其の拾陸 旅の始まり
旅をすると話した翌日、裏玖と灯は、旅に必要な荷物を準備し、旅に出た。
歩く速さは、灯に合わせたため、山を下りるのに半日がかかった。
それでも、灯と過ごす時間が裏玖にとっては楽しく、裏玖は灯を急かすことはしなかった。
そうして、旅が始まり、2日程が経ったある日、2人は、妖に襲われている行商人を見つけた。
裏玖は、それを一瞥すると、特に興味もなさそうにその場から離れようとした。
しかし、それを灯が止めた。
「待ってください」
「どうした?」
「あの行商人……助けてくれませんか?」
「なんで?ボクは灯のことは気に入ってるから助かるけど、他を率先して助ける気はないよ?灯も知ってるでしょ?」
「はい。分かっています。しかし、これは重要なことなのです」
「何が?」
「私たちは、お金を持っていません」
「ん?」
「物を買う場合、お金が必要です。しかし、私たちはそれを持っていない」
「うん」
「なので、あの行商人を助け、謝礼をせびるのです」
「なるほど、確かに一理ある」
こうして、裏玖は、行商人を助けることを決めた。
補足
灯は、元々孤児であった時に人の死はたくさん見ているため、そこに忌避感はなく、大して親しくない人が死んだところで感情は動きません。そのため、今回のような理由がなければ見捨てます。