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其の捌 無慈悲

 男は蹴り飛ばされた勢いのまま建物の外壁に激突し、うつ伏せに倒れた。


「なっ……何故……」


 そう言い、混乱しながら、男はなんとか起きあがろうとした。しかし、身体中の骨が折れ、体がまともに動かない。


 確かに、通常の『三尾』であれば、男の結界を破壊することは出来なかっただろう。


 しかし、裏玖(リク)はその通常に当てはまらない。


 そもそも、裏玖は『理から外れた存在』である『玖音(クオン)』の息子である。


 『玖音』の血を引く存在を通常に当てはめることなど出来はしない。


 裏玖は『一尾』の時でさえ、通常の『九尾』と同等の力を持っていたのだ。


 しかし、村人たちを傷つけてはならないと、裏玖は無意識下でその力を抑えていた。


 そして、その制限は既に取り払われており、さらに裏玖は『三尾』となった。


 『三尾』となった裏玖は、通常の『九尾』を大幅に上回る力を手にしていた。


 そもそも、最初から男に勝ち目などなかったのだ。


 ……いや、一つだけ方法はあった。


 それは、九尾の狐の尾を呪具にする際、分けずに一つの呪具にしていれば、おそらく勝つことは出来た。


 何故なら、その尾は『玖音』の尾だから。


 だからこそ、それを一つの呪具にすれば、裏玖にも勝てただろう。


 もっとも、使った後に生きているかは別として……。


 しかし、それをしなかった時点で、男の敗北は決まっていた。


 裏玖は男に近づき、男の髪を無造作に引っ張り上げ、男の視線が都の様子を捉えるようにした。


 そして言った。


「これが、お前が招いたことだよ?」


 そこには、絶望があった。


「嫌だ!嫌だ!嫌だ!死にたくなっ……!!!」


「痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!」


「ぁ……あぁ……ああああああ!!!」


「助けて……助けっ……!!!」


「なんで!なんで!!!なんっ……!!!!!」


 都に住む人々は、餓鬼によって生きたまま喰われ、頼みの綱である陰陽師は、呪具を持っていた者でさえ大鬼に殺されていた。


「お前っ!!!心はないのか!?!?!?」


 男が叫ぶ。


「女子供も、赤子だっているんだぞ!?!?!?」


 しかし、その言葉は裏玖に響かず、裏玖は淡々と、しかしその裏に怒りを滲ませながら言った。


「善人ぶるなよ」


「何?」


「いただろう?女子供も、赤子も!!!ボクの村にもさぁ!!!!!」


「それは……」


「そもそも、あいつらは、じいちゃんとばあちゃんに罵詈雑言を浴びせた上に石を投げつけた。そうだ、もっと苦しめることに決めた」


「なっ、何を!!!」


「まあ、見てなって、何も出来ない無力な自分を卑下しながらさ」


 さらに無慈悲な罰が今、裏玖によって下される。

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