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其の弐拾参 愚か者に絶望を 壱
『六道』の力は、大きく分けて2つある。
1つは、今までも裏玖が使っていた『現世顕現』そして、もう1つは……
「『魂内顕現』『修羅道』『開門』」
『魂内顕現』、それは、道へと繋がる門を自身の魂の内側に顕現させ、その道の能力を扱えるようになるというもの。
『修羅道』の能力は、極めて単純に、身体強化である。
しかし、その身体強化は通常のものとは次元が違う。
『修羅道』の身体強化、それは、修羅がごとき身体能力を元の身体能力に掛け合わせるというものだ。
そう、つまりこの身体強化は、『和』ではなく『積』である。
神へと至った理玖の身体能力は元からありえないほど高く、神力を使わずとも世界を滅ぼすことが可能だった。
それに、修羅がごとき身体能力を掛けるのだ。
それは、明らかに蛇の神に対して過剰な強化であった。
しかし、だからこそより大きい絶望を与えられる。
「死ね」
裏玖は、そう言うと、何もない空間を指で弾いた。
次の瞬間、蛇の神の体に風穴が1つ空いた。