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其の拾玖 心境の変化
裏玖と灯が旅を初めて数年の時が経った。
裏玖たちは、旅の先々で人間と交流した。
会った人々は良い人ばかりで、いつの間にか、裏玖は人の心の温かさを思い出し、もう戻らない日を思い出しながらも、少しずつそれを乗り換え、人間を信用するようになっていった。
いつしか、裏玖の瞳には完全に光が戻り、生き生きとした表情をするようになっていた。
灯も裏玖が色々な表情を見せるようになり、嬉しく思い、そしていつしか裏玖に対し、恋心を抱くようになっていた。
裏玖は、変わった。
いや、戻ったのだ。
昔の無邪気だったあの頃に。
そう……戻ってしまったのだ。
人間に対して警戒心を抱かない無知だった頃に。
人間の悪意を知らなかった頃に。
裏玖は、確かに瞳に光を取り戻した。
しかし、その代償として警戒心を無くしてしまった。
それ故に、人間の悪意に鈍感になった。
だからこそ、悲劇は起こった。
裏玖にとって2度目となる憎悪に染まる時は、すぐそこに迫っていた。
それが齎す結末は……