帰ろう
〈三人称視点〉
「クク!!!ククーーー!!!!!」
ルリは叫んだ。
心の底から。
そんな様子のルリを九尾の狐は、一度見て、そして、興味がないかのように視線を逸らした。
そして、口を大きく開け、閉じた。
次の瞬間、一気に『虚無』の範囲が広がった。
ルリは、すぐにそこから後退し、なんとか『虚無』に飲み込まれずに済んだ。
「……完全に自我を失ってしまったのか?ならば、我はお主の番として、お主を正気にして見せよう!!!」
ルリは、そういうと、九尾の狐に向けて手をかざし、
「『掌握』!!!』」
『掌握』を発動した。
しかし、すでに理から外れている九尾の狐に、それは効かず、平然としていた。
「やはり……効かぬか!?!?!?ならば……命を……削ってでも……!!!!!」
次の瞬間、『掌握』の効果がありえないほど増大した。
それと同時に、ルリにとんでもないほどの激痛が走った。
「グッ……ウウ……正気に……戻れ……クク!!!」
ルリは、命を消費することによる激痛に耐えながら、ククにそう呼びかけた。
九尾の狐は、動きにくそうな素振りをした後、ルリの方を向いた。
そして、
『グルアアアアアア!!!!!』
そう、唸り、ルリに向かって飛びかかってきた。
ルリは、その九尾の狐のスピードに反応できず、地面に叩きつけられた。
「グッハッ!!!」
『クオオオオオンンン!!!』
九尾の狐は、そう咆哮し、ルリを見下ろした。
「ク……ク……頼むから……元に……戻って……」
ルリは、泣きそうな声になりながら、そう、ルリに呼びかけた。
しかし、九尾の狐は、意にも介さず、大きく口を開け、ルリを喰おうとした。
次の瞬間、それは、起こった。
『グッ……ル……アアアアアア!!!!!』
突如、九尾の狐が苦しみ出した。
「クク!!!」
ルリは、起き上がり、心配そうに九尾の狐を見つめた。
『グッ……アアアアアア!!!!!』
「クク!!!クク!!!!!」
『……ル……リ……?』
九尾の狐が、そう、言葉を発した。
それは、間違いなく九喰だった。
「ああ、そうだ!!!ルリだ!!!!!」
ルリは、嬉しそうでいて泣きそうな表情でそう言った。
次の瞬間、九尾の狐の体が光る粒子となって消え始め、その中から9本の尾を持つ純白の少女……九喰が現れた。
それに伴うようにして、『虚無』も、範囲を縮小し、そして消えた。
九喰は、意識がないようで、落下し始めた。
ルリは、すぐに飛び、九喰を受け止めた。
そして、九喰をお姫様抱っこして、九喰の様子を確認した。
九喰は、寝息を立てて、寝ていた。
ルリは、心底安心したような表情をして、
「帰ろう、クク」
優しそうな声でそう言った。