100年後 その2
『空亡』との戦い……他の種族たちからすれば、魔物の侵攻及び、『八使徒』の侵攻から100年が経ったことで、それぞれの種族にも変化があった。
まず、『魔王』を代表とする魔族。
魔族は、『魔王』の活躍もあり、人的被害はほとんどなかったらしい。
しかし、破壊された街や村が大量にあったようで、その復興に時間がかかった。
それでも、この世界には魔法があるため、1年で完全に復興し、今では平和に暮らしている。
次に『吸血姫』を代表とする吸血鬼。
吸血鬼も、魔族と同じように人的被害はほとんどなかったものの、建物の多くは破壊されてしまった。
新しく建物を建てる必要が出てきたのだが、なんとこれを機に吸血鬼は『魔王国』に引っ越し、魔族と共存するようになった。
次に『獣王』を代表とする獣人族。
獣人族は、人的被害も少なくなかったようで、その数を3分の2まで減らした。
それでもたくましく生き、今は侵攻前と比べると、人口は3倍になっている。
次に『鬼王』を代表とする鬼人族。
鬼人族は、小さな子供であっても戦う力を持っている種族だったために、魔物に殺されるようなことはほとんどなく、人的被害も少なく済んだようだ。
それでも、住んでいた家はたくさん壊されたらしい。
しかし、鬼人族は元々自然と共に生きてきた種族だったため、不便はなく、今は侵攻前と同じような生活をしている。
最後に、1番変化があった人間。
人間は、とにかく数が減った。
魔物の群れには、必ず1体はSランクの個体がいたらしく、Sランクの実力を持つ者、もしくはそれに準ずる実力を持つ者がいた場所以外は、ほぼ壊滅した。
生き残った人数は、侵攻前と比べると、わずか1000分の1だ。
そんな大きく数を減らした人間だが、なんと冒険者の町シンとその周辺の町はほとんど被害がなかったらしく、生き残った人間はそこに集まった。
そして、なんと冒険者ギルドグランドマスターを国王とする新しい国を作ったのだ。
それが、今から80年前の出来事。
ちなみに、『賢王』ローンを代表とする魔導国ローンも一応人間の国だが、そこもほとんど被害を受けていなかった。
あ、そういえば、オレと瑠璃が人間の国を旅している時に出会った印象に残っている、ヘーロさんやゴンザエモンさん、あとあのナルシストとかは生きていた。
ヘーロさんは、ユニークスキルを使ったようで、寿命が10年も減っていた。
相当激しい戦いだったのだろう。
それこそ、Sランクの魔物が大量に現れるような。
今のオレであれば、寿命を元に戻すことは出来るけど、それをやったらヘーロさんの覚悟を否定することになる気がしたからやめた。
ちなみに、ヘーロさんは、受付嬢をしていたお姉さんと結婚し、幸せな家庭を築き、幸せな老後を過ごし、60年前、多くの子や孫に囲まれながら、75歳でこの世を去った。
ちなみに、オレと瑠璃は、何回かヘーロさんの家を尋ねて、それなりに仲良くなっていたから、あの時は泣いてしまった。
あ、ゴンザエモンさんとナルシストは今でもピンピンしている。
元々Sランクの実力者は人外の領域に片足突っ込んでるようなもので、さらに魔物の侵攻の時に大量の魔物を倒し、さらに強くなったことで、2人とも上位人間に進化したようで、寿命は、大幅に延びていた。
上位人間の寿命は、大体1000年ほどなのだが、あの2人はさらに進化して寿命のない種族に進化する気がする。
まあ、そんなこんなで、今はほとんどの種族が平和に暮らしている。