其の弐拾伍 愚か者に絶望を 参
「何を……言って……」
裏玖の人間に転生させるという言葉に、蛇の神は困惑した。
「言葉通りの意味だよ。お前は人間に転生させる。それも、運命をいじり、奪われる側の人間にしてやる」
「そんなこと……出来るはずがない!!!」
「出来るんだよ。お前は、これから神としての力は、失い、神としての記憶と感性だけを持ったまま人間に生まれ変わり、人間に搾取される。それを、何度も繰り返す」
「は?」
「何度死のうと、お前は奪われる側の人間以外に生まれ変わることは出来ない。永劫に奪われ続ける。輪廻の輪は、決してお前を逃がさない」
今まで見下していた人間へと転生し、そして人間に奪われる。
それは、蛇の神にとって屈辱であり、絶望でもあった。
「ふざけるな!!!」
「ふざけてないさ」
「やめろ……やめろ……やめてくれ……」
「『人間道』『輪廻』」
裏玖のその言葉と共に、空に輪廻の輪が出現した。
『人間道』は、他の『道』とは明確な違いがある。
簡単に言えば、裏玖たちが今いる世界こそが人間道なのだ。
そのため、『門』を『現世顕現』で出現させる必要はなく、輪廻の輪だけが出現する。
「じゃあな」
裏玖のその言葉と共に、蛇の神の心臓に風穴が空き、蛇の神は息絶えた。
そして、その魂は、人間へと転生するために輪廻の輪に吸い込まれていった。