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第2話 戦国時代の人材募集(永禄二年五月)

「はっ!?」


 俺は目を覚まし、体を起こした。

 手のひらに土の感触がする。

 ここはどこだろう? とあたりを見回す。


「は?」


 俺はフリーズしてしまった。


 俺が目を覚ましたのは、のどかな農村だった。

 ただし、現代日本の農村ではない。


 茅葺き屋根の家。

 農民は時代劇で見たような姿で、髪を結っている。


 どういうことだろうか?


 俺は記憶をたどる。

 俺はタイマーのファミレスバイトが終って、自転車で道路を走っていたら、車にあおられて事故になった。


 意識が薄れて……。


 そうだ!

 活躍したかったと思ったら、返事が聞こえたぞ!

 確か……望みを聞いたとか……なんとか……。


 どうも事故の後の記憶がハッキリしない。


 病院に担ぎ込まれて夢を見ているのだろうか?

 だが、土の感触や緑の匂いは本物だ。


(ひょっとしたら転生というヤツだろうか?)


 マンガやライトノベルであるヤツだ。

 バカバカしい考えかもしれないが、転生が起ったとすれば、今の状況は納得出来る。


 俺は立ち上がって体の状態や持ち物をチェックしてみた。


 体は問題ない。

 どこも痛くないし、ちゃんと動ける。


 服はファミレスを出た時のままだ。

 安物のスニーカー、防寒パンツ、黒いパーカー、MA-1ジャケット、手袋、ニット帽。


 持ち物も無事。

 スマホ、財布、キーホルダー、タオルはある。

 自転車はない。


(スマホは動くかな?)


 俺は習慣でスマホを取り出し操作した。

 電波は圏外。

 だが、電卓やメモ帳のような通信を必要としないアプリは動く。

 異世界に転生したなら当たり前だが、マンガアプリや地図アプリはダメだ。


(おっ! タイマーが動くぞ!)


 理由は分からないが、スキマバイトアプリのタイマーが動いている。

 俺はいつものようにスマホを操作して仕事探しをする。


「なんだ!? これ!?」


 思わず声が出てしまった。

 タイマーに表示されているのは、兵士募集……それも足軽募集だった。



 ■ 足軽募集 ■

 ・働きやすい職場です。

 ・経験者優遇。

 ・食事、装備支給。



(足軽って戦国時代の歩兵だよな? 働きやすい職場ってなんだよ?)


 俺は困惑しつつ他の案件を見てみる。


(調理補助とか、荷物整理とか、軽作業系の仕事はないのかな?)


 だが、足軽募集ばかりだ!


 色々案件を見ていて一つ重要なことが分かった。

 年号だ。



 ・募集期間:永禄二年五月から三ヶ月程度

 ※武田家との合戦が終ったら募集終了です。



 どうやら今は永禄二年らしい。

 色々な案件の募集開始日を見ると、どうやら今は五月らしい。


(永禄……永禄……あれ? 桶狭間の戦は、永禄三年の五月じゃないかな?)


 俺はよくプレイした戦国ゲームのイベント画面を思い出した。

 確か桶狭間の戦は、永禄三年の五月だったと思う。


(ということは、今は桶狭間の戦の一年前か!)


 俺の中で『死ぬ間際の声』と『今の状況』がピタリと重なった。

 俺は活躍を望み、神様か何かが俺を戦国時代に連れてきた。

 それも桶狭間の戦の一年前に。


 これは織田家で成り上がれということだろう!

 そうと決まれば織田家で働かなくては!


(織田家……あった!)


 タイマーの案件に織田家の仕事があった。


 足軽募集と武士募集だ。



 ■ 足軽募集【未経験歓迎・休憩なし】 ■

 ・爆速で拡大する織田弾正忠家で出世しよう!

 ・食事支給

 ・経験者優遇


 ■業務詳細■

 戦の最前線で活躍する足軽さんを募集します。

 尾張国内と三河で戦っていただきます。


 慣れるまで大変なお仕事だと思いますが、柴田勝家がサポートするので大丈夫です。



(何が大丈夫なのだろうか……?)


 俺は遠い目でタイマーを見た。


 柴田勝家って『かかれ柴田』だよね?

 突撃一番みたいな武将だよなぁ……。


 そこはかとなく漂うブラック臭……。

 休憩なしも気になる。


 織田家は大丈夫なんだろうか?


 不安に駆られながら、もう一つの募集案件『武士募集』を見てみる。



 ■ 武士募集 ■

 やりがいのある職場です。

 ・幹部候補

 ・経験者優遇

 ・有資格者歓迎

 ・未経験可


 ■業務詳細■

 織田弾正忠家を切り盛りする武士さんを募集します。

 個性的な殿の下で天下を目指してみませんか?



 俺はさらに遠い目になった。

 危険な匂いがする……『やりがいのある職場』は不味い。

 有資格者とは何だろうか? 免許皆伝か?

 それと『個性的な殿の下で……』、これは尾張の大うつけと呼ばれた織田信長のことに違いない。


 俺は『評価』ボタンをタップして、働いていた人の声をチェックしてみた。


 ・殿には、ついて行けません。

 ・織田家の将来に不安を感じます。

 ・もう、やめたい。

 ・無念だ……。



「ひどいな!」


 思わす声が出た。

 評価は五段階評価出来るのだが、織田家の平均評価は二だ。


 他の家も見てみた。



 松平家:貧乏ですがアットホームな職場です。


 武田家:高インセンティブ。稼げます!


 今川家:東海一の弓取りの下、のびのび戦をしよう!




 何だか個性が溢れてるな……。


 平均評価は――


 松平家:三

 武田家:三

 今川家:四


 ――となっている。


 いずれも織田家より評価が高い。


 だが、松平家――後の徳川家――は、苦労の連続だ。

 武田家は信玄の死後滅亡する運命にある。

 そして今川家は一年後『桶狭間の戦』で今川義元が討たれる。


(やはり織田家だろう!)


 織田家の評価は低いが、『桶狭間の戦』前であれば、信長の評価が低いのも仕方がない。

 むしろ、評価のされていない今だからこそ、潜り込みやすいということもあるだろう。


 俺は申し込みボタンを押した。

 だが、アプリ上で申し込みは出来ないらしい。


『現地へ直接行って下さい』


 とメッセージが表示された。

 この世界のタイマーは、人材募集情報を提供するアプリになっているようだ。


「よし! 行くか!」


 俺は元気よく歩き出した。


 日本ではタイマーさんだったが、新しい世界では活躍出来るかもしれない。

 目指すは戦国武将だ!

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