本選 第2試合
〈三人称視点〉
『いやー、白熱した試合でしたね!この熱狂が治らないうちに、第2試合を始めましょう!』
ラッシュルラークが担架で運ばれていき、アルカフォードルが闘技場を後にすると、早速司会者が第2試合の開始を宣言した。
『まず登場するのはこの男!この男を一言で表すなら『無』!この男の感情を見たことがある者は1人もいない!この男に感情はあるのか!?『氷獄』フルドルド!』
門が開き、無表情なイケメンが現れた。
「感情……あるんだけど」
司会の評価が不本意らしい。
『この男に相対するは、死を振り撒く災厄の化身!彼の通る道には、腐敗した骸が残るのみ!『呪毒』カロースド!』
「キヒヒヒヒヒ、『氷獄』の絶望の顔、引き出して見せましょう!」
ボロボロのローブを身に纏った骸骨の面をつけた不気味な男がもう一つの門から現れた。
『さて、この両者、どう見ますか?リーシャ様』
『そうねン。これは難しいのよねン。フルドちゃんはありとあらゆるものを凍らせることができて、凍らせられないものはないと言われているの。対してカロちゃんは呪いを使うのだけど、これが未知数。だから、まだ2人とも底が見えないのよねン』
『なるほど、その底が、この闘いで見れるのか楽しみなところですね!それでは、第2試合、開始ーーー!!!』
「『氷結』」
その言葉と同時に、フルドルドの足元が氷結を始め、その氷結は一瞬でカロースドの元まで到達し、カロースドを凍らせた。
「終了……な訳はないか」
「キヒヒ、当然です!」
次の瞬間、カロースドは凍っているはずの体を、何もなかったかのように動かした。
「普通動けなくなるんだけど……」
「キヒヒ、この程度は問題ございません!それよりも、あなた、もっと周囲に目を向けてみればよろしいかと」
「何?」
フルドルドは、周囲を見回した。
しかし、何も見つけることができなかった。
「何もないが……」
「キヒヒ、あなたの負けです」
「……は?」
フルドルドが無表情のまま、しかし呆れたような声を出した。
しかし、次の瞬間、フルドルドの腕が腐った。
「な……に……」
フルドルドは、いきなり腐った自分の腕を見つめたまま、固まった。
よく見てみると、自分腐った腕に1匹の気味の悪い虫がいた。
「それは『腐呪蟲』と呼ばれる蟲でして、私の魔力を使い作り出した魔法生物なのです。その効果は……まあ、見ればわかりますね。安心してください。どうせこの大会に常駐している回復師が治してくれますよ」
「それは……なんともデタラメな蟲だな」
「キヒヒ、これでも表情を崩さないとは、尊敬に値しますよ。それでは、さようなら」
カロースドがそう言うと、大量の『腐呪蟲』が現れ、フルドルドに向かって行った。
しかし、それはフルドルドの元まで辿り着く前に凍りついた。
「タダでは負けないよ」
「そのようですね。しかし、まだまだ終わりません」
その言葉と共に、また大量の『腐呪蟲』が現れ、フルドルドに向かって放たれた。
フルドルドは、それらを凍らせながら、カロースドが隙を探し続けた。
しかし、突如、フルドルドの体中から血が吹き出し、フルドルドは倒れた。
「言ったでしょう?あなたの負けだと。それにしても、最後まであなたの絶望の顔を引き出せませんでした。残念です」
『おっとー、いきなり決着がついた!?一体何があったのでしょうか!?』
『なるほど、最初に蟲を見せ、それへの警戒を促しながら空気中に呪いをばら撒き、その呪いでフルドちゃんを倒したのねン。やるわねカロちゃん』
『なるほど、そういうことですか!納得しました!それでは、第2試合、勝者は『呪毒』カロースド!!!』