表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
222/246

其の伍 絶望の門は開かれた

 裏玖(リク)は、旅人を血祭りにあげた後、老夫婦の霊力を探知し、走り出した。


 都へは、通常歩いて3ヶ月ほどかかる。しかし、裏玖はその距離を1週間で走りきった。


 そして、見た。


 傷だらけになり、手足を縛られ、人間たちから罵詈雑言と石を投げつけられる老夫婦の姿を。


「人でなし!!!」


「妖を庇うとはなんたることか!!!」


「死ね!!!」


 裏玖は、老夫婦に駆け寄り、すぐに拘束を解くと、人間たちを妖力で威圧した。


「裏玖……来てくれたんじゃな……」


「うん。すぐに助けられなくて……ごめん」


「気にしてないさ。……よく来てくれたと言いたいところじゃが、本当は来てほしくなかった」


「なん……で?」


「気づいているだろう?儂らは囮じゃここには強大な陰陽師たちがおる。だから、来てほしくなかった」


「それでも、助けに来ない訳には行かないでしょ……?だって、じいちゃんとばあちゃんはボクの家族なんだから」


「嬉しいことを言ってくれるのう」


「本当にのう」


「じゃが、お前は今すぐここから逃げろ」


「儂らは置いていけ」


「え?」


「気づいておるじゃろう?儂らはもう長くない。そろそろ死ぬ」


「何……言って……」


「この傷、よほど深いらしくてのう、出血がひどい。そろそろ儂らは死ぬ」


「嫌だ!!!嫌だよ!!!まだボク2人に恩を返しきれてない!!!」


「十分返して貰ったさ。さあ、行け!」


「復讐なんて考えずとも良い」


「「幸せに……生きてくれる……ことだけが……儂らの長いじゃ」」


 そう言って、2人は死んだ。


「感動の物語をありがとう!!!では死ね妖狐よ!!!!!」


 裏玖の心をより濃く(くら)い憎悪が支配した。


 その憎悪に呼応するように大量の妖力が裏玖から溢れ出し、そして……


「3尾……だと?」


 3尾となった裏玖は、自分の能力を完全に把握し、そして、


「ごめん。じいちゃん、ばあちゃん。復讐しないと、ボクは前に進めない」


 そう言い、さらに言葉を紡いだ。


「『現世顕現』『餓鬼道』『開門』」


 目覚めし『三悪道』が牙を剥く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ