暴走
〈三人称視点〉
ルリは、九喰と会話した後、その戦場からできるだけ遠くへ離れた。
本当は、九喰と共に戦いたかった。
しかし、あまりにも次元が違った。
だからこそ、ルリはその場から離れた。
いても九喰の戦いの邪魔にしかならないと思ったから。
そして、戦闘の余波が届かない場所で九喰を待つことにした。
それからしばらくして、破壊神の力がどんどん弱くなっていった。
九喰が勝っているのだと分かり、ルリは安堵した。
しかし、突如、破壊神の力を塗り潰すようにしてより強大な何かが現れた。
そして、それは飛んできた。
ありえないほど速いスピードで。
ルリはそれを避けきることかできず、右腕を失った。
そして、次の瞬間、九喰の力が感じられなくなった。
ルリは一瞬、自分の腕のことなど忘れ、焦った。
しかし、それでも九喰の『死なない』という言葉を信じ、まずは自分の腕を治そうとした。
しかし、いくら傷口を『掌握』して治そうとしても無理だった。
存在自体が消えたのだと理解するのに、そう時間はかからなかった。
ルリは、自分の腕は諦め、九喰を待つことにした。
そして、それは現れた。
破壊神の力を塗り潰すようにして現れた存在よりももっと強力な何か。
ルリは、すぐにそれが九喰だと理解し、嬉しくなった。
しかし、それと同時に嫌な予感がした。
その直後、破壊神の力を塗り潰すようにして現れた存在が消えた。
九喰が勝ったと理解し、ルリは喜んだ。
そして、それと同時に、嫌な予感がさらに大きくなった。
ルリは、居ても立っても居られなくなり、すぐに九喰が戦っていた戦場に向かった。
……そこには、ありえないほど広大な『虚無』があった。
ルリは、『虚無』に吸い込まれそうになったが、自分の肉体を『掌握』し、操ることでなんとかそれに抵抗した。
そして、『虚無』の中心にそれを見つけた。
それは、9本の尾を持つ巨大な純白の狐だった。
「……ク……ク……?」
それは、暴走し、万物を喰らう怪物となった九喰だった。




