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其の弐拾壱 至る
森を走り抜け、数秒で裏玖は、灯の霊力があった場所に着いた。
そこは、木々のない沼地だった。
そこで、裏玖は見た。
膨大な妖力を放つ蛇の妖と、その妖に土下座する村人たち。
そして、妖と村人たちの間にある祭壇に置かれた心臓を不気味な短剣で貫かれた灯を。
それを見た瞬間、裏玖の瞳は完全に昏く濁り、そして、自分と灯を騙し、あまつさえ灯をこうして生贄にした村人たちと妖への憎悪と憤怒、といった負の感情、そして灯を助けたいという正の感情が混ざり合い、弾けた。
◇
「力が吸われる……アハッ!!!まさか!!!ここに来ることなく、吾に会うことすらなく、吾を掌握し、神へと至ろうというのかい!?アハハハハッ!!!傲慢だ!!!強欲だ!!!ああ!素晴らしい!!!それでこそ吾を使うに相応しい!!!さあ、使いこなして見せろ!!!君の道を見せてくれ!!!六道狐!!!!!アハハハハハハッ!!!!!」
6つの月が照らす赤い空の下で、狂嗤が響いた。