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第2話

 二ヶ月ほど前。

 武装親衛隊の航空科将校を養成する帝国屈指の難関校、親衛隊航空学校を好成績で卒業したエレノアは、特別攻撃隊の爆撃機長としてルーノ空軍基地に配属された。

 学校で優秀な成績を収め、将来が期待されているような親衛隊の若手少尉まで自爆攻撃部隊に配属せねばならないほどに、帝国の戦況は悪化していたのだ。

 自慢の戦車部隊はすでに残骸と化し、戦争序盤の快進撃を支えた空軍も、パイロットと機体不足で既に瓦解しつつある。

 そんな中、特別攻撃隊に配属されたエレノアは、優等生らしく、陰惨たる戦局に似合わないほどの熱意を持っていた。

 部隊長への挨拶や略式の着任式を済ませ、徽章などを受け取って、彼女は正式に特別攻撃隊へと着任する。

 その夜、彼女は空軍という組織が自分の気風と合わないことを理解した。

「まあ飲めよ」

 基地の休憩室に並べられた、酒瓶とつまみと、それを囲んだパイロットや整備士たち。

 天井の方では白熱電球の絢爛の中でうっすらと紫煙が漂い、煙草の香りが鼻を打つ。

 真面目で堅物なエレノアには、どれも初めて見る光景だ。

「基地内での飲酒、喫煙は軍規違反です」

「なーに。気にする事はないさ。ほら、まず一杯」

 エレノアの指摘をあっさりといなしたのは、壮年の空軍中尉だ。

 彼は、アルコールで赤くなった顔で、エレノアのジョッキにビールを注ぐ。

 少尉であるエレノアに、中尉からの命令を断るという選択肢はない。

「あ…ありがとうございます」

 エレノアはビールを水と同じ感覚で一気に呷った。一杯で顔が真っ赤になり、酩酊感と目眩を覚え、そのままソファーで眠りに落ちる。

 もし、その宴会に基地の医官が参加していなければ、彼女はそのまま軍病院に入院する羽目になっていただろう。

 そんなこともあって、翌日、エレノアは不機嫌だった。

 彼女は、普段から感情を押さえていることが多く、今も、表情は軍人らしさを保っていたが、それでも、理不尽に酷い目に遭ったことに対する怒りは抑え難く、基地の空軍将兵たちを、彼女から遠ざけていた。

 とはいえ、優等生であるエレノアは、どんな気分の日も仕事は完璧にこなす。

 着任に必要な手続きなどを手早く終えたエレノアが自分が機長として指揮を取る機体を見に行ったのは、彼女がルーノ空軍基地に着任してから三日後のことだった。

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