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20話 次の目標は?

「んー……!」


 カーテンの隙間から差し込む朝日でリアラは目を覚ました。

 体を起こして、ぐぐっと伸びをする。


 すると、絶妙なタイミングで扉がノックされて、メイド長のフレイが姿を見せた。


「おはようございます、アリア様」

「うん、おはよう」


 にっこりと笑うリアラは、アリアと呼ばれていた。

 どこで話を聞かれるかわからないため、必要時でない限りは偽名で呼ぶように、と『人形』達に命令していた。


 もちろん、くすんだ灰色に戻していた。

 毎回染め直すのは面倒なので、魔法で切り替えるようにしている。


「お食事の用意ができています」

「ありがとう」

「お着替えは……」

「それくらいは自分でやるよ。フレイは自分の仕事に戻っていいよ」

「はい。では、失礼いたします」


 フレイは丁寧にお辞儀をして部屋を出た。


 リアラはベッドから降りて服を着替える。

 グリムからもらった、冒険者らしく見える服装だ。


 その後、食堂に移動した。


「おはよう」

「あら、おはよう」


 アスラノトの妻と娘達が揃っていた。

 そして、アスラノト本人もいる。


「おはよう、アスラノト」

「……おはようございます」

「うーん、ちょっと反応が鈍いな? 完全に魂を掌握したはずなんだけど……ま、そのうち馴染むかな」


 ダメなら思考能力を破棄させて、完全な人形にしてしまえばいい。

 物騒なことを考えつつ、リアラは食事を済ませた。


 再び部屋に戻り、今後のことを考える。


「ひとまず、拠点は手に入れた。少数だけど駒も。でも、まだ全然足りない」


 リアラは王都にいた頃の記憶を掘り返した。


 2年、そのほとんどを地下牢で過ごしていたが、稀に外に連れ出されることがあった。

 もちろん、リアラのことを考えられたわけではない。

 街中を引きずり回されて、民に石を投げられたり罵声を浴びせられたり……

 要するに、民の間に溜まるストレス発散だ。

 リアラは、その体を的にされて、フラストレーションの解消に利用されていた。


 その際に街を見て、城を見る機会があった。


 敵の侵入を拒む絶対防御の城壁。

 侵入者を排除するための砲台。

 そして、数えきれないほどの騎士達。


 魔女に堕ちたことで、魔王に匹敵するほどの魔力を得て。

 最強の暗殺者であるグリムから戦闘技術をたたきこまれて。

 そんなリアラなら、防壁を突破して、騎士達を皆殺しにすることは可能だ。


 しかし、その先にいる英雄王まで相手にするとなると厳しい。


 悔しいけれど、英雄王オーレンの実力は本物だ。

 時代が時代なら勇者に選ばれていただろう。


 彼と戦う時は、万全の体勢で挑みたい。

 城を突破するために消耗していたら、敗北はほぼほぼ確定だ。


「城を攻めるのなら……やっぱり、こちらも軍が必要だよね」


 アスラノト・ゴールドウィンの全てを奪い、家を手に入れた。

 が、王都を攻めるとなると、まだまだ戦力が足りていない。


「なら次は……」


 この街を落とす。




――――――――――




 アリアの姿になったリアラは、外に出て、冒険者ギルドへ向かう。


 軽鎧と腰に下げた剣。

 それと、フード付きのマント。

 外見が幼いことを除けば、リアラは冒険者として見られるだろう。


 しかし、実際は冒険者登録をしていない。

 詳しく調査をされると面倒だ。


 それに、冒険者登録をすることで、ギルドの恩恵を受けることができる。

 依頼の斡旋などに興味はないが、ギルドを経由して降りてくる情報は欲しい。

 冒険者に限り、金を払うことで情報を得ることができるのだ。


 今後の活動を考えて、リアラは正式に冒険者登録することを決めた。


「失礼します」


 冒険者ギルドに入ると、賑やかな声が聞こえてきた。


 真正面に受付嬢が待機するカウンター。


 そして、左手に簡単なカフェスペース。

 ギルドは冒険者同士の交流、情報交換の場としても機能しているため、大抵、このようなスペースが用意されている。


 カフェスペースにいる冒険者達は、リアラを見て……しかし、すぐに興味をなくした様子で話に戻る。


 子供が依頼に来ることは多い。

 また、それほどの頻度ではないけれど、冒険者登録したいという者もいる。

 今更の話なので、興味を持つ者なんていない。


「こんにちは」

「ようこそ、土の都の冒険者ギルドへ。本日は、どのような用件でしょうか?」

「冒険者登録をしたいんですけど」

「かしこまりました、登録ですね?」


 受付嬢はさらりとリアラの申し出を受け入れた。


 基本、ギルドは来る者拒まず、の体勢だ。

 子供であろうと、冒険者になりたいというのなら、きちんと話は聞く。


 もっとも、テストはしっかりと行うため、誰でも登録できるわけではないが。


「では、まずはこちらの用紙に必要事項を記入してください。その後、簡単な面談。それと、実技試験を行わせていただきます。そちらに合格すれば、冒険者登録をさせていただきます」

「わかりました」


 リアラはさらさらとペンを動かして必要事項を記入した。

 事前にフレイなどに調査をさせていたため、迷うことはない。


 続く面談も問題なく済ませた。

 元聖女として、色々な人物と顔を合わせてきた。

 優等生を装うのは簡単だ。


「では、最後に実技試験となりますね。ギルドの裏手にある訓練場へどうぞ」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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