22話 真の狙い
リアラは、冒険者登録は確実に成功するという自信があった。
ただ、うまく冒険者になれたとしても、最低ランクからのスタートだ。
権限は低く、上位の依頼を請けることができない。
情報の閲覧も制限されている。
それでは冒険者になる意味がない。
また、コツコツとランクを上げるヒマもない。
ならば、上位ランクのパーティーに参加すればいい。
そのために、目立つことを承知の上で、試験官を圧倒してみせたのだ。
結果、銀翼の希望というAランクパーティーがリアラの撒いた餌に食いついた。
「えっと……突然だね」
すぐに了承したら、それはそれで怪しまれてしまうかもしれない。
そう考えたリアラは、あくまでも自然体を装い、困惑した顔を作る。
「私、まだ登録に成功したわけじゃないんだけど」
「大丈夫! アリアちゃんなら絶対に合格するわ」
「ま、あれだけの力があれば、不合格にする意味はねえな」
「私達は面談は見ていませんけど……アリアさん、面談はどんな感じだったんですか?」
「可もなく不可もなし、っていう感じだったかな、と」
「なら平気よ。心配しないで」
「そう言ってもらえると、ちょっと安心できるかも」
その時、ギルドの受付嬢がリアラのところへやってきた。
「おまたせしました」
「はい」
「審議の結果、アリアさんの冒険者登録は問題ないという結果になりまして……おめでとうございます。今日から、アリアさんは冒険者です」
「ありがとう」
「こちら、冒険者の証明証です。それと、アリアさんは最低ランクからスタートとなり……」
その後、5分ほど受付嬢による説明が行われた。
事前の調査ですでに知っていることではあったが、フィルローネ達の手前、リアラは真面目に話を聞くフリをいた。
「……以上がだいたいの説明となりますが、疑問点などはありますか?」
「えっと……ひとまず大丈夫」
「わかりました。なにかありましたら、お気軽にお尋ねください。では、よき冒険者ライフを」
受付嬢はにっこりと笑い、カウンターに戻った。
フィルローネもにっこりと笑う。
「ね?」
「預言者みたいだね」
「なら、予言するわ。アリアちゃんは、必ず、私達『銀翼の希望』に加入する、ってね♪」
――――――――――
Aランクパーティー『銀翼の希望』が冒険者登録したばかりの十二歳の少女を勧誘。
騒ぎになることは一目瞭然なので、一同は場所を変えて話をすることにした。
フィルローネ達が泊まる宿に場所を移す。
「改めて……アリアちゃん! 私達、銀翼の希望に加入してくれないかしら!?」
「えっと……近い近い、顔が近いよ」
ぐいっと詰め寄られて、ついつい本気で拒絶してしまうリアラだった。
基本的に、リアラは人間が嫌いだ。
そして恐れている。
必要以上に距離を詰められることは本能的に避けていた。
「あら、ごめんなさい。でも、アリアちゃんに、ぜひ、参加してほしくて。言っておくけど、お姉さん、本気よ?」
「まあ、フィルローネの言うことはともかく、俺も、アリアが参加してくれたら嬉しいぜ」
「試験官を倒したから?」
「ああ。お前のその力、頼りにさせてほしいところだ」
「私も嬉しいかな、って思います。二人とは違って、近い歳の子がいると、色々と楽しくなりそうなので」
「ちょっと。それ、私がおばさんっていう意味?」
「……ノーコメントです」
「察しろよ。十六歳からしたら、二十六歳はおばさんだぜ」
「うるさいわね」
「がはっ」
フィルローネの鉄拳でマイトが沈む。
それをまるで気にした様子もなく、フィルローネはじっとリアラを見た。
「それで……どうかしら?」
「えっと……まずは、仮加入っていうことでもいいかな? わかっているのは、私の力だけ。相性とか色々とあると思うし、しばらく一緒に活動してみて、うまくいくようなら正式に、っていうことで」
「ええ、もちろん。二人もそれでいいわね?」
「あいよ」
「はい」
こうして、リアラの『銀翼の希望』の仮加入が決定した。
――――――――――
「と、いうわけで……今後の方針を決めたいと思うわ。アリアちゃんも加入したことだし」
「仮だよ」
「……仮加入したことだから、次はどうする? どんな依頼を請ける?」
「ってか、もうちょい俺等のことを説明しておかないとダメだろ。連携はおいおいとして、役割分担はしっかりしねえとな」
「マイトに言われると腹が立つわね」
「なんでだよ!?」
「えっと……アリアさんは、どのようなことが得意なんですか?」
リーナに問いかけられて、リアラは素直に答えることにした。
「なんでも」
「え?」
「わりと、なんでもいけるよ。攻撃、防御、回復、補助……どれもそれなりにできると思う」
元聖女。
現魔女。
一通りのことはこなせる自信がリアラにはあった。
ただ……
「強いて挙げるのなら、攻撃が得意かな、って」
回復が得意。
もしかしたら元聖女?
魔女だ!
という展開はさすがに避けておきたいので、無難に攻撃能力に自信があることにしておいた。
実際、自信はある。
グリムに一通りのことは教わったため、そこらの冒険者よりも上という自信はあった。
「んー……なら、適当な依頼を請けて、アリアちゃんの詳細な力を確認してみましょうか」
フィルローネは、にっこりと笑い、そう言うのだった。




