表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/42

35話 四賢者の力

 リアラの力があれば、ドルガの屋敷に入ることができた……彼の懐に潜り込むことができた時点で終わりだ。


 毒を盛ればいい。

 あるいは不慮の事故を作り出せばいい。

 ドルガがいかに強者であろうと、敵と認識していない相手からの攻撃を防ぐことはできないだろう。


 それでも。


 リアラは、そういう手を取ることはない。


 毒殺?

 事故死?

 なんてつまらない。

 なんてくだらない。


 簡単に死なせるわけにはいかない。

 私が全てを奪われて絶望をしたように。

 ドルガの全てを奪い、絶望の底に叩き落してから殺すのだ。


 故に、リアラは、まずは力でドルガを叩き伏せることにした。


「私、この時を待っていたんだよ? ずっと、ずっと、ずっと、ずぅぅぅっと……あはっ♪ やっと殺せる。やっと殺せる。あぁ、もう。すごく嬉しくて、どうにかなっちゃいそう」


 リアラは漆黒の剣をドルガに向けた。

 そして、片手をくいくいとやり挑発する。


「さあ、やろう? 無惨に、無様に、残酷に殺してあげる♪」

「魔女めぇっ!!!」


 ドルガは力強く床を蹴り、リアラに向けて突撃した。

 怒りの咆哮を発しているものの、しかし、芯は冷静なまま。


 歩法や視線でフェイントを織り交ぜつつ、リアラに接近。

 丸太のような腕を叩きつける。


 それは、拳でありながら鉄を砕くことができる一撃だ。

 正義を示し、悪を断罪する。


「んっ」


 リアラは漆黒の剣でドルガの拳を受け止めて……

 しかし、全ての力を受け流すことができず、吹き飛ばされてしまう。


 宙で体勢を整えて。

 重力が横になったかのように、壁に足から着地した。


 リアラにダメージはない。

 ただ、手が多少痺れたらしく、不思議そうに自分の手を見る。


 それから、笑み。


「やるね」

「私の拳は正義を執行するためにある。悪である魔女が逃れられると思わないことですね」

「正義、ね……なら、その正義の力をもっと見せて? あなたが正しいって、あの行いが……ママを殺したことに問題はないって、示してみせて。ほら、ほら。ほらほらほらほらほら……私に教えてみせてよぉっ!!!」


 正義、正義、正義。

 正しい行い、悪を断罪、平和のために。


 平和国の者は、どいつもこいつもそんなことばかり口にする。


 反吐が出る。

 怒りを通り越して嫌悪感が湧いてきた。

 誰もが嫌う虫を見た時のような、そんな感情。


 リアラは笑い、そして怒り……

 今度は攻勢に出た。


 リアラは重力を無視して壁を走る。


 魔力による身体能力強化。

 それと、魔力操作により自身にかかる重力を変えてみせるという、誰も成し遂げたことのない偉業を見せていた。


「なっ……!?」


 まったく予想していなかったリアラの行動に、ドルガの反応が遅れる。


 その隙にリアラはさらに距離を詰めた。

 剣の間合いを獲得するが……

 漆黒の剣を振ることなく、さらに加速。


 剣で斬るのではなくて、そのまま殴りつけた。


「これで、おあいこ」


 リアラはニヤリと笑う。

 ただ、すぐに顔をしかめた。


「でも……痛いね。あなたの体、鉄でできているの?」

「私の体は神に祝福されています。あなたのような悪しき力が届くことはありません」

「へぇ、そうなんだ」

「……なぜ、笑うのですか?」


 攻撃が通じないと知り、それでもリアラは笑みを崩していない。

 より一層、楽しそうにしていた。


「私は、あなたをただ殺したいだけじゃないの。あなたが信じる正義を砕いて、神様の祝福を踏み潰して……拠り所をするものとを全部、ぜーーーんぶ壊してから、それから殺したいんだよ。だって、そうでしょ? そこまでしてあげないと不公平だもん。私は、あれだけ酷いことをされたんだ……そしてママは、もっともっと苦しんだ。簡単になんて殺してやらない、とことん、徹底的に、ギリギリのところまで追い詰めて、どうか殺してください、って泣いて懇願するまでいじめてあげる♪」

「愚かな……貴様は力を手にしていたとしても、そこに大義はない。復讐などと筋違いの恨みに囚われた愚者に、私を倒すことなどはできません」

「なら、試してみよう? ほらほら、まだまだいくよ!」


 リアラは床を蹴り……

 しかし、その目的はドルガではなくて、彼に付き従う兵士だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 復讐とは 相手をひたすら苦しめて恐怖と絶望のどん底に叩き落として頼むから殺してくれと懇願させる。それから殺す その復讐法賛成!早くザマァ見せて!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ