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神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。  作者: 宇宙 翔(そらかける)


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友梨奈の想い

リコは差し出された手を掴もうとして腕を伸ばし、手と手が触れる、と思われた瞬間、その手は綺麗に空を切った。

呆然として自分の右手を見つめるリコ。


「本人が……わたしの助けを必要としていない?……、だからわたしの悲念の力じゃ救えないってことなのね……」


肩をがっくりと落としてしばらく俯いた後、友梨奈の方に振り向くリコ。


「……今日はもう帰ります。あんまり遅くなるとうちのお母さんうるさいんで。もしあかねが何か視えたらその時また来ます」

「うん……、お願いね」


いつの間にかリコの背後に、あかねが無表情で立っていた。友梨奈を見つめるその視線は、リコの落ち込みを友梨奈のせいにしているようにも見える。

(違うからね。腕は引っ張ったけど、足までは引っ張ってないから)


その場を去って行くリコとあかねの後ろ姿を見送りながら、リコには悪いが友梨奈は凄くホッとしていた。

生き霊の男の子の方に振り返って話しかける友梨奈。


「大丈夫? ……って聞き方も変か……何言ってんだろ、わたし」

「あの子達何? お前に何となく似てるけど」

「あぁ、わたしの従姉妹。おばあちゃんと一緒で神通力っていうの持ってて人助けしてるんだけど、あなたを元の身体に戻そうとしてくれたみたい」

「……それでダメだったんだな」


俯く生き霊の男の子の肩をポンポンと叩く友梨奈。

「落ち込まないで。おばあちゃんに聞いて来るって言ったでしょ。あの人凄いんだから」

叩かれた後の肩を手で押さえて友梨奈の顔をじっと見つめる生き霊の男の子。



この時は知らなかったが、リコはある日、自分が能力に関わる事故でこの世を去る運命を視てしまっていた。

だからこそ、それまでに一人でも多く救おうと必死だったのだろう。

もし自分がそんな運命を知っていたら、きっと能力は使わずにひっそりと生き延びる道を選んでいた。

まだ小四でそこまで決意できるリコは、本当に凄いと思う。



一息ついてテーブルの上のドリンクを取ってストローを使わずにゴクゴク飲んでいる友梨奈。

向かいでその友梨奈の顔をじっと見つめている麻由。

今まで本人にツッコんで聞いたことはなかった、つか正直聞きにくかったのだけれど、友梨奈が自分の能力を使いたくない本当の理由、と言うのがさっきの話の中でわかった。

友梨奈は感情表現が上手くできなくて涙も出ないのだけれど、本当は情に厚くすぐ他人に感情移入してしまう性格で、他人のピンチに何もせずにほっておくことなんて出来ない人だと短い付き合いの中でもわかって来ていた。

なのに自分の能力にはとても冷めていて、そこに凄くギャップは感じていたのだ。

『普通』でいたいから、というのは筋は通っているが、友梨奈のリアルな気持ちがこもっていないように麻由は感じていた。

今の話で友梨奈がずっと心に抱えていた葛藤が分かって本当に良かった。


(でも、あなたが子供の頃その能力を使ってくれたおかげで、今のわたしがいるんだよ)


無言で顔をずっと見つめていたせいか、友梨奈が怪訝な顔で麻由を見て、何か顔に付いてるんじゃないかと勘違いして口元を手で拭っている。



友梨奈はリコたちと別れてすぐ慌てて家に帰った。

碧に霊のことを色々教えてもらわなければ。

玄関で急いで靴を脱ぎ、ダイニングキッチンに駆け込むがそこには碧の姿が無い。


「おば、碧さんーー! どこーー、聞きたいことがあるの」

「何? 帰ってくるなり大きな声出して。瞑想の間に居るわよ」


言われて声の大きさを下げる友梨奈。


「じゃあ今からそっち行くから待ってて」


実は瞑想の間は玄関から一番離れた家の奥にあって、目的上防音っぽい作りになっているため多少の大きな声じゃ届かないし、聞こえないはずなのである。

それを玄関に一番近いダイニングキッチンのところで会話出来てるのが『普通』じゃない。

日常的に碧の能力に晒されると感覚がおかしくなっていたのだろうか。他人に話すと色々気付くことが出てくるものだ。


「ってかさ、これって梨奈も碧さんと音声以外で会話してるよね、気づいてる?」

「え? ちょっと待って、何言ってんのよ麻由」


そういえば、碧の声はなぜ友梨奈に届いているのか、逆になぜ友梨奈の声が碧に届いているのか、今まで考えたことが無かった。

これまでも瞑想の間にいる碧と会話したことは時々あったが、碧が大声を出していた記憶は無い。普通の音量で友梨奈には届いていたし、友梨奈も普通の音量で話していたように思う。


(もう、麻由のせいでどんどん『普通』から遠ざかって行くし……、あー分かってるわよ、逆恨みだってのは)


「さっきリコちゃんとあかねちゃんが来てたでしょ。三人で何企んでるの?」


あの二人は友梨奈の家のそばまで来ただけで家には寄ってないはずだ。家の外の様子まで把握しているとは碧の能力は異常だ。

これに比べれば自分がまだ『普通』に思えてしまうのは仕方がないと友梨奈は思う。


「別に何も。それよりさー、昨日聞いた霊の話で教えて欲しいことがあるの」


瞑想の間の襖を開けると、蝋燭一本の灯りで窓が無い薄暗い部屋に正座する碧の背中が見えた。

さっきまでの会話は全て部屋に着くまでに成立していたのだが、もう変なとこに全部ツッコミ&説明すると時間がいくらあっても足りないからこの後はスルーしていくことにする。

麻由なら碧の変なところは経験済みだから、その辺飛ばしてもモヤモヤはしないだろう。


「生き霊君の話ね。梨奈が心配だったから今日実物をちょっと確認しに行ったのよ」

「え? そうなんだ」

「梨奈に対して出てるものだと危ないしね。でも全然危険なものじゃ無かったわ」

「……」


友梨奈はしばらく次の言葉を待っていたが、一分以上沈黙が続いている。どうやら碧としては以上で話は終わりのつもりだったらしい。


「そうじゃなくて! 聞きたいのはその子を元の身体に戻してあげたいんだけど、どうすればいい?」


友梨奈に背を向けていた碧が素早く振り返り、目を丸くして友梨奈を見つめている。

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