其の弐拾 再び昏く
裏玖と灯が旅を始めて、3年の月日が流れた。
裏玖と灯は、とある村に立ち寄っていた。
妖に襲われている青年を助けたところ、自分の村で祭りをしているから、お礼に来ないかと言われたのだ。
裏玖と灯は、特に疑問は抱かずに案内されるまま村に行った。
村では、青年が言っていた通り、祭りが開催されており、青年を助けたことで、裏玖たちは村人たちにもすぐに受け入れられた。
祭りを楽しんだことで、夜遅くになってしまい、裏玖たちは村人たちに勧められるままに村で一夜を過ごすことになった。
裏玖と灯は、祭りで遊び疲れたことで、すぐに眠ってしまった。
裏玖は気が付かなかった。
村人たちの貼り付けたような笑顔に。
その奥に隠された本性に。
その日の夜、裏玖は突然、嫌な予感がし、起きた。
そしてすぐに、その予感が当たっていたことを理解した。
隣で寝ていたはずの灯の姿がなくなっていたのだ。
裏玖は、すぐさま妖力を周囲に広げ、灯を探した。
そして、村に自分以外誰もいないことを理解するとさらに探知する範囲を拡大した。
そして、見つけた。
村の近くにある森の奥に、村人たちと、強大な妖力を持つ妖、そして今にも死んでしまいそうな程に微弱な霊力しか纏わない灯を。
裏玖は、走り出した。
まだ間に合うかもしれない。
もう二度と失いたくないと。
「ボクは……本当に学ばないなぁ。人間の悪意は知っていたはずなのに……」
そう呟き、その瞳を再び昏く濁らせながら、裏玖は走った。