて俯き加減で話してるが、会いたかったとか言われて、妙に照れくさくてリアクションに困ってるのは友梨奈も同じだ。


麻由の「キャー!」という声で余韻も吹き飛ぶ。


「ちょっと梨奈! これって、わたしが乗ってた観光船と同じやつじゃない!? やば、超運命感じるし! 梨奈、この時めっちゃ沢山の人助けてたんじゃないの!」


そう言われても、友梨奈には記憶も実感もなく、答えようがなかった。



照れ臭さに堪えて、何とか顔を上げて彼のほうを見た友梨奈は大変なことに気付いてしまった。

霊体の色が明らかに薄くなっている!

きっと結界に当たったり、空を浮遊したりしたから、霊力が弱まって消えるのが急速に早まってしまったに違いない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ