表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

晴れて悪党

武器を構えゆっくり歩いていくと魔族は後は下がりハイオーガが前へ出た。ハイオーガは人の背丈程もある大剣を振り被ろうとしていて魔族は同時に詠唱を始めた。ハイオーガは目一杯力を溜め打ち下ろした。それに合わせて闇雲を発動しハイオーガの剣圧のお陰で辺り一面を黒く染め上げる事が出来た。魔族もハイオーガも慌てふためいて口を押さえ吸い込まないようにしているのが暗視で見えた。先ずハイオーガの右足首を刈り立てなくする。

ズゥン! 倒れ込むハイオーガの体重を利用して首を刈り取るが流石に他のモンスターよりかなり硬い手応えがあった。魔族はしきりに何かを言っているが闇雲のサイレンス効果で掻き消されてしまっている。何か魔法を発動されると厄介なのでサッと首を刈ると地面に横たわった。しかしこの闇雲は下手な攻撃魔法より余程便利だなと改めて実感する。

黒い霧が晴れ出すと遠くにルークとマグナスの姿が見えた。2人は急いでかけやってくる。

マグナスは「信じられん…」と言った顔でハイオーガと魔族を見下ろしている。

「貴公、今のは魔族の魔法では無いのか?」

賞賛されると思いきやルークに険しい顔で質問をされてしまった。そう言えば教会とか聖騎士って何か俺の反対の属性っぽいな…あ、これやっちゃったかも。どうしよう、でも力がモノを言う世界で能力や属性をコソコソ隠しながら名を馳せるなんて絶対に出来ないと思うし、そうはしたく無い。よし、ここは堂々と行ったらぁ!

「魔族の魔法かどうかは知りませんが闇属性です」

「貴公、聖騎士の前でそれが何を意味するのか承知の上での返答か?」

「ルーク殿落ち着いてくだされ!彼の一連の行動から敵に与してないのは火を見るよりも明らか、遠い異国の地では我らが知らぬ術があっても不思議では無いではありませんか!」

「どうだか、今回の成功を足がかりに内部に食い込む為の策とも取れます」


あれ?俺なんかやらかしちゃいました?


取り敢えず残党処理も終わり結果的に見事な勝利を収め、朝日を背に帰路につく。その間ずっとルークの視線が痛かったけど…

ギルドで報酬の銀貨20枚を受け取りそそくさと帰ろうとするがやはり止められる。ドウェインには凄腕だと感心され、マグナスには多大な感謝をされ、ルークには魔族の仲間と疑いをかけられる。

めんどくせぇなコイツ。

「ルーク殿、私は闇属性がこの国に置いてどう言う意味を持つのかよくわかりませんが、かなりご迷惑な様子なので今後そちらとは2度と関わらない様にしますのでご納得頂けますか?」

「いや、異教徒は良いとしても闇属性は見過ごせない。異端審問に出て頂きたい、と言うか出させる」

おっと、穏やかで無い物言いだがマグナスが口を挟んでくれた。

「いやルーク殿今回の勝利は間違いなく彼がもたらしたもの、それは余りにも…」

「例え闇属性でも悪魔の手先で無いなら良し、後ろめたいことが無ければ異端審問に応じれるはずだが違うか?」

ほんとめんどくせぇなコイツ。

「ええ別に構いませんよ、で、どうしたらいいんですか?」

歴史的勝利とまでは行かないかもしれないがなかなかの戦果を上げれたと思っていたので宴とかで褒め称えられるのを期待していたが、まさか宴の前に裁判にかけられるとは予想外の展開だ。俺は金属製の手錠をかけられ連行される様な形で馬車に乗せられた。今回の戦の立役者が何かの容疑者として扱われていることに皆んな動揺が隠せないでいる様で馬車の中から見える冒険者達の顔は複雑な表情をしていた。その中にマリーの顔が見えたが目が合うと急いで隠れていた。

「参加してたんだ、まーそりゃそーか」

街の一大事だから今回の作戦に参加しない冒険者や傭兵は恐らく今後仕事に在り付けないだろうし街が無くなれば仕事どころでは無いからね。

馬車で送って貰う…半強制連行される事1時間で教会裁判所に到着、既に早馬で先行して伝えていたのかお笑い番組のドッキリ裁判かってくらい受け入れ態勢と裁判の準備は整っていた。俺の腕力を知らないで付けたいつでもねじ切って外せる手錠をつけたまま入廷するとえらく大勢の人が集まっていた。殲滅作戦に伴い重鎮やお偉いさんがたまたま居合わせたタイミングでの開廷だったのでギャラリーが増えたらしい。俺を見るや否やザワザワがMAXになると例のアレをカンカン!と鳴らす裁判官。

「静粛に。これより異端審問を執り行う、被告人ロキは前へ」

衛兵に棒で前へ押し出され地面から突き出た木の棒に手錠を括り付けられた。

「傭兵ロキ、此度の殲滅作戦に置いて戦闘中悪魔の技【闇属性】を使用したとあるが相違ないか?」

「間違いありません」

「では、魔族の手先と認めるのだな?」

「いえ、違います」

「先ほど自白したではないか?古文書にもあるように闇と聖は先天性のものでは無い。従属して研鑽を積まないと決して習得する事は出来ない。従って疑う余地も無く有罪だ」

思ってたより余裕が無い裁判でびっくりした。てか近代的な裁判を想像してた俺がバカだったわ、そりゃこーなるわな。

「本当に違うんだけど有罪になるんですか?街を救う為にあんなに頑張ったのに?」

「例え街を救っても罪を犯して良いことにはならない、神の前で懺悔して来なさい」

「罪?? 俺は一体何の罪でどんな刑を受けるんだ?」

「我々や善良な市民を騙し、その懐深く入り込もうと騙した罪、魔族の手先である罪、それを隠していた罪、大きい罪はこの3つだ、無論極刑に処す」

ダメだこりゃ、完全に舐められてる。これはもう敵認定でいいや。

「じゃあさ、罪をもう一個付け足しといてくれ。裁判長殺害の罪を」

バキン ビキッ! 手錠を力任せに引きちぎり俺の事を棒で押した衛兵をぶっ飛ばし、被告人の持ち物箱から俺の武器を取り出して裁判長目掛けて走り出す。急いで衛兵が飛びかかってくるがそれも力任せに払い除けアッサリと裁判長の机の前登りに見下す。

「あっ、ひっ、待っ…!」  ザクッ ゴロン…

裁判長の両脇に座ってた偉そうな2人もついでに狩っておいた。

場内は騒然となり我先にと逃げ惑う人たちでパニック状態だったがそこにマグナスとドゥエインだけが残っていた。

「こうなると流石に貴公を庇えない」

「ワシもだ、もはや力になれん。どうするつもりだ?」

この後の事は特に考えてなかったけど、よく考えれば地球より遥かに少ない人口のちょっとした組織の雑魚の集団ならどうとでもなりそうだ。まぁさっきの難癖の付け方とかどこのヤクザかと思った程だがまるで大した事なかった。俺はこう言う理不尽な連中を力で分からせてやりたいと常々思っていたので敵対する事にしたのと、実際マリーみたいに力で分からせた時の快感は何者にも得難い。ただ単に襲って強盗や陵辱と言うのは余り柄じゃ無いが、仕返しや反撃なら話は別だ。自分でもこんなにノリノリで色々ヤれてしまう自分に驚いている。

「どうするも何も普通に生活するさ。今回のこれは人の話を聞かない一方的なバカに対して暴力で対応したまでだ」

「普通にって…明日からもギルドに受注したり普通に暮らすつもりか?」

「ああ」

最悪の時は隠れ蓑で逃げれるからトコトンやってやろうと思う。コイツらも嫌いじゃ無いが街に貢献した俺の事を庇うためにもっと声を上げても良かったはずだったのにそこにはちょっと腹が立っていた。

「私はここの領主として、また男爵として上から対応を迫られる。その際貴公はどのように振る舞われるつもりか」

「お前ら次第だ、話し合いでも殺し合いでも好きな方で来るといい。ただ言っておくが今回俺は街を救ったのに一方的な疑いをかけられ殺されかけた。その理不尽から自分を守っただけの話だ」

「いや、それはそうだが…」

かなり困った様子のマグナスだが勝手に困ってろ。

俺自身が困るより余程良い、俺は何も悪い事もやましい事もしていないから絶対に堂々を貫くと決めている。絶対に曲げないと。もうあの会社で働いてた時の様な流したり譲ったり曲げたりはしてやらない。

「じゃ、そう言う事で」

その日はトール君に事の成り行きだけ報告してサッサと宿へ帰る。彼にまで迷惑が及ぶのは避けたいので今後しばらくはフクロウを使ってやり取りする事にした。しばらくと言うのは俺の名声が高まり、誰も俺に手出し出来ない様な立ち位置になるまでだ。どうせ一度は無くした命、地球の時の様にただただ死んだ様に生きるのでは無く、死ぬまでは熱く燃えて生きていたい。そんな興奮冷めやらぬ足取りで宿まで帰る途中にギルドで報酬を受け取ったマリーとバッタリ出くわした。マリーはうつむいたまま無言でお辞儀をして通り過ぎようとしていた。俺の横を通る際の女性特有の甘い香りが俺の鼻やら何やらを色々刺激してくる。相変わらずスタイルが良く本当に色が白い…ついこの前好き放題してやったあの身体を思い出し堪らなくなる。

「待て」  一瞬ビクッとしたがマリーは俺の声に従い立ち止まった。

「お前ちょっと付き合え」 そう言って強引に腰に手を回し俺の宿へ歩き出す、マリーは抵抗する事なく黙って従いされるがまま連れ込まれる。その後彼女が解放されたのは真夜中過ぎだった。


ホーホーホッホー♪ホーホーホッホー♪

「フクロウストップだ」

ん〜あぁ〜と伸びをして上半身を起こして窓を開ける。俺が起きたのを確認してフクロウはまた索敵に戻るっていった。部屋の中はオロチが常に警戒してくれているのであんな事があった日でも俺は熟睡が出来てしまうのだ。昨日の教会のパワハラ裁判をぶっ壊してストレスを溜める事なく、更に俺専用の肉便器で性欲処理も済ませているのでアラームで起こされたのに寝覚めは最高に良い。願わくば毎日こんな朝を迎えれる様に心がけたいものだ。

日課のトレーニングの後に朝食を済ましダンジョンには行かず大通りや公園をぶらぶら歩いている。多分昨日の事件の事で誰かしら来ると読んでいるのでヤル気満々で迎えうとうとしている。てな事を考えていた矢先に早速お客様が来たようだ。

「傭兵ロキか?」

屈強そうなフルプレートに身を包んだ大柄の騎士が声をかけてきた。3人の騎士を伴い威圧的な態度で俺を取り囲む。ファーストコンタクトの第一印象は最悪、何かあれば即ぶっ殺すと決めた。


「貴様を裁判長殺害の容疑で捕縛する」

こちらの返事も待たず4人同時に遠慮なく切り掛かってきた。流石にちょっと予想外で対応が遅れてしまいやむなく奥義を発動

「暗遁の術 隠れ蓑」 術の発動と同時に全員俺を見失いボーッとしてしまっている。その隙に鴉丸でお供の3人の内2人を沈黙させ隊長格の男の首元に鴉を食い込ませる。

「ついでに聖騎士殺害の容疑も足しといてくれ」

「ま、待て!分かっ…」  ブシュ!

あーあ、このバカも最初の印象が良けりゃ死なずに済んだのに。残した最後の1人は女だったので活かしておいたが、顔と身体をじっくり値踏みしたがあんまり好みでは無かったので放っておく事にした。

が、情報だけは聞いておこう。

「おい、誰の命令だ?」

「は、はい、司教様です!」

「死ぬかそれともメッセージを届けるか選べ」

「メッセージを届けさせて頂きます!」

元気があってよろしい。


「次絡んできたら殺しに行くと伝えろ。行け」

女騎士は大きく頷いてすぐさま走り出した。そしてこっそりオロチに跡をつけさせる。


________________教会本部________________

「ハァハァ!開門! ローズ戻りました!」

命からがら逃げ出せた後、すぐさま教会本部に戻り事の顛末を報告。司教は顔を歪ませ吐き捨てる。

「悪魔の手先め…断じて許さん!聖騎士団を全員招集しろ! 断罪の聖剣、並びに贖罪の杖の使用を許可する! 明日早朝にて悪魔の…」 カプッ

激昂しながら指示を出す司教の足首に真っ黒な蛇が噛み付いていた。勿論オロチだ。



「いや〜オロチとフクロウは本当便利だな、リアルタイムで話を聞けるから即断即決即行動即終了だもんな」

宿で飯を食いながらオロチを通してナイターでも観るように司教の様子を見ていた。ちょうどメシも食い終わり酒のおかわりをした所でオロチにGoサイン。おかわりが来る前に一仕事完了してしまった。代わりの酒も来たのでそのまま一仕事終えたお疲れ様の乾杯をし部屋に帰り床に付く。

ベッドの上でオロチを操作して色々調べてみるが今の所バタバタしてるだけで何も進展は無い。さっきの出来事が俺の仕業なのか偶然なのかの判断が付いていないのが悔しい所だな。なのでこの後会議が開かれるようなので俺もオロチでリモートで会議に参加する事にした。


「諸君、この由々しき事態は教会の威厳に関わる事だ。かの悪魔の傭兵ロキを何としても首吊り台に上げねばならぬ!」

会議はかなりの熱量を持って始まった。

「コイツは司教の上司にあたる大司教っぽいな」

酒を飲みながら1人1人をチェックと同時にフォトに撮っておく。大司教は熱弁を振るい皆に事の重大さをこんこんとしつこく語っている。と言うかさっきから俺の事を【悪魔の傭兵】と言っているけど、これは大司教様から直々に二つ名を授かったって事でいいんでしょうか?! てかいいよね!? まぁちょっと直球な二つ名だけど悪く無い。


熱弁を振るう大司教の分厚いローブからそっとオロチを忍ばせ、やがてその首元に巻き付かせた。

「ひぃぃっ!」

「全員動くな」

オロチを通して語りかけるリモート会議の始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ