本選 決勝戦
〈三人称視点〉
『ついにこの時がやってきました!さあ、早速決勝戦を始めましょう!』
司会者のその声とともに、観戦者たちが大きく湧き立った。
『まず登場するのはこの方!第1試合では『雷光』ラッシュルラークを、準決勝第1試合では『呪毒』カロースドを降し、ここまで順調に進んできた猛者!その炎に燃やせぬものはなく、その拳に砕けぬものはない!『豪炎』アルカフォードル!』
二つの門が開き、その一つからアルカフォードルが現れた。
『続いて登場するのはこの方!Bランクでありながら、第1試合では『怒天』ダリアリアを、準決勝第2試合では『剣舞』リアリと、Sランクを傷一つつけることなく降し、ここまで進んだ猛者!このまま優勝してしまうのか!?それとも、アルカフォードル選手にアルカフォードル選手にSランクの壁を見せつけられるのか!?観戦者の方々はむしろこのまま優勝してしまうのを見たそうだ!Bランク冒険者シャドウ!』
もう一つの門からシャドウが現れた。
『この両者、どう見ますか?リーシャ様』
『そうねン。シャドウちゃんは、まだまだ力を隠していそう……それに比べてアルちゃんは力を少しは隠してそうだけど、それもほんとに隠し玉が一つある程度だと思うの。だからシャドウちゃんの方が上かしらね』
『なるほど、それでは、この大会始まって以来初のBランク冒険者の優勝者が出るかもしれないと言うことですね!それでは、決勝戦、開始ーーー!!!』
「確かにお前の方が格上だ。だが、ただでやられるわけにはいかない!『真炎魔纏』!!!」
開始の合図とともに、アルカフォードルは自身の持つ最強のスキルを発動した。
灼熱の業火がアルカフォードルを包み、巨大な炎柱が立った。
シャドウは、それを見ても、少しも動揺した様子を見せずに準決勝の時のように増え始めた。
しかし次の瞬間、増えたシャドウが燃えた。
「この炎の熱が当たるところにある幻は燃える!それは通用しないぞ!」
シャドウはそれを聞き、少し考える素振りをした後、また増え始めた。
そして、その増えたシャドウは燃えなかった。
「何!?幻は燃えるはず……まさか、これは全て本物なのか!?」
そう。
その全てのシャドウが本物だった。
『なんとシャドウ選手、本物を増やした!?これは分身系統のスキルでしょうか?』
『いえ、多分違うわねン。分身よりもさらに異質な何か……としかわからないけど……』
「全て本物……だが、それならかえって好都合!」
そう言ってアルカフォードルはシャドウに殴りかかった。
すると、今回はすり抜けることなく拳が当たった。
そして、そのシャドウは、吐血をしながら倒れた。
「なるほど、防御力はそこまでないようだな!」
アルカフォードルはそう言うと他のシャドウたちにも殴りかかった。
シャドウたちは迎撃しようとするが、近接戦闘ではアルカフォードルの方が上であり、ほぼ全てのシャドウは倒れた。
「さて、あとはお前だけだな」
アルカフォードルは最後に残った1人のシャドウに話しかけた。
すると……
「フフ、フフフフフ、アハハハハハハ!こんな方法で攻略されるとは、やはりSランクは強かったということでしょうか?それにしても、まさかこれで終わりだとは思っていませんよね」
シャドウはいきなり笑い出し、どんどんどんどん増殖し、闘技場を埋め尽くすほどの数になった。
「マジかよ」
「さあ、続きを始めましょう!」
その声とともに、シャドウたちが一斉に攻撃を始めた。
アルカフォードルは最初はなんとか耐えた。
しかし、いくら倒しても増え続け減らないシャドウの軍団の前に最後は拳を振るう力がなくなり、倒れてしまった。
『な、なんということでしょうか!また、一方的な闘いでSランク冒険者が負けてしまった!最初こそ良い闘いでしたが、これはもはや圧倒と言っても良い!決勝戦、勝者は、Bランク冒険者シャドウ!!!』