其の陸 際限なく溢れ出す絶望
裏玖の言葉と共に悍ましい装飾の施された門が出現した。
門は、ギイィと恐怖を掻き立てる音を響かせながら開いた。
そして現れたのは大量の飢えた小鬼……餓鬼。
餓鬼は涎を垂らしながら門から大量に溢れ出した。
裏玖に発現した能力は『六道』。
現在は、その内『畜生道』『餓鬼道』『地獄道』という『三悪道』のみ使用可能であり、他の『三善道』は使用不可能である。
しかし、『三悪道』だけでも、十分すぎるほどに強力である。
『六道』の能力は大きくわけると2つ。
1つは、『現世顕現』。
これは、『六道』に含まれる『道』に繋がる門を現世に顕現させ、そして開くことでその『道』に住む者を現世に出現させる、もしくは、現世に住む者を『道』の中に引き摺り込む能力。
裏玖はこれを使い、『餓鬼道』に繋がる門を出現させた。
全ては、この都に住む者を皆殺しにするために。
先程まで老夫婦に石を投げ、罵声を浴びせていた都の住民は恐怖に顔を引き攣らせた。
次の瞬間、溢れ出した餓鬼と『餓鬼道』に繋がる門を爆炎が包んだ。
「何をするかと思えば、まさか召喚とはな……しかし、門を使って召喚する場合、門を破壊してしまえば一定時間再召喚は不可能となる!!!そして、召喚系の能力者は本体は弱いと決まっている!!!」
その場にいた陰陽師の中で最も強い者……老夫婦を転移で都に連れてきた男がそう言い笑った。
「そして、さらに俺にはこの呪具もある」
そう言い、男は首飾りを指差した。
「この呪具は、九尾の狐の尾を材料として作られてあるものでな、これは使用者の霊力量と身体能力を底上げするのだ。まあ、その九尾を討伐し、尾を持ち帰った者は5年ほど前に天狗の長と相打ちとなって死んだがな」
裏玖はその首飾りを見ると、不思議と少し懐かしい気持ちになった。
しかし、今はそんなことはどうでもいいと思い、それについて考えることをやめ、口を開いた。
「どうでもいいけどさ、門……壊れてないよ?」
「は?」
「「「「「ギャギャギャギャギャギャギャギャ」」」」」
爆炎が消え、傷一つ付いていない門が現れ、そして、大量の餓鬼が溢れ出してきた。
「いいこと教えてあげる。この門は破壊不可能だ。そして、餓鬼は無限に湧いてくる。決して尽きることがない」
絶望に際限などありはしない。