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バージョンアップのお知らせ

「つまりお前を犯し続けた神父をぶっ殺して逃げ出した先が大商人でソイツも神父と同じだったからぶっ殺して逃げて、最後はマフィアの幹部に拾われたけどソイツも同じでまたぶっ殺して逃げたと。で、全部の組織から賞金首として狙われるお尋ね者ってワケだな?」


「あぁ…すまねぇ。せっかく誘ってくれた上こんな・・・」

「あっはっはっは!」

「ガハハハハハッ!お前もかよw 賞金首じゃ無いマトモなのは俺だけかよw」

「お前だって奴隷じゃねーかよw」

「違いねぇw」


急に大笑いした2人の話を聞いて想像の遥か斜め上を行かれ愕然とした。自分より遥かに高額な賞金をつけられているにも関わらず、1番日当たりの良い真昼間のテラス、まさに公衆の面前で堂々と飯を食べるその状況に理解が追いつかないでいた。しかもその状況をアフタヌーンティーを飲みながら爆笑して楽しんでいる、もはや異常だ。


「リンダ、それなら特に問題ないけどもういいか?お前の武器とか装備を買いに行きたいんだけど」


「え、あぁ…」  ストン

2人はまるで賞金首問題を意に介さず、なんか圧倒されイスに力無く腰を落とした。そして歓迎会は滞り無く幕を閉じた。



「速っ!!」

「見えねぇ…」

トール工房に向かっている最中、リンダマンの手業の速さを見せてもらった。シャムシールナイフの捌きがヤバ過ぎてもし中学2年生が見たならばイチコロで虜にされるだろう。俺も辛うじて危なかった。



———トール工房———

「あ、ロキさんディーゼルさんこんにちは!まだ出来てないんですよ」

「いやごめんね忙しい所!今日はそっちじゃ無くて新しい仲間のコーディネートをして欲しくて」


そしていつもの計測、採寸、ヒアリングと血液検査を終えて完了。


「そしたら明後日にはさっきのメニューもロキさん達の武器も出来上がってるので」

「うん!いつも有り難う!じゃまた!」


色んな用事が順調に紹介されて行くのは非常に気持ちが良い。タスクが減る喜びは何事にも変えられない気がしてこんな日は呑みたくなる。こんな日じゃ無くても呑みたくなるんだけどね。


「よしっ!じゃあ飲みに行くか!」

「お!行くか!」

「え!? 俺まだ加入してから寝て飲んで食ってしかしてないぞ?」

「細けぇこたぁいい〜んだよ」


ディーゼルが言うと非常に説得力が有る。そう良いんだよ、楽しく行こうぜ。



———2日後トール工房にて———

カスタマイズ内容


ロキ(水平ショットガン)

左手に装填して使える鉄の粒が入った弾丸、範囲は広がる分クナイと違って有効射程は10mになってしまう。


ディーゼル(炎の剣)両手持ち

ダンジョンで獲得した複数の炎属性魔道具を剣に融合、剣が大量の炎を纏い刃が高熱を帯びる。放射状に炎を噴出可能。


リンダマン(レイピア)両手剣

刺突用の片手剣(攻撃用)

左手にはその半分の長さで十手の形をしたレイピアを装備(防御用)


リンダマン(防具)全身革装備

速さを旨とする為金属不使用だが良質な革とカーボン、防刃繊維が贅沢に使われている。全体的に髪と同じホワイトシルバーで所々に青色が差し色で入る。マントは青色。兜だけは本人希望でほぼフルフェイス型になり、唯一少しだけ金属が使用されている。デザインは騎士風で銀髪を束ねポニーテールにして兜の外に出せる。



「いいねぇー!流石トール君!いつも有難う御座います!」

「おい見ろよロキ!魔剣だぜ!」 ボゥ!

「金属なのにこの()()()は凄い…」 ピュンピュン


それぞれに感触を確かめた後トール君にお礼を述べダンジョンへ向かう。



「そう言えばリンダ水属性だったよな?」

「あぁ、だから正直戦闘には活かしにくい」


水属性は非常に有用では有るが、それは生活面に置いての話であって冒険者稼業的には『ハズレ属性』と言われている。安全な飲み水が確実に確保できる時点で相当優秀だが『攻撃』となるとまた話が違う。仮に水属性に有利な川や湖の近くで戦う機会があってもせいぜい足止めか揺動程度で『殺傷力』は皆無に近い。しかし現代科学の力を持ってすればコレもまたチートと化す。説明がややこしいのでまだ言ってないが、丁度ボアを狩れたので実演と行こう。


「殆ど見えないけど実はこの剣の先端に極細な穴が空いててそこから水を出せるんだよ」

「何故そんな仕掛けを?」


リンダもディーゼルも非常に難解な顔をしていて、剣先から水を出したから一体何だと言わんばかりの顔だ。


「切先をこのボアに突き刺してから思いっきり水を出してみろ」


そう言って血抜きの為に吊るしたボアを指差す。怪訝な表情を浮かべながらも言われた通りにリンダは剣を突き刺して水を送り込むと   ドバァン!


ボタボタボタボタッ


胴体が破裂し色んなものが勢いよく飛び出した。


「はぁ〜なるほど、発破採掘と同じ要領か。水でも出来るんだな」

「そうか…そう言う事か」

説明するまでも無くディーゼルとリンダは何かを理解した。


「後、柄の根本にダイヤルがあるだろ?2つの毒を仕込めるようになってるからダイヤルで選んでトリガーを引くと水と一緒に出せるようになっている」


今回の新メンバー加入と新ギミックでどれ程通用するか今から楽しみだ。



———グレゴール遺跡ダンジョン正面入り口———

「リンダは初めてだから取り敢えず慣れる為に1階から行こう」

「だな」

「了解だ」


結論から言うと超優秀で全く問題なかった。賞金首なだけあって戦闘面は申し分無かった。戦い方はエゲツなく目を潰してから急所を突くなど無駄の無い動きで相手を翻弄する。そして新しい武器への順応も早く、かなり使いこなしていた。

これなら40階から行けそうだと思って連れて来たがその判断は間違いでは無かった。攻撃もさることながら『避ける』のが異常に上手い。敵が右手で攻撃をして来たら避けながら刺すみたいなカウンターと言うか『()()()』が完璧だ。ディーゼルがパワー型インファイターならリンダはスピード型ミドルレンジだ。冷静さ、予測力、反射神経が素晴らしい。子供の頃から様々な組織に賞金首として狙われ続けた生活が彼をここまで鍛え上げたのだろう。



———45階とあるフロア———

敵の少ない場所で一旦休憩、昼飯の準備をする。


「前回よりかなり楽にこれたな!この魔剣のお陰だぜ!」

ディーゼルはこの剣がかなり気に入ってる様子で『魔剣』と言い張っている。魔剣にしては少々性能が低いような気もするが、それでもかなり素早いコバルトの群れなんかには絶大な威力を発揮していた。俺のショットガンも連発は出来ないが水平発射が出来るので、初手で敵の顔の高さで発射すると威力は最大限に活かさせる。しかし血液消費が1発10mlなので極力撃たないようにしている。そしてやはりリンダマンの活躍が目覚ましい。踊るようにレイピアを操り敵の視力を次々と奪っていきディーゼルと俺が仕留めると言う1つのパターンが出来上がった。


「リンダ、レイピアに慣れてるようだけど習ってたのか?」

「ああ、教会に居た頃にな。教会に所属する者は基本的に刃物禁止だから武器は男ならメイス、女ならレイピアになるんだよ。俺は顔がコレだからレイピアと踊りを習わされた」

「いや実際大したもんだよ、俺もディーゼルもタイマンなら負けると思うな。キチンとした基礎の上に経験と技量を感じる」


実際あの速さを両手で繰り出されたらクナイとかショットガンのチートを使わないとアッサリ負ける自信がある。


「いや、だったらマフィアや聖教会から逃げ隠れしないさ。アンタはアイツらが怖く無いのか?」


「怖い? まぁ一気に50人とかで来られると怖いかな。アイツら来る時は大体3〜4人だからな。お前だって3人くらいの相手なら問題ないだろ?」


「3人ならまぁ…何とか大丈夫かな」

「だろ?ならそれをアイツらが全滅する迄繰り返したら良いんだよ(笑)」  


「いや、3〜4人で通用しないとなると流石に途中で人数増やすだろ?俺も5人同時は自信が無い」


「いざと言うときには左手のこの鉄礫だ。それとまだお前に言ってなかったが俺は闇属性でこんな感じの魔法なんだよ」

説明がてら実演したのち効果や範囲を説明した。


「成る程、対人戦に置いてはかなり有用だな。それなら何人相手でも逃げ切れるからあの余裕なのか」


「そうそう、そう言う事。だからその時は『闇雲』を発動して相手が混乱してる隙に殺っちまうか逃げるかするから覚えておいてくれ」


休憩の最中、一通り説明が終わり腰を上げる。



「さてと、帰ってきた因縁の46階だディーゼル」

「あぁ、今度は蹴散らしてやる」




コボルト6匹

グラスウルフ5匹

キラーバット5匹


先ず上空のキラーバットに向けてディーゼルが炎を撒き散らす。同時にコボルトとグラスウルフに向けて鉄礫のショットガン発射。

キラーバットの薄い皮膚状の羽が熱で収縮し墜落、コボルト1匹とグラスウルフ2匹だけ視力残存、それをリンダが狙い打ちで視力を奪う。後は3人でとどめを刺して終了。


キラービーとキラーアントの混成群、その数おおよそ60匹。ディーゼルの炎で横凪にすると前列の敵の羽と触覚が失われパニック、それを3回繰り返すとオールパニック状態で後はとどめを刺して終了。


「確かにコレならボーナスステージだわ」

「あぁ、トール親方に感謝だな」

「え、俺こんなのでいいのか?」


リンダが役に立ててるかどうか不安に思い遠慮気味になってしまう程余裕だ。コレなら確かに40階以前の方が遥かに手応えがあると感じる。属性や武器の相性ってほんと大事だなと痛感した。



———50階ボス部屋前———

驚いた事に他のパーティーの順番待ちが出来ていた。どうやらこの階層がボーナスステージと言うのは大袈裟な意味では無いらしい。俺達は4組目として列に並ぶ。他のパーティーはやはり5〜6人編成ばかりで3人編成の俺達はかなり目立っていた。好奇心に駆られて前のパーティーのリーダーっぽい男が話しかけて来た。


「なぁ、アンタら3人だけでここまで来たのか?」

「あぁ、かなり苦労したよ」

「簡単に言うね(笑)名のあるチームと見受けたけど俺は田舎から出て来た世間知らずなんだ、良ければこの田舎モンにチーム名を教えてくれないか?俺は『栄光の剣』のブライトだ」


「俺はロキ。チーム名…そう言えば考えて無かったな・・・」

「3人になったのも先日だしな(笑)」

「え!? 普通1番先に考えるぞ?」

それからあーでも無いこーでも無いと3人で話し合った結果、やっと決まった頃には前のパーティーがボス部屋に入る所だった。


「今決まった!『闇の軍団』だ宜しく!」

「軍団って3人じゃねーか(笑)じゃあお先に」

気の良い男は笑顔で手を振りながらボス部屋へ入っていった。


ボス部屋の戦いは扉が完全に閉まっている訳じゃ無いので覗くことも出来る。ヤバくなったら逃げ出せるし助っ人にも入れる。ただこの階層からボスはランダムらしく覗いた所で意味がない。しかし他のパーティーの戦闘を観れるのは勉強になるので3人でギャラリー中だ。


「おい闇の軍団、観戦料取るぞ(笑)」

悪態を付けるほどの余裕を持てるだけあって流石だった。連携攻撃が流れ作業のように次々と決まる。ここを打てばこうなるから次はこうと言うのが予め決まっている。一撃一撃は正直大した威力では無いがかなりのスピードで相手の体力を削って行く感じだ。約15分程の戦いを経て栄光の剣はそのタイトル通りに栄光を掴んだ。


「お疲れ〜、おめでとう良い戦いだったよ」

「ありがとう、じゃあ今度は俺たちが見学させて貰おうかな」

「え?でも奥の扉に入ったら戻れないだろ?」

「だから入り口で見学させて貰うよ、アンタらが倒せたらその後一緒に奥の扉に行くから頼むぞ!アンタらが負けたら俺達はもう一回戦うハメになるからな(笑)」


そうして栄光の剣はまた入り口に戻り一度扉を閉めてから再び俺たちが入室すると新たなボスが魔法陣から出てくる仕組みだ。


ギャラリーに闇属性は見せたく無いな〜。まぁ敵次第だけど何が出るかな♪何が出るかな♫


煙が渦を巻き現れたのは赤いオーク。【レッドオーク】オークの亜種で炎属性を持ち通常オークの倍以上の力を持ち合わせる。出現率は極めて低くかなりレアなボス。


「おい、闇の軍団戻って来い、相手が悪すぎる!1度部屋を出てリセットした方がいい!」


「あのボスはリセット出来なくて可哀想だよな」

そう言って俺はニヤっと笑ってボスに向かい歩を進める。


「最初に目をやる、ディーゼルは弾け、リンダは足を殺せ」


軽く指示を出して戦闘開始。

初手にクナイをお見舞いして予定通りレッドオークの左目を奪う。激昂したレッドオークは力任せに巨大な戦斧をディーゼルに向かって振り下ろすがディーゼルのパリィにあっけなく弾き返され後ろへのけぞる。その瞬間を見逃さずリンダがレッドオークの右の膝裏にレイピアを差し込み内部爆破。レッドオークはたまらず地面に倒れ伏す。後は3人でトドメを刺して終了。その間僅か7秒程の出来事だった。


「な…アンタらスゲェな…」

「だろ?」


ふぅ良かった。デカブツ1匹が1番相性が良いから助かった。わらわら出てくる系だったらリセットしてたかもね。


50階層クリア

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