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12話 都合のいい展開

 『土の都』は遥か先。

 順調に旅が進んだとしても、一ヶ月はかかるだろう。


 馬車に乗れればいいのだけど、もしかしたら手配書が出回っているかもしれない。

 今現在、世間のリアラに対する反応がわからないため、なるべく目立つ行動は避けておきたいところだ。


「うん?」


 街道を歩いていると、先に馬車が見えた。

 武装した集団に囲まれている。

 盗賊に襲われているのだろう。


 護衛らしき兵士が応戦しているものの、多勢に無勢。

 一人、また一人と倒れていく。


 それを見たリアラは……


「ちょうどいいね」


 まず最初に、盗賊達に見つからないように木陰へ隠れた。

 そのまま様子を見る。


「盗賊達は……そこそこやるのかな? 兵士達は苦戦しているね」


 そこそこやると評価したが、リアラの相手ではない。

 今のリアラなら、文字通り一瞬で戦いを終わらせることができるだろう。


 しかし、参戦するつもりは欠片もない。


 盗賊を恐れているわけではない。

 別の目的があるからだ。


「兵士達もがんばるね」


 ここで命を落とすわけにはいかないと、必死の反撃を見せていた。

 いくらかの盗賊が倒れて、双方に被害が出る。


「でも、もう限界かな?」


 兵士達は健闘していたが、限界はある。

 数の差が大きな問題となって、どんどん追い詰められていた。


 それでも兵士達は逃げることはしない。

 必死の形相で戦い続ける。

 おそらく、馬車の中にいる人物をどうしても守りたいのだろう。


「ふぁ……ただ待っているのもヒマだよね。さっさと死んでくれないかな?」


 昔のリアラなら絶対にこぼさないような暴言を口にしつつ、なおも様子を見た。


 ややあって、兵士が最後の一人になり……

 その一人も数に押し切られてしまい、すぐに殺されてしまう。


「ごくろうさま」


 リアラがこっそりと盗み見する中、盗賊達は馬車を強引に開けて、中から見目麗しい令嬢を二人、連れ出した。

 どちらも貴族なのだろう。

 高貴な者だけが持つ気品と美を備えている。


 そんな二人を見て、リアラは表情を強張らせた。


「もしかして、そのままここで襲うパターン?」


 だとしたら困る。

 ものすごく困る。


 ……面倒だ。


 盗賊達は、性欲を発散することなく、そのままアジトに引き上げてほしい。

 ここで二人を襲うとなると、さらに待たないといけない。

 面倒すぎる。


 ……リアラの心配の方向は明後日の方向にズレていて。

 それと同時に、慈悲や慈愛というものからは遠くかけ離れたものになっていた。


 そのまま観察を続けると、リーダー格らしき盗賊が仲間に指示を出していた。

 令嬢二人を拉致して。

 馬車の荷物を奪い。

 ついでに、馬も連れて行く。


 アジトに撤退するようだ。

 獲物を手に入れたことで油断はせず、すぐにアジトへ撤退する。

 なかなかに訓練されているな、とリアラは妙な感心をした。


 それと、笑顔になる。


「ようやく、私の目的が果たせるね」




――――――――――




 後をつけて、盗賊達のアジトが街道を大きく外れた先にある、廃村であるということを突き止めた。


 連中は、戦利品であり二人の令嬢を小屋に入れる。

 牢になっているのだろう。


 奪い取った荷物は別の小屋へ。

 馬は厩舎に連れて行く。


 さらにそのまま観察を続けていると、盗賊達は肉と酒を持ち出して宴会を始めた。

 仕事がうまくいったことを喜んでいるのだろう。

 離れたところから見ているが、肉も酒も上質なものということは判断できた。


「これ、思っていた以上に期待できるかな?」


 リアラはニヤリと笑う。


 次いで、魔法を発動させた。


「その目で見ろ。その肌で感じろ。我が敵はどこだ? 不忠者を探し出して、その身を捧げてみせろ……死神ノ瞳<ファントムアイズ>」


 リアラが発動させた魔法は、周囲の生命反応を探知するというものだ。

 人間に限らず、動物、虫、ありとあらゆる生命体を見つけることができる。

 対象までの距離も把握することが可能だ。


「うん、よかった。もしかしたら討伐隊がすでに編成されていて、盗賊達は泳がされているだけ、っていう可能性もあったけど、それはないみたい」


 盗賊と人質を除いて、周囲三キロに人間の反応はない。

 泳がされているという可能性は、まずないと考えて問題ないだろう。


 よかった。

 これで……

 心置きなく殺すことができる。


「我は願う。血を喰らいたい、魂が欲しい。そのために必要なものは、無慈悲な断罪の刃。故に顕現せよ……魂喰ラウ刃<ソウルイーター>」


 リアラはニヤリと笑い、黒の剣を右手に顕現させた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
再び新作を書いてみました。
【氷の妖精と呼ばれて恐れられている女騎士が、俺にだけタメ口を使う件について】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 今も彼女だと令嬢2人もあっさり一刀両断しそうだが、土の都への上手い潜入偽装用にでも使う積りかな。
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