侵略者たち
【崩レタ平和】
「帰ってきた、僕らの故郷に」
レイの言葉に、アンとドゥは頷く。三人は、都市の中心にあるシンボルタワーに向かう。女神こと霊界ウルトラの母アナスタシアに会うためである。
「いつ見ても綺麗だ、この塔は」
三人は、シンボルタワーに入り、中間の高さに位置するマザールームに到着する。そこは、傷ついた戦士を癒す場所で、アナスタシアが率先して行っている。
「アナスタシア様、ただ今戻りました」
「レイ、アン、ドゥ、お帰りなさい。疲れたでしょう。私が癒してあげましょう」
「いえ、それほど疲れていないのでお構いなく。私たちは長い間シン・ガイアにいたので、少し故郷を懐かしむため、見て回りたいと思います」
「そうですか。そういえば、都市の見回りを六使徒も行っています」
「六使徒というと、王直属の戦士シックスヘイブンですね。あの方たちは個人でもかなりの実力があります。何故集まっているのでしょう?」
「それは、直接ミズーリオに聞いてあげてください」
「ミズーリオ様もいらっしゃるのですか?」
「ええ。ちょうど今、このタワーの最上階にいると思います」
三人は、タワー最上階に向かう。そこには、霊界ウルトラにシンボルであり、エネルギーである人工太陽の光が保管されていた。一日に一回、ウルトラの王ゼウスと側近ミズーリオはここへ来るのだった。
「温かな光だ」
「そうですね」
「行こう。おや、君らは?」
三人は、振り返ったゼウスと会う。
「レイです。あとチームメイトのアン、ドゥです」
「おお!セブンの息子の!確かシン・ガイアにいたはずだが帰ってきたのだな」
「はい。それより王の方こそ戻られていたのですね」
「息子のグッドとラックのお陰でな」
ミズーリオが付け加えて言う。
「あとハデス様もです」
「そうだったな。ところで、ここへ何の用だ?」
「ミズーリオ様に用があるのです。アナスタシア様にここにいると聞きました」
「妻か。では、私は先に行っているぞ、ミズーリオ」
「はい。行かれた。それで私に何の用だ?」
「現在、六使徒が集まっていることについてお聞きしたいのです」
「その事か。話せば長くなる―」
ミズーリオは、三人に説明した。(『グッドとラックの夢旅行』)
「そんな事が・・・。では、今この星には、オリュンポス十二神、それから祖ガイア様がおられ、六使徒は挨拶に来ているのですね?」
「そういうことだ。ガイア様は霊界ウルトラの戦士がシン・ガイアを見守る今、真の平和な状態と仰られた。それもすべて義兄ハデス様の御力があっての事だ」
「全宇宙人を滅ぼしてしまうほどの暗黒物質を操る力ですね」
「ああ。かつて魔王と名乗っていた私なんか紙切れのようなものだ。真の魔王ハデス様に比べれば。そろそろ王の元に戻らねば」
「途中までお供いたします」
その頃、六使徒はオリュンポス十二神と別れの挨拶をしていた。
「もう行くのか?」
「はい。我々は王直属の戦士として宇宙の平和を守らなければなりません」
そこへ、ゼウスがやって来る。
「間に合った」
「息が切れているぞ」
「私も年だ」
六使徒が敬礼する。
「「行って参ります」」
「気を付けたまえ。この宇宙には乱暴な怪獣、それから悪事を企む宇宙人がいる」
「宇宙人はハデス様が滅ぼしてしまいましたが」
「そうだったな。もうこの世には極悪な宇宙人たちはいない。残るは、我らが生んでしまった怪獣のみ」
「残らず殲滅します!」
「頼んだぞ!」
「うぅ・・・」
ハデスが頭を押さえ、ふらつく。
「どうした、ハデス」
「分からぬ・・・突然めまいに襲われた」
「日頃の疲れが出たのだろう。マザールームで癒されるといい。私から妻に頼む」
「ああ。助かる」
六使徒が心配して見ている。
「すまない。仕切り直して頼んだぞ」
「「行って参ります」」
六使徒が出発し、ハデスとゼウスがマザールームに歩いた時、ハデスが倒れる。
「ハデス?大丈夫か」
「うう・・・何かが中から暴れ出す・・・まさか、奴らが・・・く、防ぎきれぬ」
次の瞬間、霊界ウルトラに一本の漆黒の柱が立ち昇る。漆黒の柱の近くから順に倒れていった建物が吸い込まれていく。
「ハデス!!しっかりしたまえ!」
「ウゥ・・・逃ゲロ・・・」
ハデスの目の色が変わる。異変に気付き、戻ってきた六使徒は倒れたゼウスを目撃する。
「ゼウス様!!」
「アルフレオ!後ろ!!」
振り向く間も無く、アルフレオが吹き飛ばされる。
「何をなさっているのですか、ハデス様!」
「明らかに様子がおかしい。ハデス様ではない何かが中にいる!」
「来るぞ!」
応戦したタイフーン、クェークも虚しくも力が及ばず、ハデスの強烈な回し蹴りによって倒れる。
「兄さん!行くぞ!」
「ラック!連携だ!」
グッドとラックが同時に放った光線は、ハデスが放った二匹の黒龍が囲んだ空間に吸い込まれる。その隙に、近距離に来たハデスの猛攻を受ける。
「く・・・」
「強い・・・」
倒れた2人を見てシードが叫ぶ。
「よくも、よくも!!」
駆け出したシードをハデスは迎え撃つ。シードが倒れ、ハデスは辺りを見回す。
「フハハハハ!コノ力ハ無敵ダ。暗黒物質、コノ力ハ無限大ダ!フハハハハ!」
王の元へ戻るため外へ出たミズーリオとレイたちは、漆黒の柱に気づく。
「あれは、一体?」
「急ぎましょう!」
漆黒の柱は周りのものを吸い込み、大きくなっていた。柱の外側は、ハデスからあふれた濃度の薄い暗黒物質のもやで、入ることができた。その中心部にハデスがいた。
「ハデス様!これは一体?」
ハデスはミズーリオを見た後、喉元を掴んだまま濃度の濃い柱の方に近づけた。
「我ラノ力ノ一部トナルノダ!」
「・・・その口調、メフィラスか?」
一瞬、ハデスが驚きの表情になる。
「サラバダ」
ハデスは柱に強く押し当て、ミズーリオは柱の中に吸い込まれていった。レイが叫ぶ。
「ミズーリオ様!」
「フハハハハ!我ラハ油断シテイタ。シカシ、我ラヲ滅ボスコトナド不可能ナノダ」
「お前たちは何者だ?」
「我ラハ宇宙ノ侵略者デアリ、ソノ意思ハ固イ。同ジ意思ヲ持ツ我ラガ集マリ、一ツノ集合体トシテ生マレ変ワッタ。ソノ名ハ“カオスインベイダー”」
「ハデス様の力を利用する為に集まったのか?」
「チガウ。ハデスノ力ノセイデ我ラハ集マッタ。ハデスガ自ラ招イタ結果ダ。フハハハハ!」
「そんな・・・」
「我ラハ侵略ヲスル。ソノ為ニ、コノ力ヲ利用サセテモラウ!」
「そうはさせない!」
「邪魔ヲスルナ!」
レイが地面に吹き飛ぶ。ハデスは柱の頂上に来る。
「マズハ我ラノ敵、ウルトラノ星ヲ暗黒ニ染メルトシヨウ」
ハデスが両手で四角い囲いを作る。その前方で、二匹の黒龍が四角い囲いを作る。ハデスが目を強く開き、暗黒物質を放つ。それは黒龍の囲いを通り抜け、より強い力になって霊界ウルトラを覆う。次の瞬間、そこには何もなくなる。
「フハハハハ!忌マワシイウルトラ戦士ガイナクナッタ!次ハ、ウルトラ戦士ガ大切ニシテイタ星、シン・ガイアヲ暗黒ニ染メルトシヨウ」
ハデスは時空の歪みでシン・ガイアに移動する。ハデスは、両手で四角い囲いを作る。その前方で、二匹の黒龍が四角い囲いを作る。ハデスが目を強く開き、暗黒物質を放つ。それは黒龍の囲いを通り抜け、より強い力になってシン・ガイアを覆う。次の瞬間、そこには何もなくなる。
【目覚メタ力】
「フハハハハ!」
笑い声を聞いて、ミズーリオは目を覚ました。そこは、寝室だった。
「何だ、夢か」
ミズーリオがリビングへ行くと、アナスタシアが朝食を作っていた。
「起きたのね。これ作ったから食べて」
「ありがとう。姉さん」
ミズーリオは席につき、食べ始める。
「美味しいよ」
「良かったわ。ヒートとフリーズにもお礼を言ってね」
「ああ。ありがとう」
アナスタシアの周りを飛んでいる、炎と氷を纏う妖精が喜ぶ。アナスタシアが触れると、妖精は炎と氷になり、消える。ミズーリオは不思議そうに見つめる。それは、ミズーリオの一つの疑問がそうさせていた。アナスタシアだけが持っていて、ミズーリオにはない力の事だった。それは、物に名前を付けることで命を与える力だった。
(どうして自分には力がないのだろうか)
この思いが、ミズーリオの心に常にあった。
「それにしても、姉さん、いつまで僕の家にいるのだ?」
「ゼウスさんが謝るまで帰らないわ」
「いつまで喧嘩しているのだ」
「仕方ないのよ。あの人、私の前でフリーズをかわいいと言ったのだから」
「ああ、そうなのだ」
その後、ミズーリオは、ゼウスがいるコロシアムに向かった。
「おはようございます、ゼウス様」
「おはよう、ミズーリオ。ところで、妻の機嫌はどうだ?」
「怒ってます。早く謝ってください」
「分かった。今日謝ろう」
その後、シンボルタワーに行ったとき、ゼウスはアナスタシアに謝った。
「悪かった。この通り」
「今日の夕食はいつも通りでいいわね?」
「戻って来てくれるのか?」
「仕方ないわね」
「ありがとう」
ゼウスは嬉しそうに最上階に向かった。
「嬉しそうですね」
「ああ。早く仕事を終わらせて家を掃除しなくては」
「汚れているのですね・・・」
シンボルタワー最上階にある人工太陽の光。かつてミズーリオが得ようとした力。結果として生まれた暗黒物質。それが宿った剣を追ってゼウスは長い間行方をくらましていた。ミズーリオはこの光を見るたびに、後悔の気持ちを抱いた。同時に、憧れの気持ちもあった。決して触れてはいけないと分かっていても、光が持つ無限大の力には魅力があった。
「温かな光だ」
「そうですね」
ミズーリオはふと思った。
(夢と同じ展開になっているのだ)
「行こう。おや、君らは?」
ミズーリオとゼウスの前に三人の戦士がいた。
「レイです。あとチームメイトのアン、ドゥです」
「おお!セブンの息子の!確かシン・ガイアにいたはずだが帰ってきたのだな」
「はい。それより王の方こそ戻られていたのですね」
「息子のグッドとラックのお陰でな」
ミズーリオが付け加えて言う。
「あとハデス様もです」
(ハデス様・・・そうだ、このままでは夢と同じ結果なのだ)
その時、ミズーリオの脳裏に声が聞こえた。
「聞こえますか」
「誰なのだ?」
「ガイアです」
「ガイア様!?どうなさいましたか?」
「あなたは夢をみたはずです」
「どうして知っているのですか?」
「私も見たからです」
「そうでしたか。しかし、私が見た事をどうして知っているのですか?」
「それは、あなたが私と同じ力を持っているからです」
「私がガイア様と同じ力を・・・?」
「そうです。アナスタシアはゼウスと同じ聖物質を操る力を受け継ぎました。そして、ミズーリオ、あなたは私と同じ中間の力を受け継ぎました」
「中間の力・・・?」
「この力は、とても貴重な力です」
「どうしてですか?」
「中庸、即ち中間こそが生きる者のあるべき道とされています。しかし、多くの場合どちらかの方に偏ってしまいます。従って、聖物質を操る力と暗黒物質を操る力の中間の力こそ貴重なのです。聖物質は無重力、暗黒物質は重力とした時、二つをつなぐ中間に何があると思いますか?」
「ええと・・・難しいですね」
「正解は、空気です。空気は生きる者に必要不可欠です。聖物質が現実を創造するもの、暗黒物質が現実を破壊するものであるので、二つをつなぐ中間には当たり前ですが現実があります。即ち、中間の力は現実を維持する力なのです」
「維持する力・・・」
「現実は維持しようとしなくても維持されるので、中間の力を使うことはあまりありません」
「あまり、ということはあるのですね?」
「そうです。今のように、維持したい現実が破壊されようとしている時です。この時、中間の力を持つ者は、夢を見ます。実際、それは夢ではなく、繰り返されている現実です。従って、夢は正夢でもあり、予知夢でもあります」
「つまり、中間の力は現実を繰り返せる力なのですね!」
「そうです。最後に、ハデスの力は今の私では抑えられません。あなたとアナスタシアに託しました。きっと成し遂げられます」
脳裏の声が消えた時、ミズーリオたちは漆黒の柱に向かっていた。ミズーリオはレイたちに言った。
「悪いけど、シンボルタワーにいる姉に話さなくてはいけないのだ」
「分かりました。先に行ってます」
レイたちと別れ、ミズーリオはマザールームに向かった。
【断タレタ関係】
「それは本当!?」
驚くアナスタシアに、ミズーリオは続けて言った。
「ガイア様は、僕と姉さんに託したと仰られた。僕にはハデス様と戦える力は持っていない。姉さんの力を使ってほしいのだ」
「分かったわ。やってみる」
アナスタシアは、目を閉じ、唱える。
「聖なる力を秘めし者たちよ 今こそその力を我らの前に示したまえ!」
次の瞬間、シンボルタワーを貫く一筋の光が伸びる。シンボルタワーを中心に光は広がり、霊界ウルトラ中の炎と氷が妖精に変わり、シンボルタワー上空に集まっていく。炎と氷の妖精は集合して、巨大な炎と氷の化身に姿を変える。炎と氷の化身は、手を掲げ、互いに炎と氷の気を放った。その頃、ハデスは太くなった漆黒の柱上空から暗黒物質で霊界ウルトラを覆った。
「上手くいって・・・」
炎と氷の気は巨大な蜃気楼を作り出し、ハデスは、霊界ウルトラが消滅したと思い込んだ。アナスタシアの祈りが届いたのか、霊界ウルトラは暗黒物質の影響を受けずに済んだ。
「良かった。一か八かだったもの」
「さすが、姉さんなのだ」
「まだ安心するのは早いわ」
「どうして?」
「だって、ハデスは倒れたわけではないのよ?」
「そうだった・・・夢には続きがあって、霊界ウルトラが消滅した後、シン・ガイアが消滅していたのだ」
「それは大変!急がなきゃいけないわ」
「ハデス様は暗黒物質で時空の歪みを作り出し、瞬間移動することができる。もう間に合わない!」
「落ち着いて。何か良い手があるはずよ」
「姉さんが聖なる力を持っているように、僕が暗黒の力を持っていれば・・・」
悔やむミズーリオに、アナスタシアは閃き、言う。
「ミズーリオは中間の力があるのよね?」
「そうなのだ」
「それなら、聖なる力を引いたら、暗黒の力にならないかしら」
「あ!姉さん、頼むのだ」
アナスタシアは頷き、ミズーリオに触れる。
「聖なる力を抜いたわ。今なら暗黒の力を使えるはずよ」
「ありがとう、姉さん」
ミズーリオは、目を閉じ、唱える。
「暗黒の力を秘めし時空の歪みよ 今こそその力を我らの前に示したまえ!」
次の瞬間、出現した時空の歪みに、ミズーリオは驚いた。
「本当に出たのだ・・・」
「驚く暇はないわ」
「そうなのだ」
二人は、時空の歪みに入った。その頃、ハデスは、シン・ガイアに向けて暗黒物質を放つ寸前だった。時空の歪みから現れたミズーリオは、ハデスの横腹を蹴った。
「何ヲスルノダ!」
「やっぱり間違いない。あなたはメフィラス!」
「チガウ!カオスインベイダーダ!」
ハデスは、ミズーリオを掴み、近距離から暗黒物質を浴びせた。
「ドウダ!我ラノ力ハ!フハハハハ!」
「がは・・・だが、効かない。何故なら、僕も暗黒の力を使えるからだ!」
ミズーリオは、笑みを浮かべる。
「何ヲ・・・ナラバコレデドウダ!」
ハデスはミズーリオを掴んだまま、シン・ガイアに勢いよく落下した。激しく砂漠の砂が巻き上がった。
「運ガ良カッタノダ。我ラモドコニ落チルカ不明ダッタノダ」
離れたミズーリオの方に、ハデスはゆっくりと歩み寄った。
「サア、楽シモウジャナイカ。楽シム気ガナイナラ今ノウチナノダ」
「・・・メフィラス師匠」
ミズーリオは、一つの出来事を思い出していた。霊界ウルトラが霊界ガイアだった頃、ミズーリオはガイアの長ゼウスの代理アナスタシアの側近だった。
「姉さん、今日も平和だね」
「ミズーリオ、仕事中はアナスタシア様と呼んでほしいわ」
「厳しいなあ」
「仕方ないでしょ。私がゼウス様の代理を務めるのも、あなたの弱さが招いたことなのよ」
「反省しています・・・」
その時、霊界ガイア中に警告音が響き渡った。
「侵入者あり、侵入者あり」
「私はガイアの戦士に指示する。ミズーリオは状況を確認して」
「わかりました」
ミズーリオは信号の発信された場所に連絡を取った。
「聞こえるか。聞こえたら返事をせよ」
「・・・私ハ、メフィラス。侵入者ダ」
「何!?お前が侵入者なのか!」
「私ニ攻撃ノ意思ハナイ。私ハ伝エニ来タノダ」
「何を伝えに来た?」
「コノ星ヲ狙ウ者ガイル」
「何故伝えに来た?」
「私ハコノ星ヲ守リタイノダ」
その後、メフィラスはガイアの戦士に抵抗することなく捕まった。アナスタシアはメフィラスに尋ねた。
「あなたは、ガイアを狙う者から守るおつもりでしたか?」
「ソノ通リナノダ」
「そうですか。では、その時に私たちと共に戦って頂けますか?」
「勿論ナノダ」
その後、メフィラスは解放され、特別顧問として案内された。
「アナスタシア様、良かったのですか?」
「ミズーリオ、もし本当の事だったら、一大事になっていたわ。それに、あの宇宙人は本心のようだったわ」
その後、メフィラスは、ミズーリオに指摘した。
「私ガ侵入シテカラ捕マルマデ時間ガカカリスギナノダ。ヤハリ報告デハナク侵入シテミテ正解ダッタノダ」
「まさか試すために侵入したのか?」
「攻メル側ハ手加減シナイ。守ル側モ手加減シテハイケナイノダ」
その後、メフィラスの適確な指摘で、ガイアの戦士は鍛えられた。そして、その時が来た。
「侵入者あり、侵入者あり」
「来たわね。ガイアの戦士、第一部隊突撃」
「オソラク、敵ハ背後カラモクル」
「すごい・・・敵の軍勢があっという間に減っていく」
数時間後、霊界ガイアに被害もなく、侵入者を撃退できた。アナスタシアがガイアの戦士に労いの言葉をかけた。メフィラスはミズーリオに声をかけた。
「デハ、私ハコレデ」
「ちょっと待て。何も言わずに行くのか」
「私ハ侵入者デアリ、コノ星ノ者デハナイノダ」
「僕は間違っていた。宇宙人にも良い者はいた。メフィラス師匠と呼んでいいか?」
「好キニスルノダ。デハ、サラバダ」
ミズーリオは、ハデスを見て言った。
「・・・怪我が少ない砂漠にずらしたり、逃げるように言ったりする宇宙人は、メフィラス師匠しか知らないのだ!」
ミズーリオは立ち上がり、ハデスに向かった。ハデスが瞬間移動してミズーリオを蹴った。
「ぐは!」
「逃ゲレバ良カッタノダ!」
「げほ!」
「コノママデハ、死ヌノダ!」
「・・・敵は背後から来るのだ」
ハデスが驚いた。ミズーリオに掴まれて動けないハデスに向かって四本の光線が放たれた。
「レイ、連絡、感謝する」
「セブン、僕は気絶していて連絡したのはアンとドゥだ」
「そうか。二人とも、感謝する」
アンとドゥは頷いた。四本の光線は、二匹の黒龍が作り出した時空の歪みに吸い込まれた。
「戦エルノハ我ラダケデハナイ!」
「やはりか。だが、こちらもあと二人いる」
高速移動するラウス、腕を剣にしたアグルが二匹の黒龍を攻撃した。
「今のうちに!」
「放て!」
「何ヲ!ナラバ、コレデドウダ!!」
ハデスが両手を固くしてミズーリオに振り下ろそうとした。その時、上空にいたアナスタシアの方から一筋の光が差し、ハデスとミズーリオを覆った。
「何ナノダ!コノ光ノセイカ力が失われていく!!」
「この光は、この星の聖なる力よ」
「コノ星ニコレホドノ力ガアルナンテ・・・」
「聖なる力は、現実にないものを呼ぶ力。つまり、この星で死んでいった者たちを呼び、力を借りたのよ」
光の中には、栄誉市民シンメンサトリとその家族たちなど多くの人々と、ゼンマイと名付けられたゼンマイ式のおもちゃなど多くの物がいた。
「「これでどうだ!!」」
「ウアアアア!」
光の中で、ミズーリオは幻を見た。
「・・・メフィラス師匠」
「コレデ良カッタノダ。サラバダ」
その後、ミズーリオは目を覚ました。そこは寝室だった。
「・・・夢?」
ミズーリオがリビングに行くと、置手紙があった。
「『アト少シ付キアッテホシイ』・・・何だ、これ?」
その時、脳裏に声が響いた。
「起キタノダナ?」
「その声は、メフィラス!どうして?」
「実ハ、私モ中間ノ力ヲ使エルノダ。コレガ何ヲ意味スルカ分カルカナ?」
ミズーリオは驚いた。
「まさか・・・」
「ソノマサカダ。私ハ死ノ間際ニ力ヲ使ッタ。君ト会ッテマダ死ニタクナイト思ッテシマッタノダ」
「僕のせいみたいじゃないか」
「君ノセイダ。私ハ死ヲ受ケ入レル気ガ変ワッテシマッタノダ」
「一体いつまで戻った?」
「今ハ私ガ死ヌ時カラ百年ホド前ダ。コノ時期ニ地球デハ、夢計画トイウモノガ進ンデイル」
「夢計画?」
「プログラムヲ利用シタ願イヲ何デモ叶エルトイウモノダ。ナカナカ興味深イ内容ダッタノデ、体験シタイト思ッタ。但シ、一人ダケデハツマラナイノデ、君モ招待シタイ」
「それを体験したら死を受け入れるのか?」
「単ナル体験デハツマラナイ。私ヲ楽シマセテクレタマエ」
ミズーリオは思った。
(楽しむ・・・砂漠でも聞いた。まさか、あれは他の宇宙人ではなく、メフィラスが言ったのか・・・?)
ミズーリオは尋ねた。
「楽しめなければどうする?」
「何度デモ繰リ返スノダ。私ガ死ヲ受ケ入レテモイイト思エルマデ」
ミズーリオは思った。
(メフィラス・・・間違いなく最も恐ろしい宇宙人だ。何としても楽しませなければいけない)
ミズーリオは言った。
「分かった」
「楽シミニシテイルノダ。デハ、夢デ会オウ。サラバダ」
「く、頭が重い・・・」
ミズーリオは眠った。