其の玖 永劫に続く絶望を
「『現世顕現』『畜生道』『輪廻』『開門』」
裏玖のその言葉と共に、都の上空に巨大な悍ましい口のようなナニカが出現した。
しかし、それからは餓鬼や大鬼などの怪物が出てくることはなく、男は一瞬裏玖が何をしたいのか理解できず、困惑した。
しかし、すぐにそれが何なのかを理解し、背筋を凍らせた。
死んだ都の民たちの魂が、その口に誘導させるように向かい、喰われていたのだ。
「な……んだ?……これは……」
男のその呟きに、裏玖は、淡々と答える。
「『畜生道』に転生させてるんだよ。もちろん、畜生としてね」
「は?」
「安心すると良い。ちゃんと人間だった時の記憶と感性を持ったまま転生させてあげるから」
「ふざけるな!!!」
人間として生きた記憶と感性を持って畜生へと転生する。
それは、あまりにも生きにくい。
地獄のような日々だと理解できる。
故に、男は自分の状況すら忘れて叫んだ。
しかし、そんな叫びはなんの意味もなく、裏玖を止めることなど出来はしなかった。
「『ふざけるな』ねぇ。そんな言葉、お前に言う資格はないだろう?」
「貴様こそ、こんな外道な行為をする資格はないだろう!!!」
「知らないよ。そんなこと。ボクはただ、復讐したいからしてるだけ。資格とかそんなもの知ったことじゃない」
「貴様ー!!!」
「あ、ちなみに、畜生への転生は1回だけじゃない」
「なっ……何を……言って……」
「お前たちは、これから『畜生道』で転生を繰り返す。記憶も感性もそのままで、永劫に輪廻の輪はお前たちを畜生道から逃がさない」
「……は?」
「さらにお前たちは、ボクが門を開いても現世にやってくることは出来ない。そういう仕組みになっている」
「そ……んな……ことが……あって……いいわけが……」
「ボクからの贈り物。永劫に続く絶望だ。せいぜい悔やめ。まあ、悔やんだところで何も変わりはしないけど」