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其の壱 玖音の子

この外伝は、全て三人称視点で書きます。

また、この外伝も、最終章と同じく隔日投稿になります。

 妖……それは、地球に存在する怪物の名。


 いつ、どこで発生したかも定かではない存在。


 妖が生まれる方法は2つあり、1つは、人間と同じように母親から生まれる。


 そして、もう1つは、妖力が濃い場所で妖力が凝縮され魂を獲得することで存在が現世に定着し、妖として生を得る。


 九尾の狐である『玖音(クオン)』は、後者だった。


 そして、その中でも玖音は特に強力な存在であり、どんな妖であったとしても彼女に危害を加えることなど出来はしなかった。


 そんな玖音は、常に強くあり続けたいと思っていた。


 ただひたすらに強さを求め、そして、理からも外れた存在となった。


 理から外れた玖音は、他の世界の存在を知り、そして、創造神の存在も知った。


 誰よりも強くありたいと思っていた玖音は、その存在が許せず、戦いを挑んだ。


 そして引き分け、友となった。


 それからは、玖音は創造神と戦うことを楽しみにして生きてきた。


 しかし、玖音は、創造神の空間に住むことはなかった。


 それは単純に、地球の景色が好きだったから。


 だからこそ、玖音は地球に住み続けた。


 そんな玖音は、面倒なことがあった。


 それは、陰陽師という存在。


 陰陽師は、妖を絶対悪と決めつけ、特に悪事をしていない玖音を何度も殺そうとしてきた。


 その度に、玖音は向かってきた陰陽師を皆殺しにしていた。


 ある時、玖音が創造神の空間から帰ると、自身の住処に向かって陰陽師が来ていることを察知した。


 玖音は、そろそろ陰陽師という存在を全て滅ぼそうかと考えながら、自身の住処を訪れた陰陽師を殺そうとした。


 しかし、そこで想定外のことが起きた。


 その陰陽師……『(あらた)』と名乗った青年は、玖音に対話を求めた。


 玖音は、新に興味を持ち、対話に応じた。


 新は不思議な青年で、陰陽師でありながら、妖に対する偏見を持っていなかった。


 新は、しばらく玖音と話すと、「また来る」と言って去って行った。


 新は、それから数日おきに玖音の元を訪れ、対話を重ねていった。


 いつしか玖音は、新と会うことを楽しみにしていた。


 そして、玖音は、自分が新に恋愛感情を抱いていることを自覚した。


 新もまた、玖音との会話を楽しみ、そして玖音に恋するようになっていた。


 しかし、お互いにそれは伝えず、ただ会話を楽しんでいた。


 しかし、そんな楽しい日々は長くは続かなかった。


 新は、陰陽師を統括する組織である陰陽寮から九尾の狐の討伐を任された存在だった。


 しかし、新は戦いが好きではなく、対話でなんとかしようとした。


 陰陽寮の幹部に新は、九尾の狐は危険な存在ではないと伝えた。


 しかし、まともに取り合ってもらえず、新は、九尾の狐に挑みにすら行かなかった臆病者と呼ばれるようになり、そして、殺されそうにもなった。


 それに気づいた玖音は、自身の元を訪れた新に、自身の思いを伝え、そして一度だけ愛を交わした後、自身の尾を1本斬り取り、それを新に与え、この尾を証拠に九尾の狐を討伐したと報告するように言った。


 自身は、どこかに身を潜め、本当に九尾の狐が死んだように見せるからと。


 新は、最初は断ったが、玖音の勢いに負け、それを承諾し、玖音と別れた。


 それからしばらく、玖音は、日々を退屈に思いながら生きていた。


 そんな時、玖音自身の中に命が宿っていることを感知した。


 それは、新との間にできた子だった。


 玖音は、喜び、そして、子を産んだ。


 その子は、ほんの少しだけ妖力があること以外は普通の人間だった。


 寿命もおそらく人間と同じぐらいしかない。


 玖音は、子が自身よりも先に死んでしまうことを理解しながらも、その子を育てる決意を固めた。


 玖音は、子に『裏玖(リク)』と名付け、可愛がった。


 しかし、裏玖を産んで1ヶ月ほど経ったある日、玖音は、理から外れた存在『空亡』が地球を喰らおうと地球に向かっていることを察知した。


 昔の玖音であれば、すぐに地球を見捨てて逃げたかもしれない。


 尾が9本の時ならばおそらく簡単に勝てるが、今は8本しかない。


 いくら地球の景色を気に入っていると言ってもそれは命を捨てるほどの価値はなかった。


 しかし、今は違った。


 愛する人間と、愛する子がいた。


 だからこそ、玖音は空亡に立ち向かった。


 その間、子は自身が住んでいた山の麓の村に住む少し交流があった老夫婦に預けた。


 老夫婦は、玖音の覚悟を決めた目を見て、預かることを了承した。


 必ず迎えに来るように念を押して。


 しかし、玖音は子を迎える来ることがなく、それから、10年の時が経った。

 

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