2人の怪物
久しぶりの主人公視点!
「結構楽しめたな。この大会」
大会が終わり、瑠璃が話しかけてきた。
「そうだね。それに、2人も『災害指定』クラスの怪物を見つけられた」
「ああ、シャドウとかいう冒険者の本体と冒険者ギルドグランドマスターのシンのことか?」
「うん。シャドウの方は、最後まで本体は現れなかったけど多分本体は最低でもオレや瑠璃、後『魔女』以外の『災害指定』と同じぐらいの強さはあるよ」
「で、あろうな。それにもっとおかしいのはあのグランドマスターだ」
「だよね。観客席にいて、結局闘ってるところは見れなかったけど、強さ自体は分かった。あれこそまさに化け物だよね」
「だろうな。我であっても闘えば傷を負うだろうな」
「まあ、人間にも化け物がいるってことが分かっただけでもこの大会を見にきた甲斐はあったよね」
「そうであるな」
◇
〈三人称視点〉
大会が終わり、数日が経ち、町が少し落ち着きを取り戻し始めた頃の夜、腰に剣を携えた穏やかそうな青年、冒険者ギルドグランドマスターのシンが人気のない路地裏を歩いていた。
するといきなりその首元を短剣が襲った。
しかし、シンは特に驚いた様子もなくその短剣を剣で受け止めた。
「やはり受け止めますか。完璧な隠密だと思ったのですが……」
シンを斬りつけた人影、シャドウが予想通りだという声音でシンに話しかけた。
「完璧な隠密だったと思うよ?Sランク冒険者だったら多分今ので死んでた」
「そうですか、ですが、元々これで殺せるとは思っておりませんでした。少し殺し合いをしましょう」
そう言って、シャドウはシンにそれだけで生物を殺せるのではないかと思わせるほどの殺気を浴びせ、そして攻撃しようとした。
しかし……、
「殺し合い?その死んだ肉体でどうやって僕を殺すんだい?」
次の瞬間、シャドウの肉体が縦に裂けた。
「次は本体で来なよ。それならちゃんとした闘いになると思うよ?」
斬られたシャドウの肉体は最初こそ血を流していたものの、しばらくすると、霧となって消え始めた。
「さっきまではちゃんと本物の肉体だったのに今はもう幻か……、本体は厄介そうだな」
シンはそう呟くと、大通りに向けて歩き出した。
◇
「やはりグランドマスターは化け物ですね。少しは力を見ておきたいと思い『幻影』を差し向けましたが、一瞬でやられるとは……。あれでも国一つ程度であれば滅ぼせるぐらいの力は持っていたのですが。まあ良いでしょう。グランドマスターは私の正体には気づいていなさそうです。あの方が復活するまで関わらないでおきましょう」